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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第一部 村完成編

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20 勇者の恋バナ

 夕食にはワニ肉を揚げたものを美味しく食し、寝る前のひととき。

 竹の寝台に転がり、まったりとした娯楽の時間だ。


「今日の当番はリョウだったな」

「僕の番か。何の話が良いかなあ」

「リョウさんリョウさん」

「何だいケンさん」


「そろそろ色恋の話とかどうだろう?」

「ええ!?」


 思わず寝台から転がり落ちる所だった。


「なんで!? 一日目おとぎ話で二日目はキャプテンでどうして三日目は色恋の話になるの!? おかしいでしょう!?」

「おかしくはないぞ! 健全な男子達が毎夜話す話題のひとつとしては! 色恋は決しておかしくない!」

「力説するね!?」

「色だけでも! 恋だけでも! おかしくは! ない!」


「更に力説するじゃない! 三日目とはいえ僕初回だけど!? 初回から色恋の話する羽目になるの僕!? なんで!?」

「勇者の勇者が大冒険する様が気になるからです! 俺が!」

「急な下ネタァ……! 見たからか、昨日見たからか……っ! ガンさんちょっと何とか言ってやって下さいよぉ!」

 

「ケンが自分のこと健全な男子って呼ばわる事にややうけしてます」


 ガンが無の顔でケンの倉庫から出てきた本に視線を落としている。暗い所でも読める目を持っているらしいので、村づくりも始まった事だし今日から少しずつ解読していくらしい。


「ガンさん……!」

「飛び火されたくねえんだよこっち見んな……!」

「ガンさん……っ!」

「ただまあ勇者の恋愛事情はおれも気になるので話してもいいんじゃねえかな……!」


 ガンが本で顔を隠して絶対に目を合わせてくれない。

 

「うむうむ! ガンさんも聞きたいようだし此処はひとつ観念してはどうだろうか! リョウさん!」

「そんなキラキラした目で……! …………はぁあ……仕方ないな……いいよ……」


 深い溜息と共に、がっくりとリョウが肩を落とす。


「やったー! リョウさんは性格も見映えも良いしさぞや楽しい話が――」

「おいケン、よく見ろ!」

「はっ……」


 肩を落としたままのリョウが再び、暗い目でブツブツしていた時と同じオーラをまとっている。


「リョウさ――……」

「では今夜は僕の色恋と恋愛事情の話をします」

「はい」

「はい」



 ――闇の物語の、はじまりはじまり。



 ◆◇◆◇◆◇◆


(※今回は特別にインタビュー形式でお届けします)


 ──今回のテーマは勇者の色恋・恋愛事情という事ですが、まず初恋について聞かせてください。


 初恋ですか。そうですね、同じ村で育った幼馴染の女の子の事が好きでした。村祭りの踊りでペアになってドキドキしたり、ありがちな少年期の甘酸っぱいやつです。ただ進展は無かったかな。ほら、僕すぐ魔王を倒す旅に出ちゃったんで。

 旅を終えて故郷に戻ったら、とっくに結婚して子供が何人もいましたね。


 

 ――勇者として旅をしている間、パーティーメンバーにも女性が居たと思いますが、そうした方達との恋愛などは無かったですか?


 ありましたよ。ただやっぱり勇者パーティーの恋愛って難しくって。魔王を倒すのって大変じゃないですか。結構な確率で死んでしまうんです。蘇生はしなかったのかって? 蘇生が使える僧侶か魔法使いが大体女性なんですよね。教会でも蘇生は出来るんですけど、魔王城の中や近くでそういう状況になってしまうともう戻る事も困難ですから。死別が一番多いです。

 後はそうだな、色恋沙汰でパーティーが揉めて離散した事もあったかな。そういう事がありますから、パーティー内で恋愛はしない方が良いと思います。僕はね。


 

 ――では、パーティーメンバー以外、立ち寄る先々での恋愛めいた事はありましたか? 一夜のロマンスを含めても構いませんし、お相手は市井から王族まで問いません。


 それもありますね。魔王城を目指す道程で街や国があれば一夜の宿や補給の為に立ち寄りますし、装備更新の事情だったりで暫く逗留する事もあるので。

 そういう場合は一夜のロマンスになるんですけど、あ、誤解の無いように言っておきますが僕が街々で娼館に繰り出したとかそういう話じゃないんです。豊かな街や国で多いんですけど、やっぱり勇者パーティなんで歓待してくれるんですよね。接待で女性を用意してくれるんです。お断りするのも悪いじゃないですか。

