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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第三部 ダンジョン編

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233 女子寮

 色んな出来事で建設が度々中断していた女子寮だが、最近になってやっと引っ越し出来るレベルまで完成した。細かな内装は少し残っているが、外装は完成しメイとジラフの寝室も整っている。という事で引っ越しを行う事にした。


「おおお、やっと完成したんだねえ……!」

「ああ、色々あッて中断しがちだったけど漸くってとこだ」

「良い出来なので、男避けの結界を張る前に見学させてやろう!」

「わあ、最初で最後の侵入になるかの~!」


 村を見下ろす位置にツリーハウスがあり、その近くには可愛らしい庭込みの魔女の家――実際中に入ると屋敷位広いが、が建っており、新しい女子寮は中央の広場を挟んで昔は作業小屋が建っていた位置にある。倉庫と広場のアーケード状の屋根を除けば、村内では三軒目の大きな建物だった。折角なので皆で見学に向かう事にする。


「わあ! 完成まではあまり見ないようにしてたんだけど、凄いねえ!」

「ふへへ……! ジラフどんと相談して、ケンどんとガンナーどんに手伝って貰って、こんなに可愛い女子寮になったんだぁ……!」

「素敵でしょォ! ピンク!」

「あら、良いじゃないの」

 

 煉瓦の土台に白い壁。壁にはアクセントで飾りタイルがちりばめられ、屋根と窓枠などの木材は全てピンクに塗られている。二階建てでドーマーと呼ばれる三角の屋根窓も付いており、何とも洒落た雰囲気だ。建設にはあまり関わっていなかったリョウだが、見た瞬間『ああこれは女子寮ですねえ』という顔になってしまう程度にはこれまでにない可愛さとお洒落さを感じた。


「外装が完成したから、次は周囲に花壇を作って花を植えるのヨッ!」

「魔女の家とも小人の家ともまた違う、人間が暮らす可愛いおうち、ですねえ」

「海上都市のピンクのお城を参考にしてるんだけど、あの豪華さは此処には似合わないので田舎風にしてみましたッ」

「うむ! 俺とガンさんはデザインには携わっていないからな!」


 皆でしげしげと外観を見た後、中を見せて貰う。玄関扉もピンクに塗られて両開きの大きな物だ。メイもジラフも大きいし、今後更に大きな誰かが来るかもしれないという事で最初から大きく作られている。


「玄関のドア窓のステンドグラス? 凄くいいねえ……!」

「いいでしょッ! メイちゃんと二人で海上都市で作って来たのヨッ!」

「うんうん。中の飾りも沢山、二人で考えて作ったんだぁ~!」


 中に入ると吹き抜け天井で、屋根窓から日差しが差し込んできて明るい。二階部分はコの字型で、幾つか部屋があるようだった。まだ家具などは揃っていないが、恐らく入ってすぐはリビングになるんだろう。今はがらんとした広間があって、壁に幾つか扉が見える。床と太い柱は敢えて木の感じを残しているようで、壁の方は白壁と煉瓦壁を使い分けて更に外装と同じくタイルが飾られていた。


「一階部分は吹き抜けもだけど、天井も二階より高くしてあるんだ。メイ位の身長の奴でも余裕なようにな。二階はちょっと低いから、まあ普通の人間サイズ用だな」

「この世界は割と皆大きいから困った事ねんだけど、頭をぶつけず動けるというのは、とってもありがてぇ事なんだぁ……」

「前の世界じゃと、人間社会で中々苦労してそうじゃの……!」


 リビングには簡単なキッチンも併設されており、焚火ではなく魔法の石を仕込んだ簡易コンロでお湯を沸かす位は出来るようになっていた。続けてジラフとメイの部屋も見せて貰う。


「アタシの部屋は此処! 用心棒だから一番入り口に近い所ネッ!」

「おお、結構広いのですねえ」

「外観でも思ったけど、僕らの部屋と違って壁が多いよね。暑さ対策どうなってるんだろ?」


 リョウ達の個室は、南国リゾートのようなバルコニーに部屋がくっ付いたような風通しが良い形になっている。此方は確りとした壁に窓が付いていて密閉空間だ。ジラフの部屋だからか、外観やリビングと比べてピンクは少なく白基調のすっきりとした印象だった。


