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第19話 市場へ(華side④)

エルザの部屋は工房のような造りになっていて、ヒノキに似た木の香りがした。

テーブルの上には、途中まで花のような模様が彫られた板や魔獣が彫られている部品(ベルトのバックル?)のような物などが置いてあり、他にも大工が使うような道具もあれば、チョークのような線を引く炭もある。

今まで、あちらの世界でも友人の部屋に何度も入った事はある。勉強机や本棚があり、中には教科書やコミック、雑誌や小説が置いてある。ベッドのヘッドボードにはだいたいスマホが充電中になっているありふれた部屋等々。テスト前には、集まって勉強会をしたりもした。ほとんどが、勉強会とは名ばかりのお菓子持ちよりの恋バナやおしゃべりをする会ではあったが、いつも楽しかった。

只、エルザの部屋はそのどれにも当てはまらない。まさに職人の仕事場なのだ。

ここまで、興味のある物だけしか置かれていない欲に溢れた部屋には今まで入ったことはない。

ん?そういえば、ジャンルは違うけど1人いたわ。

K-POPアイドル好きで、自作のうちわやポスターが飾られていて、天井にもポスターが貼ってあり、『夜、目が合うと怖いだろうなー。情熱が凄いなー!』と圧倒された。


そんな事を思い出しながら部屋の中をキョロキョロしていると、お茶が入ったカップを両手に持ったエルザがこちらをじっと見ている。

「なんか、色気のない部屋でガッカリしたんじゃないか?そこのテーブルの上ナイフもあるから気を付けて。」

無造作に置かれた使い込まれた年代物のナイフは、柄に中性的な女神様が彫られている。短髪の髪型や雰囲気もどことなくエルザに似ている気がした。

「この女神様、どことなくエルザに似てるね。エルザが造ったにしては神々しい感じ。貰った髪止めとも絵柄が違って見えるよ?」

「ああ、それ?」

エルザは返事をしながら、こちらのテーブル迄来ると、目の前にカップをごとりと置いた。紅茶のような爽やかで甘い香りが辺りに立ち込める。

私は、お礼を言いカップを受け取りながら、エルザが続きを話し始める迄待つ。

「これは、うちの曽祖父が彫ったんだって。めちゃくちゃ綺麗だろう?細工が細かすぎてあたしじゃ彫れないよ!女の子が産まれたら必ず渡してくれって話してたんだと。多分お守りのかわりだろうね?」


ドワーフは皆凄いなって思う。コツコツと手作業で創意工夫して自分の欲しい物を造っていく。真似できないよ。

今まで欲しい物は、お店でいつも買ってたしそれが普通だった。自分で作るなんて面倒だしお店で買う方がお洒落な物も多い。

これからは『普通の基準』がどんどん変わっていく。馴染んでいかないと周りから浮いていくから、それは避けないといけないよね?

今着ている服もエルザに選んでもらったんだけど、古着がほとんどでサイズが合わなければリメイクしてくれた。しかも、センスいいから最初見た時よりも服が可愛くなってるのが凄すぎる。他にも数着選んでくれて、はぎれで作ったバックに詰め込んでくれた。

『アイテムボックスに入れるから無理に詰め込まなくていいよ?』と言うと物凄く驚いていた。

アイテムボックス持ちは相当珍しく魔力の強いエルフでも3割程しかいないらしい。

貰った服をガンガン入れるところを見て、『ほーっ!!便利だねぇ!!』とか『へーっ!?ごちゃごちゃにならないんだ!!あたしにもあればなぁ…。』を連発していた。


「そろそろ、スーザ伯母さんの所に行かないとね!市場に行くんだよね?あたしも一緒に行くよ!今回はカレンの商隊が来る筈だから絶対見逃せない!?」

カレンって地名?お店の名前?さっぱりわからん。

まあ、聞けばいっか!!

「カレンは人気のお店の名前なの?」

ブハっとエルザが吹き出した。

「ゴメン!あんたが知らないっていうのが新鮮で思わず吹いた!!カレンは、服飾・雑貨屋の女主人の名前だよ。スーザ伯母さんの古ーい友達なんだって。あんたも見たら驚くよ!ホント憧れるよー。カレンはどの商人よりも洒落てるからなー!」

どうやら、どの人よりもキラキラした人だというのはわかった。

エルザの部屋を出ると、食卓の椅子に腰かけていたスーザさんとメイラさんが嬉しそうにニコニコしている。

古い友達に会えるのをいつも楽しみにして待っているのだそうだ。

「カレンはいつも、ワクワクするものを持ってくるから楽しみでしょうがないのさ。さっそく、市場へ行くよ!魔方陣で移動だから準備はいいかい?」

指を指す方向に魔方陣があった。スーザさん達三人の声がハモる。

「「「いざ!!市場へ!?」」」

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