選択二話 不思議な場所
残念。
やっぱり、選択してもらうには力不足だった。
不安的中!
という事で、選択は私が致しました。ガックシ。(+o+)
僕はグッと我慢して、電話の相手が指定した場所へ向かう為に、スマホに届いた地図の様な落書きの様なモノを見ながら、指定された場所へ向かう。
一体アイツは何者なんだ?
にしても、調子いい奴だった。
ムカつく。
負の感情に支配されながら、僕は周りを見る事なく→が付いているであろう道のりを進んでいく。
小一時間位は進んだだろうか?
地図の様なモノにバッテンがしてある指定された場所がある所の辺りに着いたハズ。
何故分かるかって?
そりゃあ、目の前にドンと置かれた石に『ここ』って書かれていたからだ。
「何だよ?何もねぇじゃん?」
とにかく、待つしかないか。
そう思い石の前に座り込んで、待つ事にした。
・・・
・・・?
・・・おかしい。
・・・騙されたか?
一時間ぐらいは経った気がする。
いや、気のせいか?しかし、スマホの時間は電話後から考えても3時間位経っている。
「って、遅すぎだろう?」
一人で突っ込んでも返事は無い。ただの石のようだ。
という、一人で寂しく頭の中でやり取りをした。
・・・。
・・・やっぱ無理!
「おりゃ!」
僕は、近くにある手ごろな石を手に持ち、思いっ切り石に向かって投げた。
石は『カン!』という音も立てる事無く向こうに消えた。微かに、『ギャン』という音が聞こえた気はする。
「はぁ?」
普通なら、石と石がぶつかったら跳ね返ってくるよね?
どういう事?物理的におかしくない?
僕は『ここ』と書かれた石に恐る恐る手を伸ばす。
表面に触れた場所がフヨンって感じで波打つ。
「げっ!」
波紋は石の表面に起こるが、僕の手は差し込んだ場所は見えない。これ、傍から見たら石に手を突っ込んだ人みたいな感じだよね?
って、思っている場合じゃない。僕は手を引き抜く。
やはり、フヨンって感じで石の表面に波紋が起こる。
「こ、これは?!」
と、一人で呟いてみたが、確か異世界だと言っていたという事を思い出した。
僕は恐る恐る足を突っ込む。やはり、波紋が起こる。
ここに居てもどうしようもない。
とにかく、入って見るか?
と言いつつ、小心者の僕は足を引き抜いた。
ちょっと覗いてみよう。
そう考えて、僕は石に顔を突っ込む。
フヨンという波紋が起こるが、その向こうには、先ほどとは違い神社の様なお寺の様な建物がすぐそこに見える。
「えっ?」
僕は顔を引っ込める。
やっぱり、自然豊かな山々が見えるだけだ。
敢えて石の裏に回ってみる。
うん。何も変わらない。それに石の裏を触っても、只の石の肌触りだ。
僕は正面に戻り、今度はそのまま石に触れて入ってみる。
目の前には、神社らしき建物が見える。手前には鳥居が立っている事から、お寺じゃなく、神社だろう。
僕はそのまま、歩こうと思い、足元を見ずに一歩踏み出した。
プニ。という感触。
「痛い!」
という悲鳴。
僕は恐る恐る自分の足元を見る。
「なぜ?ここに人間が?」
「それより足を退かしてくれますか?」
「あっ、はい!すいません。」
僕は慌てて足を退け、少し下がる。
僕が踏んでしまった人はキレた顔で僕を睨む。
キレた人は兎耳と兎尻尾を持っていた。
「あの、その耳と尻尾は?もしかして、趣味?」
「はぁ~?そんな訳ないですよね?趣味でこんなの付ける人居ますか?それよりも、ちゃんとした謝罪を要求します!」
フンと言いながら、手を腰にあて、胸を張る兎人。
