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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第一部 村完成編

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14 どすこい

 ――結果でいえば、多くの使える植物が見付かった。

 コーヒーと同じく、カカオや胡椒、キャッサバ等の芋類、豆類など低木栽培しやすいもの。他にはトウモロコシやサトウキビ、それに種の無いバナナ。

 栽培するほど植えていたからだろう、少量とはいえ残っている。そう思わせる、この場所と気候で育ちやすい“文明”の名残だった。


 だが、建物などの名残は無い。

 人が暮らしていた痕跡は植物以外に何もない。


「この辺りで建物となると、竹や木で作るだろうし、小屋程度だろうし、そりゃ時間経過で無くなっていてもおかしくはないんだけど……」


 どうして滅んだのだろう。滅んだとしてどの位が経ったのだろう。

 人が滅んで緑に呑まれる位の時間は経っている筈だが、それ以上はさっぱり分からない。


「すごく離れた土地に行ったら、更地とか戦争の跡とかあるのかもなあ……っとと、」


 気付けば太陽が真上に来ている。探索に夢中で気付かなかった。慌てて呪文を唱えて拠点へと戻る事にする。

 


 * * *

 


「ごめん、遅くなった! ただいま……!」


 魔法陣は無事だったようで、問題なく拠点へと戻れた。が。


「えっ、二人とも何してるの」


 戻った瞬間見たものは、相撲を取っている二人だった。


「おっ、リョウ遅かったじゃ――っぶぉ!」

「おお、リョウさん! おかえり!」


 帰還に気付き、笑顔を向けたケンが簡単にガンを転がしている。


「ええっ、二人とも何してるの」


「おまえの帰りが遅えから、平和的な争いを模索してたんだ」

「そう、平和的な争いだ!」

「ちょっと意味が分からないですね」


 転がったガンが跳ね起き、渋い顔で土を払う。


「駄目だケン。これはおまえに有利過ぎる」

「むう、そうだな……!」

「分からないけどそうだね、体格が違い過ぎるね」


 要約すると仕事を終えてしまった二人は暇になり、雑談の途中『もし意見が対立した場合どうするか』という話になり、平和的な決着のつけ方、つまり争う方法を色々模索していたという事だった。


「今は三人だから多数決でもいけるだろうが、全員意見が割れたり偶数だと困るかんな。もっともらしい事言ったけど暇潰しだ」

「うむ、喧嘩になった時も平和な争い方があれば環境を壊さずに済むからな! 暇つぶしだが!」

「まあ必要な事ではあるよね。暇つぶし連呼しないで笑っちゃうから。けど大事だしそれもおいおい考えていこうね」


 笑ってしまいつつ、ひとまず荷を下ろす。思った以上に収穫があり過ぎて、背負った籠では収まらず両手にもツルで括った束を沢山抱えていた。


「おー、大収穫だったみたいだな」

「そうだね、びっくりする位色々発見しちゃって――……」


 気配。ケンの方を見る。招くように笑顔で腰を落として両手を広げていた。


「…………おっと」

「……おまえならいける! かもしれねえ……!」


 気付いたガンも交互に二人を見る。激励のようにリョウの背中を叩いた。確かに自分はケン程ではないが、ガンより背も高いし体格も良いし、各種神の加護を受けているので見た目以上に力がある。


