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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第一部 村完成編

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19 ここに村をつくろう

 辿り着いた村を作る候補地。

 他と同じく天蓋のように樹木は伸びているが、大きな崖や段差は無く広い平地だ。大きな川にも近い。


「この辺りなんだけどね」

「ふむ、なかなか良いのではないか」

「雨で増水した川の影響も無さそうだな」


 三人で辺りを散策し、村作りに適しているか確かめる。


「整地すれば視界も開けるだろうし、位置的に光の柱も見張れるだろう」

「だね。大きな畑は難しいかもしれないけど、小さい畑や森の中で低木栽培出来る種類なら農業できるかな。どうガンさん?」


 リョウが地面の土を少し掘り、ガンに成分を見てもらっている。数日は観測を続けたいとの事で、眸に淡い光は灯ったままだ。


「土の栄養は乏しい。不思議だな、こんな上には緑があんのに」

「ああ、やっぱりか」

 

 ガンが土に詳しい訳ではないが、彼の世界の過去――失われた自然があった時代の豊かな土壌データと比べて貰っている。


「これは僕の世界でもそうなんだけど、色んな動植物のある豊かに見える所って結構土地の栄養乏しいんだよね」

「へえ、そうなのか」

「そう。同じ種類で栄養を奪い合うと足りなくなっちゃうから、栄養源の違う種類で棲み分けした結果多種多様になるっていう」

「はー、なるほどな」


「だから本当に豊かな土地だと、同種が増えるね。繁殖にも有利だし、此処の消えた人類もそういう所に多く住んでいたと思うよ」

「あのハゲまくってた辺りだな」

「そそ」


 此処に住むとしたら水源になるであろう大きな川の方も見に行く。


「地表の緑は、こういう土地でも生きていける種類っていう事もあるけれど、長年の積み重ねもある。土地の栄養が乏しいから、森林伐採とか土地開発で大きく更地にしちゃうと簡単に戻せなくなるんだよな。残ってて良かった」

「まあギリだな。これ以上緑が減ってたら他も色々やばかったと思うぜ」


 ガンが空を見上げる。

 今は回復中だという、人間のせいで損なわれたという色々な数値の事だろう。


「リョウさんは土関連に詳しいのだなあ」

「この辺りは旅先で聞いた話だよ」


 旅先で食材や料理の話を聞くと出てくるのだと。


「成程、旅の恩恵だな! ……と、」


 感心して聞いていたケンが、何かを見つけて立ち止まる。


「どうしたケン」

「二人とも! ワニだ! ワニがいるぞ!」

「ワニってなんだ」

「ワニだって!? えーっと見れば分かるよガンさん!」


 ケンが指差す方向――草むらの先、泥めいた川辺で休むワニの姿。


「へえ……! あれがワニ……!」

「ワニはな、噛む力が凄いんだ! そしてデスロールの使い手である!」

「デスロールってなに」

「ケンさんの世界でもデスロールって呼ばれてるんだな。デスロールは噛み付いた状態で体を回転させて獲物を食いちぎる技だよガンさん」

「それだ! デスロールという響きがなにせ良い!」

「えー、超怖えじゃん……」

 

「普通の人間なら怖いだろうがガンさんは怖くないだろう。ちなみに皮革(ひかく)として俺の世界では結構使われていたぞ」

皮革(ひかく)もそうですが、では此処で聞いて下さい」

「おお?」

「ああ?」


「ワニは食べられます」

「……!」

「……!」

 

 今日の昼食が確定した。

 

 * * *


 仕留めたワニを倉庫にしまい平地へと戻る。川の方も問題は無かった。日は完全に昇り、昼も近い。


「大体見て回ったけど、特に問題は無さそうかな」

「そうだな。村の候補地としてはだいぶ良いと思う」

「んだな、後は決め手がありゃ――……」


 ガンが瞬き、少し眉間に皺を寄せて黙った。


「どうしたガンさん?」

「ガンさん大丈夫?」

「ああ……大丈夫。こっち、こっちだ」


 目を開くと辺りを見渡し、二人を招いて歩き出す。足取りは方向が決まっているように淀みない。


「なんだなんだ」

「ほら、樹、でけえやつ」

「はっ、ツリーハウス……!?」

「そう、無えかと思ってちょっとこの辺り、上からズームしたんだよ」

「うおお……!」


 理解し二人の足取りも早まる。

 迷子になりそうな変わらぬ緑の景色の中、歩いて暫し。


「これだ」

「わーっ……!」

「わはー!」


 それは突然現れた。大樹。

 そもそもこの辺りはどこも低木の上に30~40m級の高木が茂って天蓋を作っている。だが、目の前の樹はそれを突き破り、遙かに越えていた。

 幹周も太く10m近い。今いる位置からでは見上げても全容が見えない。


「この辺りで一番高いやつだ。90m位ある。樹齢は600年位かな」

「えーっ、これは最高では……!?」

「ガンさんこれは素晴らしい決め手だぞ……!」


 ツリーハウスのロマンは元より、この樹は600年もの間天候や環境に負けず生きてこられた事になる。それはこの周辺の住みよさを裏打ちするものでもあった。


「決まりか?」

「良いんじゃないかな」

「うむ、賛成だ!」


 此処に村を作ろう。満場一致だった。

 それから本格的に計画を立てるため、一度拠点へ戻る事にする。


 

