17 行動
追い出されるようにして、サラミさんのお宅を退出。
確かに俺たちの初動ミスでもあるのだけれど、
少々頑な過ぎやしませんか、サラミさん。
せっかくの安住の地を離れたくないってだけじゃなく、
やっぱり、何かワケありなのかも。
「私は、もう少しこの町に滞在して、まだ出来ることがないのか、考えてみたいです」
「サラミさんがあそこまでこの町にこだわる理由、それさえ分かれば……」
はい、いつもながら優しさ満開ですね、マーリエラさん。
もちろんお付き合いしますとも。
『私、しばらく別行動しちゃってもいいかな』
『どうしてもあの扉のことが気になっちゃって……』
はい、もちろんOKですよ。
アンチさんなら単独行動も大丈夫とは思うけど、
何か買い物とかしてくるなら、お小遣いの方は足りてる?
『平気だよ、マーリエラさんが用意してくれた冒険者カードがあるから、いざとなったら依頼をこなしてバンバン稼いじゃうし』
『それじゃ、行ってきまーす』
車に、じゃなくて、馬車とかいのししに衝突しないよう、気をつけてねっ。
さてと、俺たちは宿に戻って作戦会議、ですね。
町の人たちへの聞き込みとかは、もう少し落ち着いてからの方がいいと思いますし。
「宿の方には連泊手続きして、旅費を節約しましょうね」
流石は素敵な若奥さま、家計の方もバッチシですな。
じゃあ、浮いたお金でアレなんかどうでしょ。
宿の隣りのお店で飾られていた、魔うさぎの毛皮のショール。
凄く品があって、マーリエラさんによく似合いそうでしたよ。
若奥さま感を一段とアップ、みたいな……
つねりっ
いてぇっ。
ちょっと何ですか、マーリエラさんっ。
いかにおっさん相手とはいえ、お尻つねっちゃ駄目でしょ。
公衆の面前での痛みを伴う過剰なイチャイチャなんて、巡回司法官に即通報されちゃいますよっ。
「だって……」
だって?
「今日は……宿に……ふたりきり……」
おっと……そうでした。
今晩はまさに、千夜一夜でセンセーショナルしちゃう千載一遇の大チャンス!
そう、長旅で溜まっているのは、旅の疲れだけじゃないってことですよっ。
流石はアンチさん、空気を読めるご長寿ゴーレムコア。
ここまでアシストしてもらったら、おっさんだって得点王くらい狙わなきゃ。
今日こそ目指せっ、夜のハットトリック!
「声に出てますよ……」
大変申し訳ございません……




