20 対策
サラミさんのために、今の俺たちが出来ること。
アンチさんは、あの家のより一層の安全対策を模索中。
俺としては、あれほどまでセキュリティガチガチなら心配いらないと思うんだけど。
以前、謎の連中から襲撃された時も、あの家が守ってくれたそうですし。
扉の方も、あの必殺"乙女"パンチでもブチ破れない程に超強化されたのですよ。
『これで完璧、かな』
何ですか、その銀色の球。
テニスボールくらいの丸い球で、光沢が『メタルっぽいスライム』モードのアンチさんにそっくり。
『えーと、私の分体、かな』
おっと、もしかしてアンチさんが未婚のママさんに!
『違うってば、前に言ったよね、融合したスライムの方の意識もあるよって』
あー、言ってたね、そういえば。
元々の『メタルっぽいスライム』の意識も、ほんの少しだけ残っている、でしたよね。
でも、会話も出来ない程度しか残っていなかったはずでは。
『この子も頑張って修行したんだよ』
『で、ようやく分体を操れるくらいに成長したの』
えーとつまり、その銀の球は、オリジナルスライムでもありアンチさんの分体でもある、と。
『そうだよ、いろいろ教えたからサラミさんの護衛だって安心してお任せOK!』
ってことは、アシュトさんを守護していた時のアンチさんみたいに広範囲の不審者阻害結界を張れたり?
『結界は張れるけど、まだパワーが弱いみたいで、不埒者をスポンって吹っ飛ばしたりは出来ないみたい』
『精神感応で眠らせるくらい、かな』
いや、充分凄いよね、それ。
じゃあこれからは、その子が付きっきりでサラミさんを守護してくれるってことだね。
『私が知ってる人の精神パターンは全て教えているから、それ以外の人が近付いてきたら範囲結界に触れたとたんにぐっすりおやすみってこと』
『日中は、見知らぬ輩が近付いてきたらサラミさんと相談してから対処する』
『夜間やサラミさんの留守中に忍び寄ってくるヤツは、問答無用で眠らせる』
『どう、完璧でしょ』
うん、凄く良いアイデアだと思う。
ただ、完璧に思えるアイデアほど抜け道があった時の被害が大きくなるから、
"問題の根本が解決していない限りは、対策のため知恵を振り絞るという行為に終わりは無い"、だよね。
『流石はおじさま、歳の功!』
お褒めに預かり光栄です。
この場合の"歳の功"は、若いのに頑張ってるね、という歳上の方からの労いのお言葉、ですよね。
『……スーちゃん、眠らせちゃっていいよ』
ふふん、残念ですが、俺には睡眠系の技は効かな……
zzz……