 * * *

 

「へえ、魔法移動ってワームホール航行みたいなもんなんだなァ」

「ガンさんが何を言っているのかさっぱりだが相変わらず魔法移動は便利で楽しいな!」

「ワームホール航行が何なのかは僕もさっぱりだけど、ガンさんの世界でも似たような技術があるって事は伝わったよ」

「流していいよもう、嫌だよ説明すんのめんどい」

 

 三人まとめて帰還魔法で戻り、河原に移動し、いざワニの解体となった。


「ワニはね、美味しいんですよ。臭みはないし食感も鶏肉に似てるしね。美味しいんですよ」

「2回も言うじゃん」

「これは期待が高まる」


 血抜きをして綺麗に洗い、切り込みを入れてから皮を剥がすようにナイフを入れて開いていく。中は綺麗な白っぽい肉だ。


「始末が大変だから内臓は傷付けないようにね。……普通にやると結構時間が掛かるんだけど、これは早いぞ」


 三人掛かりという事もあるし、ケンやリョウの持っている刃物自体が、魔法効果が付与されており切れ味が良い。作業はさくさくと進んだ。


「皮どうする?」

「他の獲物と同じように、ひとまず倉庫に入れておこうか」

「うむ、まだなめす時間も用意も無いからなあ」


 解体完了。大量の肉を抱えて拠点へと戻る。


「昼は簡単に焼いて食べましょうねえ」


 食べやすいサイズに切った肉を石のプレートで焼いていく。


「こりゃ良い肉だな。栄養成分めっちゃ優秀」

「おっとガンさん気付きましたか。ワニ肉は健康的でヘルシーなんです」

「ガンさん食べる度に解析してるのか?」

「や、初見だけな。後は何も考えずに楽しんでる」

「うむうむ、段々食の楽しみ方を心得てきている!」

 

 ひっくり返してスパイスをまぶして、火が通れば完成だ。お茶とフルーツも用意し、三人で食卓を囲む。


「いただきまァす」

「いただきます!」

「はいどうぞ~!」


 焼きたてのワニ肉を一口。

 相変わらずケンは勢いよく、ガンはそわそわと口に運んでいく。


「……! ほんとだ、鶏肉みてえ。うま……!」

「ウマーイ!」

「ふふふ、そうでしょうそうでしょう」


 二人の様子をにこにこ見ながら自分も口に運ぶ。脂の乗った鶏胸肉やささみのような味わいでとても美味しい。


「夜は油で揚げて……っとと、村の話もしなくちゃな」

「そうだった。ワニに気を取られてたぜ」

「うむ、ワニは美味いが具体的な相談もするか」


 ワニをもりもり食べながら相談を進めていく事にする。


「まずはあの樹を中心に周りを整地して、だろうな」

「だな。建材も整地してる間で手に入るだろうし」

「そうだね。あっ、先に結界張ろうかな」

「結界?」

「おお、魔法だな?」


「そう、魔法。あの樹を見る限り、今まで深刻なダメージを受ける程の天災には見舞われていないみたいだけど、今後は分からないでしょう」

「そうだな。この辺りの天候はかなり激しい」


「うん、ただ完全に護ってしまうと必要な雨風も弾いてしまうので、一定以上のダメージだけを防ぐ結界を敷こうかなと」

「ダメージっていうと、落雷とか樹が折れるレベルの暴風とかって事か」

「そうそう」

「いいじゃんいいじゃん」

 

 落雷や嵐で樹が倒れたり地形が変わったりなどは、この数日でも見る事だ。


「おお、それは素晴らしいな! 俺が思い切り殴っても防いでくれるだろうか!」

「それは無理かな~! 殴らないでねケンさん!」


「山頂でも思ったけど、おまえ最近体力有り余ってんな?」

「はっ、そうかもしれない。ここ数日すごく楽しくて力が満ち満ちている!」

「道つくれ道、道作ってちょっと体力削ってこいおまえは」

「おっ、はからずも先の担当が決まった感じ」


 ひとまずリョウは結界作成、ガンが整地、ケンは道作りと決まった。

 午後は分担の仕事をこなし、また夜が来る。

お読み頂きありがとうございました!


少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。


次話は明日アップ予定です。

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