03 政情
そして現在、例の3人の王子は、
次代のエルサニアを担う者としての最高の教育の賜物か、
見違えるほど御立派に成長されたそうですよ。
悪い方へ。
旧女王派の残党は現政権に直接携わることを避けて、王子たちの教育に全力で取り組む方向に邁進。
つまり、教育係や御学友、お世話するメイドさんに至るまで、全てソッチ系の人材で統一して王子たちを囲い込み。
幼い頃から有る事無い事吹き込まれ続けたおかげで、バイアスバリバリ状態で成長。
それはそれは見事な、三者三様のわがまま王子様っぷりだとか。
そこまで歪んでしまう前に、何故誰も正そうとしなかったのか?
現政権の重鎮たち、高い志を持ってクーデターに臨んだ面々は、
自らの権力が増していく快感にどっぷり溺れちゃって、
権力闘争での足の引っ張りあいに夢中だったそうですよ。
ライクァ王は、王の務めを果たすべく全力投球。
王子たちの惨状に気付けないほどに。
真っ直ぐに育った人って、他人に対して鈍感だとか興味が無いとかではなく、
悪意は簡単に人を歪めるってことに気付けないだけかもしれませんね。
閑話休題。
ライクァ王は、王の務めに集中。
戦時は誰もが恐れる最恐武人ですが、平時は国民想いの優しい王様。
もちろんあの戦乱のことは片時も忘れず、武人としての心構えを王の立場で存分に活かすやり方での国の舵取り。
そもそもが根っからの武人であるライクァ王。
武人としてのチカラ比べ的な試合や勝負は大好物。
だから、個のチカラを飲み込んでしまう戦争は大嫌い。
より良い国の在り方を模索して辿り着いた結論も、武人らしい真っ直ぐなもの。
戦争は勝たなきゃ駄目だけど、そもそも戦争すること自体が間違い。
ただ、ケンカと同じで巻き込まれたり吹っかけられたりすることもある。
なら、相手に隙を見せない国造りが最善手。
国として圧倒的に強くなれば、他国はちょっかい出してこなくなるはず。
その真っ直ぐな姿勢、まさに武人。
そして、富国強兵の強兵の方に全力で取り組んだ。
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停戦から数年、順調に強国化が進むエルサニアにライクァ王も御満悦。
ただしライクァ王、決して愚王ではないが、いかんせん武人目線のみで視野が狭かった。
富国強兵の強兵のみに突っ走ってきた国の歪み、
王宮内の煩わしいアレコレから目を背けてきたことによる国の歪み。
全ては武人であることを頑なに曲げずにいたライクァ王が招いたこと。
その頃、大国エルサニアを国として機能するよう動かしていたのは、
権力闘争に夢中な元クーデター派では無く、
自分達に都合のいい次期王育成に全てを懸けている旧女王派でも無く、
もちろん軍備に夢中なライクァ王でも無く、
良識派とでも呼べる、エルサニアの将来を憂う少数の人たち。
ただ、難破しないようギリギリの舵取りするだけで精一杯。
そんな有り様のエルサニアでは、
停戦中の隣国クルゼスとの関係に進展などあるはずも無く。
もちろん、長年の戦争による両国の傷が魔法のように癒えるはずも無く。
まずは前女王のやらかしの精算を含む戦後処理、
それから関係改善に向けての交渉。
なんてことは微塵も無いまま、
停戦は、ただ両国の歩み寄りを止めただけ。
そんな歪な静けさの中、エルサニア王都を震撼させる知らせが届く。