11 目的
お馬さんモードのアンチさんの背に揺られながら、街道をぱかぱかと。
目指すはエルサニア王国のアネスという町。
エルサニア王都の北、エルサニア大森林にほど近い小さな町、ですね。
今回の旅の主な目的は、ふたつ。
その①『在野の召喚者たちを狙う謎の組織への対処』
その②『野放しになっている逃亡勇者たちへの対処』
両方とも先が見えないので、どんな長旅になるかも分からんけど、
俺としては諸々片付いたら、
いつかはアルセリアに戻って来たいです。
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「本当にその作戦でよろしいのですか」
はい、よろしいのですよ。
パーティーリーダーが無い知恵振り絞って考えた作戦ですので、
成功させるよう、みんなで協力してくれると嬉しいです。
作戦名『おっとりおとり作戦』
今回の件、俺なりにいろいろ考えてみたんだよね。
気になったのは、目的その①の方。
各地に散っている召喚者の居場所やらの情報が、襲撃者側にダダ漏れしてるってこと。
それも、めっちゃ正確な情報が、ですよ。
だから大事なのは、情報の漏洩元が誰なのかを特定すること。
まず疑わしいのは、自国で呼んだ全ての召喚者の情報を握っているエルサニア。
例えば、召喚者情報を管理している立場の小役人とかが、
小遣い稼ぎのために裏組織へ情報を売りさばいたって可能性も、無きにしも非ず。
まあ、そんな感じで疑い出したらキリが無いんだけど、やっぱり怪しいっちゃ怪しいよね。
というわけで、情報漏洩の第一容疑者は、エルサニアの召喚者情報管理部門。
次に、各ギルドの冒険者登録情報にアクセス出来る立場の人。
在野の召喚者たちが全員ギルドに登録してるかどうかは定かじゃないけど、
この世界ではまともなデータベース持ちの組織って珍しいんですよ。
巡回司法省は別格として、他には各ギルドや大手商会くらい。
正直、国によってはギルド以下の情報管理体制なとこもあるようだし。
ってことで、第二容疑者は、各ギルドの冒険者登録情報管理部門。
もうひとつの候補は、残念ながら巡回司法省。
マーリエラさんには悪いけど、可能性はあると思う。
ただ、その場合は組織ぐるみってことは絶対に無いので、ある意味ありがたいんだけどな。
えーと、例のキルヴァニア王都支部は、根腐れ病にでもかかってたんでしょ。
そして……考えたくはないけど、身内の犯行。
つまり、仲間の召喚者の情報を売ったクズ召喚者がいるんじゃないかってこと。
実は、これが一番可能性が高い気がする。
よくよく考えてみると、在野召喚者襲撃事件が起こり始めた頃と、
エルサニアからエスケープする勇者が出始めた頃と、
タイミングがほぼ一緒なんだよね。
つまり、もしこのルートが正解だと、目的その①とその②が繋がっちゃうわけで。
金か恨みかは分かんないけどさ、もしこれがビンゴだったら絶対に許せないよ、俺。
何がなんでも召喚者同士は団結しろ、なんていう気はサラサラ無いけどさ、
踏み越えちゃいけない境界を土足で越えちゃうようなクズ野郎がいるなら、
野放しにしてたらいかんでしょ。
で、俺が考えたのが『おっとりおとり作戦』
俺の情報は敵側にとっくにバレてると仮定しての、
俺自身をおとりにする作戦。
俺がザコザコで使えないおっさんなのは、訓練生してた当時は結構有名だったからね。
一連の事件から得た情報から推察すると、襲撃のターゲットとしてはまさにドンピシャ。
闘いが苦手な"低職"召喚者たちを拐ってナニがしたいのかは全く分からんけど、
めっちゃ美味しそうなエサだと思うよ、俺。
今まで治安の良いアルセリア王都でぬくぬくしてたターゲットがふらふら旅に出れば、
すぐにでもぱっくり食いついてくれるかも。
この作戦、実は情報漏洩元を絞り込む効果があったりもします。
もし俺が襲われたら、漏洩元として巡回司法省はナシ。
だってさ、凄腕特務捜査官と終始べったりなヤツなんて、
わざわざ襲わないでしょ。
ということで、俺たちがすべきことは、
①おとりとして、出来るだけおっとり振る舞いながらの普段通りのぶらり旅。
②襲ってきた連中を捕縛したら、あらゆる手段を行使しての情報入手。
作戦成功後の、組織壊滅やら何やらは、司法省なりギルドなりに任せるつもり。
うちのパーティーメンバーのトンデモな強さは百も承知だけど、
必要以上にみんなを危険に晒すのは、絶対にNG。