「これは海上都市の技術なのだがな、壁や床に断熱素材と、温度コントロールの魔石を仕込んでおる。換気は窓の方で行うが、見た目ほど暑くないのだ。というか寧ろ我々の部屋より涼しい」

「そうだな。この家は村の歴史における最先端かつ一番良い環境だ」

「へええ~!」

「これで着替える時も安心ッてワケ!」


 まあ確かに女子は暑い時に裸で寝る等の行為をし辛いだろうし、更には割とオープンなツリーハウスでするのは躊躇われるだろうと納得した。

 

「メイさんが良い環境で暮らせるのは良いね。僕も安心だ」

「ふへぇ、リョウどんありがとなぁ! おらだけ良い環境に移っちまうみたいで何だか悪いけども……!」

「大丈夫大丈夫! 僕は今の個室で十分快適だから……!」


 次はメイの部屋を案内してもらう。体格の問題でジラフより部屋が大きく、壁もピンクだ。大きい特製のベッドも既に運び込まれていた。


「やっとちゃんとしたベッドで眠れるのですね、メイ……!」

「今まではふたつのベッドを繋げていたからな……!」

「へぇ! 皆さんのお陰で……!」


 他の部屋も見せて貰ったが、二階は普通の身長の人間用。一階は背が高い種族でも不自由ないよう大きかったり広い部屋が何室かあり、共用の洗面所などもあった。


「素晴らしいですね。家具や小物を揃えるのはこれからでしょうけど、もう殆ど完成しているのではないですか?」

「や、それがまだ一か所完成してねえ部分があんだよなァ……」

「そうね――この女子寮にはまだ足りないものがあるわ」


 一通りを見て回り、大変よく出来ていた。カイがまだ未完成があるというのが信じられない顔で首を傾げるが、ベルが悟ったような顔で頷く。


「ほう、ベル嬢――気付いたか」

「ええ、一番肝心なものがまだ無いわね。ケン様」

「え、なになに?」

「い、いやぁ……その話だけども、もう十分だぁ。おらとジラフどんはこのままでも……!」

「ううん、アタシは良いけどこれからを考えるとネェ……」


 急に何やら不穏な雲行きになり、メイは何故か恥じらったようにしている。ジラフも微妙に難しい顔だ。


「え、ガンさんなにこれ?」

「トイレだよ」

「え?」

「だからトイレの話」

「うはは、成る程のう~!」


 リョウより先にタツが理解し、手を叩く。ケンが重々しい顔でリョウを見た。


「リョウさん気付いているか。今の俺達は初期に比べ随分と文化的な暮らしをしているだろう」

「ああ、うん。そりゃもう初期に比べたら凄く進化したよね……!」

「だがトイレだけは、進化しておらんのだ……」

「はっ……!」


 其処まで言われてリョウも漸く理解した。他の文明は随分と進んだが、トイレだけは未だに初期に作った屋外式のトイレを使っていた。地面に風通しを良くした穴を掘り、落ち葉や枝を入れて通気性を上げ、堆肥にもなる上臭くもない立派なトイレである。問題としては、穴がいっぱいになったら移動しなくてはならない事と、やはり風通しの良い屋外の小屋なので、少々プライバシー的に……という部分があった。


「そうか、トイレだけ追いついてないんだね……! そして女子寮ともなれば、寮内にトイレを作りたいと、そういう事だね……!?」

「ああ、そうだ! 今まで不便は無かったのと、男女揃えば中々口にし辛い話題であるため後回しだったが! 村長としてもそろそろこの問題に着手したい!」

「大事な事よ。生物は食べて排泄して生きるものなんだから。生活の質を上げるにも避けては通れない問題だわ」

 

 ベルも重々しい顔で頷いた。そしてケンが一同を見渡し口を開く。


「良いか皆! 次の計画はトイレのレベルアップだ! 丁度揃っているからタイミングも宜しい! 協議するぞ!」


 少々臭い話になりそうだが、避けては通れぬ大切な協議が始まった。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日アップ予定です!

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