第47話 探求心と自己中心
「信じられん…。 眼で見ているだけで、旨いのがわかる。素人の俺から見ても一流、ここまでの腕を持つ職人は王宮にもいないんじゃないか?
果実の細工は惚れ惚れする程に美しい…。 時雨さん、これは本当に食べ物なのか? 」
ザイさんが、美術品をみるように色々な角度から2種類のプリンアラモードを眺める。
「そうでしょう? 時雨さんは、凄いんです!! 一口食べれば、天国の門まで行けますよ。見た目以上に味が素晴らしいから、今までのお菓子には戻れませんよ?? 」
フフン!と鼻息荒く得意気にレツさんが言うと、テンさんはニコニコしながらうんうんとうなずく。
「眺めるのも結構ですが、私は、そろそろ味わいたいですね。冷え冷えですし、見た目以上にきっと美味ですよ?? 」
スプーンを持ち、ぼそりと『頂きます。』と言いプリンをすくい上げようと構えたところで厨房の扉が勢い良く開いた。
「ちょぉーっと待ったぁーっっっっ!!!!!!!! 」
コック帽をかぶり、銀髪の長髪を後ろで括った水色と金色のオッドアイの美青年が足早に向かってくる。
ギラギラした視線に圧倒されて皆固まったように動かない。
「そこの、黒髪のっっ!!!! 俺も、まだ見てねーうちに勝手に食うんじゃねーよっっ!!!! 技盗めねぇじゃねえか!!!! そこのエルフも、睨んでんじゃねえ!!!! 出禁にすんぞ!! 」
皆、呆気にとられていると厨房の奥から50代前後の小太りなシェフがもうダッシュで美青年の後ろまで駆け寄り頭を掴み、無理やりひれ伏させた。
「大変失礼な態度、店主として深くお詫びします。リアムっっ!!!! きちんとお客様にお詫びしなさい!!!! 」
「俺悪くねーぞ!!!! コイツら勝手に食おうとしたから止めたんじゃねえか!!!! 店の皆、見たがってただろ?? 店長もみたいって言ってたじゃねーかよぉ!! 俺もどんな味か食ってみてぇのによ!!!! 」
腕組みをし不機嫌を隠さないリアムの様子に店主は静かに強く威圧する。
「わ、悪かったよ。食事を邪魔するのは良くないよな。で、でもよ、俺がすげえって思うものを喰われるのは納得いかねぇし!!!! なんなら俺も作りてぇし、まだ、すげえ物あるなら当然だけども知りてえ!!!? 」
清々しい程、謝っていないバカ素直な様子につい吹き出してしまう。実家にいる、『天上天下、唯我独尊』を地でいく俺様王子末っ子猫を思い出した。オッドアイな所もそっくりだ。
「なんとも、自分勝手なやつだな…。
だが、センスだけは悪くないようだ。
すまないが、今回だけ特別にこの小僧らの分を作ってやってくれないか?? その分の費用は、こちらでもつ。」
カレンが、キセルの煙と戯れながら気だるげにして天井を見上げる。店主の方へ向き直すと、うっとりする程艶のある毒を含む声で、話しだした。
「だから、はやく食べさせて貰えまいか?? この菓子を前に、いくらなんでも私達へのおあずけが過ぎるのではないか?? 」
店主は、深く頭を下げながら厨房へリアムを引きずっていく。
「皆様大変、失礼致しました!!
リアムにはキツく反省させますのでお許し下さい。
重ねて私共への探求心へのご配慮いたみいります。従業員一同、カレン様を含む皆様方の広い心に感謝します。当店でごゆるりとお過ごし下さいませ。」
パンっと手をたたきいただきますのポーズをとるレツさん。
「さあ、頂いちゃいましょー!!
美味しいうちに食べないと後悔しちゃいますよ。時雨さんのお菓子は、やみつきになるんですから!!!! 」
レツさんは、いただきまーすと言いながらスプーンでプリンをすくい『おーいしーい!!!! 』とニコニコ。スーザさんやカレンさん、テンさんやザイさんも驚きつつ、パクついている。
『なんて柔らかい!! 』『ほろ苦ソースも美味い!!!! 』と口々に言いながら子供のように笑いあう姿はこちらまで嬉しくなる。
テンさんに頼んで『ガーラの泉』の従業員分のプリンアラモード2種を別室に用意してもらった。
リアムと店主のヨハンさんが一番熱心に観察しつつ味わっていたようだ。2種の姿をスケッチは勿論だが、一口ごとにメモをとっていたそうだ。
材料や製造法等お互い討論をしながら質問する箇所を相談していたようだ。




