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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第一部 村完成編

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17 ハロー!

 今夜のメインはカタツムリとマングローブ林で獲った大き目の蟹だ。

 カタツムリはしっかりと茹で、殻と内臓を取った後に多めの油と香草スパイスで炒める。蟹の方は葉を敷いた鍋で蒸し焼きにした。

 今日の夕飯は大盛りのため、肉も焼いたし芋も揚げたしフルーツもある。


 どっさりと石のテーブルに夕飯が並べられ、三人で食卓を囲んだ。


「いただきまァす」

「いただきます!」

「はいどうぞ~!」

 

 早速カタツムリを口に。

 貝のような食感、香草と油で炒めたので臭みは殆どない。


「おー、うまい。この食感新しいな……こりこりしてる」

「ほう、貝のような味わいなのだな!」

「そうそう、貝に似てる。貝と違って危ないから生食は駄目だけど」


 蟹の方も殻を割って身を取り出す。毎回勢いよく二人が食べてくれるので見ている此方も幸せになる。


「ガンさんはそもそもだけど、ケンさんは豪華な食事を沢山食べていただろうし、心配だったんだけど毎回美味しそうに食べてくれて嬉しいなあ」


 何せ元王様なのだ。最初は兎も角回数を重ねると心配にもなっていた。だが一切そんな素振りは無く、毎度幸せそうにがっついてくれている。


「ははっ! 確かに高級で美味い料理は食べ尽くしている。だが俺にはリョウさんの料理の方が美味く感じるのだよなあ」

「えーっ」

「素材や腕の力というものは確かにあるだろう。リョウさんの腕が劣っているという訳では無いぞ。だがなあ、こうして人と食べる飯が一番美味いんだ」

「ああ、そういう」

「うむ、もう治世に入ってからの飯の味など覚えていない。だがこの味は忘れないだろうな。リョウさんの料理には心がある」


 にかっ!とケンが笑う。


「ひゃあ、照れちゃう照れちゃう」

「っひひ、おれもそもそもの食生活が――だけどまったく同意だぜ。リョウ、ありがとな」

「ガンさんまで……! いや、けど嬉しいです。ありがとう二人とも……!」


 今日も幸せに、食事の時間は流れる。


 * * *


 片付けも終わり寝る前の時間。

 竹の寝台にそれぞれ寝転がり、昨日から恒例の娯楽タイムとなった。


「今日はおれの番で、敵勢生物の話だったな」

「うむ! 強くて大きい虫の話だな!」

「ひそかに滅茶苦茶楽しみにしてました!」


「つっても言葉で説明しても想像しきれんだろうしな、そうだ」


 ガンが思いついたよう、片手をあげて空中で何やら操作。指先が微かに光る。


「言語の検証兼ねて映像で見せてやる。今ちょうどリンクしてっから、データダウンロードできるわ」

「デー……なんて……?」

「分からん言葉は置いとけ。おれの魔法だよ。見てりゃ分かる」


 言った通り、すぐに空中にスクリーンのようなホログラムが浮かんだ。

 同時に流れる勇壮で賑やかな音楽。音声付きだ。


『ハロー! 大切な子供たち!』

『こちらの番組は人類連邦政府提供でお送りします!』


 画面には手を繋いだ人型が青い星を囲むようなシンボルが浮かんで、陽気で朗らかな声が流れる。一時停止。

 

「今何て言ったか分かるか?」

「えっ、何これすごい――じゃなくて、はろーたいせつなこどもたち!」

「こちらのばんぐみはじんるいれんぽうせいふていきょうでおおくりします!」

「おっ、おれ以外が喋るんでも音声なら共通言語設定されてんのな」


 じゃあ通訳要らんな、とガンが映像を再生する。


「これはおれの世界で兵士になるガキどもが見せられる“教育番組”だ。子供向けだが、おまえらにゃ丁度いいだろ」

「わーっ、何それ何それ!」

「ワクワクしてきたぞ!」


 ――番組の、はじまりはじまり。


 ◆◇◆◇◆◇◆

 

(シンボル画面から一転、銀河をバックに立つ一人の男)

(ヒロイックなBGM)

(かっこいい宇宙スーツに身を包みかっこいい光線銃を持ったマッチョマン。歯が光る。かっこいい)


 ハローハロー! 大切な子供たち! 兵士訓練は順調かな!?

 私はご存知キャプテン・ティーチャー! 人類連邦かっこいい男ランキング10年連続一位! 殿堂入りのナイスガイさ!

 さあ、今日も君達を教育するべくやって来たぞ!


(10年連続一位! の辺りで入る黄色い悲鳴のSE)


 今日の授業は、恐らく戦場に出た君達が一番多く遭遇するだろう兵士(ソルジャー)分類の敵勢生物【地上編】第1回だ! テストに出るからしっかり覚えておくんだぞ!


 第1回の敵勢生物は『兵隊蟻(ソルジャーアント)』だ!

