02 経緯
『エルサニア王都でクーデター発生』
早耳旅商人たちの噂話しは、アルセリア城城門前に張り出されたおふれで真実に。
俺たちは、巡回司法省情報を得られるマーリエラさんからリアルタイムで知らされていましたが。
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ここアルセリアと隣国エルサニアは、長年に渡る同盟関係。
ただ近年、ハルシェリカ女王の代になってからいろいろと疎遠になっていたことも事実。
正直、あの女王、苦手だし……
というジオサニア王の決断で、アルセリア王国としては事態を静観する方向に。
もちろん、産まれたばかりの王子を厄介ごとから遠ざけたいのは、親として当たり前。
平穏ナニソレなイケイケムーブではっちゃけていたエルサニアのハルシェリカ女王、
ついには同盟国からも愛想を尽かされる。
もう近隣諸国で迷惑女王を支持しているのは、あのガルグリスタ王家くらい。
以下は、世間の噂と特務司法官マーリエラさん経由の情報からの、事態の経緯(推測を含む)
ハルシェリカ女王派とクーデター派、
まっぷたつに割れるかに思われたエルサニア王国ですが、
クルゼス戦線を支えてきたライクァ将軍の動向が明暗を分けることに。
敵国のクルゼス王も認める最強の武人、ライクァ将軍。
エルサニア最強どころか人族最強、とまで敵国の王に言わしめた、
武勇と人望を兼ね備えた英雄。
そのライクァ将軍がクーデター派支持を宣言し、
直属の先鋭部隊と共に、電撃的な行軍でエルサニア城に乗り込んできた。
女王派はあっさり戦意喪失し、ほぼ無血開城。
ハルシェリカ女王は拘束、公表されていませんがおそらく……
政変の立役者ライクァ将軍は周囲から祭り上げられ、そのまま王に。
そしてエルサニア王国は新たなる時代へ。
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クルゼスのアルゼハルト王からの停戦の呼びかけにすぐさま応じたライクァ王。
迷惑女王が巻き起こした戦乱もようやく収まり、エルサニア国内も一丸となって新体制構築へ。
となるはずだったのですが、残念ながら状況がマズかった。
ほぼ無血開城だったため、ハルシェリカ女王派の重鎮たちもちゃっかり健在。
もちろん新政権の発足メンバーからはハブられたのですが、
そこは王宮内で権力闘争に明け暮れていた古狸たち、
陰でコソコソ暗躍するのはお手のもの。
強固な一枚岩となる前にと、すぐさま新体制に潜り込む画策を始め、
上手いこと影響力を手に入れてしまう。
古狸たちの狙いは、ハルシェリカ女王の残した3人の王子たち。
古より連綿と続いてきたエルサニア王家の血統を絶やすなど言語道断、
などとゴネながら、ライクァ王に王子たちの処遇を委ねる。
最強の武人であるが、それ以上に人として真っ直ぐなライクァ王。
次代のエルサニアのためならと、まだ幼い王子たちを次期王候補として育てることを決意。
そんな感じの、新生エルサニア王国の船出。