「ようし……!」

「わはは! 来るが良い!」


 袖まくり、じりじりと構えて近寄っていく。

 ガンの号令で激突、胸を合わせて互いの着衣を掴んでがっぷりよつ。


「ほう……! なかなか!」

「ぐぬ……!」


 全力で力を籠めるが僅かも動かない。ぎりぎりと筋肉が悲鳴をあげ、血管が太く浮き、見る間に汗が浮かぶ。それでも。


「嘘でしょびくともしないって……! オーガキングだって投げ飛ばせるのにぃ……!」

「わははー!」


 汗ひとつ浮かばない余裕の笑顔で、ケンがまたリョウを簡単に転がした。


「んぶ!」

「アー……やっぱ駄目かあ」

「ふふーん!」


「これやっぱり駄目だよ。ケンさんが有利過ぎる……!」

「だろ~?」

「うむ、これは駄目だな! だが二人と戯れる事が出来て楽しかった!」

「それは何より……!」

「次は別の考えんぞ! 飯にしようぜ飯ィ」

「はーい、今作るからね~」


 唐突な戯れを終え、ひとまず昼食の準備をする事にする。

 リョウは午前の成果の食材を確認しつつ調理を、残る二人は洞窟の方で何やら工作を始めた。


「うわ、ほんとに沢山色々狩ってくれたんだな……! 助かるう……!」


 ガンが狩り、ケンが捌いた肉は大猟で種類も様々だった。これで暫く食うに困るまいとホクホクしながら、今使う分以外は倉庫にしまってもらう。


「ケンさんの倉庫があって本当に助かるよ。保存を考えると燻製とか干し肉にしないといけないんだけど、塩をめちゃくちゃ使うからな……!」

「塩かあ。海じゃねえと採れねえんだっけ?」

「いや……地層とか温泉とか塩湖からも採れるんだけど、この辺りはどうかなあ」

「ふむふむ」

「生きていく上の塩分だけなら、まあお肉を食べれば足りるんだけど、折角なら美味しいものを食べて欲しいのでね……」


 解体された猪の脂肪を、ケンから貰った丸盾を鍋代わり、じわじわと炙って油を抽出する。その隣では見つけてきた芋と猪肉がそれぞれ茹でられている。

 鍋が増えたので同時に幾つも調理できるのが嬉しい。

 その傍ら、野生のハーブや唐辛子を刻んでいたリョウが、塩の残量を思ってしんなりする。拳大の岩塩の塊を所持しているのだが、このままではいずれ尽きてしまう。

 

「俺達はもうリョウさんの飯の美味さを知ってしまったからな……」

「そうだな……初期に比べりゃ味付けなしでも全然美味えと思うけど、幸福度は下がるだろうな……」

「うう……僕は二人を幸せにしたいんだ……! ひとまず土を食べている動物を見かけたらすぐ教えてください」

「土?」

「塩場って言ってね。動物が塩分を摂取するために、塩分が含まれた土を食べる事があるんだ。そういう土壌の周囲なら、何か見つかるかもっていう」

「なるほどなるほど」

「分かった!」


 昼食の完成を待つ間、ケンとガンはずっと熱心に何かを作っている。

 それをたまに横目で見つつ、抽出した油で下茹で毒抜きした芋を揚げ焼きに。茹でた猪肉は塩とハーブと唐辛子で味を付ける。青パパイヤの皮を剥いてスライスし、酸味のある果汁とサトウキビの絞り汁と少量の塩で和える。

 勇者の握力をもってすればサトウキビの圧搾など容易い。それらをバナナの葉に乗せ、茶を用意すれば本日の昼食は完成だ。


「二人とも、もう出来るよ――と……わ! すごい!」

「おっ」

「此方も出来たところだぞ!」


 寝泊りしている洞窟内に寝台が出来ていた。壁面沿いに上手く、ちゃんと三人分出来ている。

 壁面の凸凹と小屋の応用のような枠組みを合わせ、真っ直ぐな竹を並べて固定しただけの簡易なものだが、地面で寝るのとは格段の差だ。


「地面で寝るより快適だろと思ってさ」

「うむ! ガンさんが何故かいきなり作ると言い出したので手伝ったぞ!」

「さっきまで暇つぶししてたもんね」


「さっきのアレで何度も土に転がされて発想に至ったんだよ……!」

「何度も転がされてたんだ……!」

「何とか勝てねえもんかと試行錯誤を……」

「なるほど……じゃなくて、いやこれは素晴らしいものですよ! 地面から離れる事で寝る時の安全度も上がるし、通気性良いし、濡れた地面で寝なくていいしね! 素晴らしいですありがとう……!」

 

 本当に素晴らしかったので、沢山転がされた労わりも込め盛大に拍手する。


「やった~」

「やったー!」

「おまえも混ざって褒められてんじゃねえぞ!」

「ほら俺にはガンさんを何度も転がして発想に至らせた功績があるから!」

「手伝った功績じゃないんだ……!」


 ともあれ昼食をとる事にした。

 喜んで飛びつく二人に遅れて、自分も食べ始めながら。


「あっ、そうそう……!」

 

 唐突な相撲ですっかり吹き飛んでいた。

 探索での色々を思い出し二人へ話す事にする。推測からの可能性に賭けて方向を選んだこと。その推測はあながち間違いではないかもしれないこと。

 二人の見解も聞きたかった。

お読み頂きありがとうございました!

少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

明日は昼過ぎと夜に二話アップ予定です。

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