 体長は小さいもので2m、大きい物は8mほどになるぞ! 知能は低いが獰猛で外殻が非常に硬い! 時速はおよそ100km前後、稀に600km級の特殊個体が存在するがそちらは【特殊個体編】で解説するからな!


(画面の切り替わり)

(月面に似た荒野を地平線まで埋め尽くす夥しい数の巨大蟻の軍勢)

(カメラの方へ恐ろしい速度で向かってくる)


 遭遇時の注意点だ! 数百数千数万の軍勢の場合、進行方向には立たないこと!

 特に障害物の無い平地! すーぐ轢かれて死んでしまうからな!

 

(悲鳴。破砕音。血飛沫。画面を蹂躙する巨大な節足と土埃)

(ややありカメラ破損による砂嵐映像からの暗転)


 顎の力は体重の300倍、これは大抵の物質を破壊する! 強酸性の体液を噴射する場合もある! 噛まれても浴びても終わりだ気を付けろ!


(蟻の軍勢が都市ごと人々を噛み砕いて侵攻する映像)

(立ち向かった兵士達が強酸体液を浴びせられ見る間に溶けていく映像)


 ハハハ! 少々ショッキングだったかな! だが怯える必要はない! 一見無敵に見える彼らにもちゃんと弱点はある!

 

 まず彼らは一定以上の熱に弱い!

 体重が重い分、重力にも弱い! 彼らの外殻が溶ける程の熱、もしくは自重を支えられなくなる程の重力を与える事で簡単に攻略できるぞ!

 こうした戦法は主に対コロニー戦で行われる! サテライトビームやグラビトン砲で一網打尽にする訳だ!


(巨大蟻たちのコロニーが空からの極大ビームで溶かされる映像)

(巨大蟻たちのコロニーが重力波で潰されて行く映像)

(イエーイ! ヒューヒュー! というような拍手喝采のSE)


 なになに? 白兵戦はどうするかって? ハハハ、心配ご無用! 彼らの最大の弱点は中枢神経だ! 君達に支給される基本装備でも十分対応可能となっている!


(巨大蟻の断面と中枢神経の場所を示した図)

(図がワイプになり、ボディアーマーを纏った兵士達がアサルトライフルで巨大蟻に一斉射撃をする映像)

(狙いが甘かったのか大勢の兵士があっという間に無惨な事になる映像)

 

 おっとこれはNG集行き!


(改めて、きちんと狙いを定めて一斉射撃。巨大蟻が倒れる映像)


 ――このように、白兵戦でも十分対処は可能となっている! 更に君達に植え付けたナノマシンが成長すればより高度な対処が可能となるだろう!

 これからもどんどん学び訓練し成長していこうな!


(エモーショナルなエンディングテーマのフェードイン)

 

 最後に、大切な子供たちよ! 死を恐れるな! すべては人類存続の為である! 人類の為に殉じるのは我らが誇りであり栄誉である!

 

 だが可能な限り生き延び敵を倒し人類に貢献するのだ!

 

 君たちは多くのコストを払って作られた大切な子供たちだ! コストとは期待! また義務である! 君たちは見合った働きを返さねばならない!

 それこそが生きるということ! 私はいつでもその手助けをしよう!


(感動的に目を潤ませたキャプテンのウィンクとかっこいいポーズ)

(ウィンクも歯も光る。かっこいい)


 では本日の授業はこれまで!

 また次回だ! 大切な子供たち! ハブアナイスデイ!


(どんどん壮大になるエンディングテーマとエンドロール)

(画面が人類連邦政府のシンボルに切り替わり『この番組は終了しました』のテロップ)


 ◆◇◆◇◆◇◆

 

 再生停止。浮かんでいたホログラムも消える。

 

「………………………………」

「…………………………」

「どうだった?」


「え……あの……こども向け…………?」

「……何故だか強制的にキャプテンかっこいい! とは思ったがこう……」

「ね……うん……ええと、教育って…………方向性でびっくりするくらい怖くなるんだなって……キャプテンはかっこいいんだけど……その……」

「そう……そのなんだ……なあ……?」

「やめろ、おれはあれを見て育ってきたんだよ……!」


 あまりの事に大変言葉を濁さざるを得ない。


「いやあ、ほんと色々言いたい事はあるんだけど、言葉にならないってこういう事を言うんだな……とりあえずガンさんの事は滅茶苦茶幸せにするからね……」

「ああ、ガンさん……絶対幸せにしてやるからな……! 絶対だ……!」

「やめろ……! もう十分幸せだよ……!」


 ガンが鬱陶しげに顔を顰める。リョウは今見たものを反芻して顔を覆った。ケンですら切ない顔をした。


「……これさ、まだシリーズで続きあんだけど」

「あ、それは見ます」

「絶対見ます」

「分かった。ダウンロードしておく……」


 三人とも今夜はキャプテンとギャラクシーの夢を見た。

お読み頂きありがとうございました!

少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

次話は夜に一話アップ予定です。

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