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サラミさんのお宅の寝室、
ベッドで昏睡中の男性は、
サラミさんの待ち人のケイトさんでした。
よくよく見ると、サラミさんと同い歳くらいの可愛らしい顔立ちの男の子。
ってか、待ち人が男の子だったとは、
このノアルの目を持ってしても読めなかった展開。
だって、"ケイト"って聞いたら、女性だと思うでしょ、普通……
『本当に、いつまで経っても鈍感だよね』
「それがノアルさんですよ」
あー、何だか懐かしいな、このやりとり。
俺も歳をとったもんです。
いや、あの頃もおっさんだったけどさ。
それよりも、看病しているサラミさんのご迷惑にならないよう、
俺たちはとっとと退室しましょう。
そう、俺は空気の読めるおっさん。
先は読めないけど……
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目覚めたケイトさんから、諸々事情説明。
その側には、彼を見つめながらぴたりと寄り添うサラミさん。
お若いふたりが何だか眩しすぎるので、
腕組みして目を瞑る、俺。
いえ、ちゃんと聞いてますってば。
勇者としてそこそこ使えると判定されたケイトさん。
馬鹿にされていたわけでは無く、
ケイトさんの固有スキルが、そのものズバリ『そこそこ』
自身が体感した能力を"そこそこ"のチカラで再現出来る能力。
考えようによっては無限の可能性があると言えなくも無いのですが、
やっぱり"そこそこ"なので、流石に最前線は無理。
というわけで、サポート部隊に回されたそうで。
補給部隊やら、輸送部隊やら、後方治療部隊やら、
そりゃあもうあちこちと。
うん、マーリエラさんが所属部隊を特定出来ないわけです。
とても重宝されたそうですよ、何せ体感した能力は"そこそこ"とはいえ何だって出来ちゃう。
あちこちのサポート部隊から、引く手あまたの大人気。
囲い込もうとする部隊や、これ以上人気が拡散しないよう情報統制しだす部隊まで。
間違っても最前戦なんて近付けちゃ駄目っていう、嘆願書まで飛び交うほど。
ただ、それが一部の勇者たちの不評を買ってしまったそうで。
最前戦を支えている俺たちよりアイツの方が人気があるのは納得いかねえ、みたいな。
まあ、人気が出たのも嫉妬されたのも、間違いなくケイトさんが可愛らしい男の子だから、ですよね。