 立ち寄る先ではそういう感じで、他には……ああ、最初に魔王を倒した後かな、王様のはからいで姫様と婚約した事もありました。

 いや、結婚はしていません。待たせ過ぎて気の毒なので婚約は途中で解消しました。ほら僕って何度も魔王を倒しに行くじゃないですか、世界が平和にならないと結婚できないんですよ。十年以上魔王を倒しに行ってるので。

 姫様もね、ちゃんと結婚して世継ぎを産めないと困るでしょうし。王族の世間体って難しいですから。まあそんな感じです。


 

 ――では人間の女性以外との関係はどうでしょう? 確か精霊や異種族の女性達とも交流がありましたよね。


 そうですね、伝説装備を得たり色んな試練を攻略する為に知り合った方達がいますし、恋愛に近い感情を抱き合った事もあります。ただ肉体的に結ばれてはいませんね。精霊は物理的な肉体がありませんし、エルフは精神性を重んじるし肉体的には淡白ですから。

 彼女達には魔王を倒しきった後の逃亡生活で、すごくお世話になりました。けど結局僕のせいで迷惑を掛けてしまって……いたたまれず僕から姿を消した形です。元気にしてくれていると良いのですが。


 

 ――それだけ勇者の勇者が大冒険なさっていると、各地にお子さんが居そうな気もしますがその辺りはどうですか?


 あの、勇者の勇者が大冒険って言うのやめてもらっていいですか? 子供に関しては分かりません。確かめる魔法が無かった訳ではありませんが、時間が掛かるものなので、問題になりそうなほんの一部のそれこそ貴族階級の方達しか調べていないんです。そう、ほんの一部です。僕が魔王を倒しきった後に、僕の子を産んだ孕んだと名乗り出る女性が続出しました。自分で言うのも何ですが、当時の僕は誰より有名な世界を救った勇者だったので。利権絡みですよ。

 魔法検査した方達は皆騙りでしたし、他は調べていないので分かりません。そもそも心当たりの無い方達ばかりですしね。

 ただそうですね、逃亡生活の時に多かったんですが、旅人を稀人として受け入れ子種を貰う風習のある集落が幾つかありました。そういう所の方達は利権目的でもないし、名乗り出る事も無いですし、それなら僕なんかの種でもお役に立てていたらなと思います。

 

 

 ――ありがとうございました。最後にこのインタビューを聞いている方達に何かありましたらどうぞ。


 今僕は胸をかきむしられるような思いです。次回は是非、王の中の王の話を聞かせて貰いたいですね。ありがとうございました。


 ◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 赤裸々に、勇者らしく偽りなく真摯に真実を語り終えたリョウが顔を覆って動かなくなる。いや、小刻みに震えている。

 

「…………予想以上に勇者の勇者が大冒険してて笑っちまうんだけど、肝心の勇者の方が全然満たされてねえなこれ……なんというかむごい」

「うむ、流石勇者の勇者という感じの大冒険であったな……どの恋も最後まで遂げられなかった所に悲哀を感じるが……むごい話だ」

「勇者の勇者が大冒険やめてもらっていいですかね!?!?!」


「なあリョウ」

「……なあに、ガンさん」

「勇者って案外エロいんだな。おれの読んでた物語じゃその辺り分かんなかったよ……」

「そうだね児童文学と現実は違うからね……他の世界の勇者はもっとクリーンかもしれないけどね……」


「なあリョウさん」

「…………なあに、ケンさん。次回絶対王の中の王の世界征服お願いしますよ」

「あっ、はい」

「ケン、もう余計な事言うな。謝っとけ……」

「はい。リョウさんこの度は俺の好奇心のせいで大変むごい目に遭わせてしまい誠に申し訳ありませんでした」


 

 勇者の下半身事情は兎も角、恋愛事情って厳しいんだなと思いながら二人は眠りについた。

 勇者はひっそり枕を濡らして眠りについた。

お読み頂きありがとうございました!

少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

次話は明日アップ予定です。

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