可愛いっちゃ可愛いのだろうが、何か違う。やっぱりここは、巨乳さんじゃないと・・・。
そんな事を考えていたら、兎耳女が片手で胸を隠すような仕草をする。
「ちょっと、今スケベな事考えていたでしょう?」
「いや。」
即座に首を振り、否定した僕を、目を細めて怪しいと目が訴えている顔で兎耳女は見つめる。
「分かるんですよ。まぁ良いです。こんな美女をみたら、男の人ならそういうスケベな事を考えるもんでしょうからね。」
「違う。」
否定しても、うんうんと頷きながら『わかってますよ。』とか言ってる。
ウザい。つうか、美女?いやいや、百歩譲って、綺麗な顔しているとしても、よくて美少女だろ?どうみても子供じゃん。
もしかして、大人にみられたいお年頃?ヤレヤレだぜ。
「で、そんな兎耳美女様が、何でここに倒れてるんだよ?」
「いやぁ、それがここで桜坂茂さんっていう迷子を待ってたら、急に何かが後ろ頭にあたったんですよね。で気がついたら、倒れて気絶してたみたいなんですよ。」
後ろ頭を擦りながら、その兎耳女はそんな事を言ってきた。
「桜坂茂とは僕の事だけど?アンタは?」
急に眼を大きく開いた兎耳女は僕の両肩を掴む。
「待ってましたよ!何処に居たんですか?遅かったじゃないですか?一時間は待ってましたよ!!」
「えっ?そうですか?すいません。」
「もう、これだからお子様はダメですね。」
日本人の僕は、直ぐに謝ってしまった。
ヤレヤレだぜって顔になる兎耳女。お前の方が年下だろ?
「リーちゃん?何処?」
少し離れた所から、そんな声が聞えた。
「マズい。では桜坂茂さん。あちらに行きましょう。」
と兎耳女は僕の背中を押しながら、鳥居を潜り、境内らしき所へと僕を推し進めていく。
そのままの僕は押されて、境内の拝殿の様な建物の前まで来た。
「あら、リーちゃん。」
と拝殿の外回りの縁側廊下を回って一人の女性が来た。
「ようやく、おいでになったのね?」
「はい。連れてきました。」
「これはこれは、桜坂茂さんね?私は、月の神カグヤです。今回はこちらの手違いでごめんなさいね。」
「いえ。大丈夫です。」
おっとりした感じの着物を着た綺麗な女性だ。
その着物から覗く肌は真っ白で雪の様だ。ちなみに胸も大きい。
あれ?電話の時と感じが違う?
「あの、電話の時と感じが違う様な気がするんですが?」
「電話?」
はて?という感じで頭を傾げたカグヤ様。思い当たる節が無い様だ。
うん?もしかして?
「通信はリーちゃんに任せたハズなのだけれども?」
リーちゃんと呼ばれた兎耳女はシュッタっと、走り出そうとする。
僕は咄嗟に兎耳を持った。
「ほほぉ。アンタがさっきの電話の人か?」
「何のことでしょう?」
頭から汗をかき始めた。リーちゃん。目が泳いでいる。
「適当な地図とメールの内容に、不遜な態度で俺に連絡してきたのはリーちゃんだったのか。カグヤと名乗っていた気がするのだが?」
汗がダラダラと噴き出している。
「あら、リーちゃん。そんな事したの?私は丁寧に迎えに行ってね?とお願いしたはずよね?しかも、名前を偽ったの?リーちゃん?」
月の神カグヤ様の顔は笑顔だ。笑顔だが・・・目が笑っていない。
凄く怖い。何故か、僕まで冷や汗が背中を伝う。僕の手に力が無くなった瞬間に、リーちゃんと呼ばれた兎耳女は脱兎のごとく逃げた。
「ふふふ。私から逃げれると思っているのかしら?」
その言葉をカグヤ様が口に出された瞬間に、カグヤ様の前に逆さまの状態で宙に浮いたリーちゃんが現れた。
「ちょっと、失礼しますね?」
そう、カグヤ様が僕に告げて、リーちゃんをその状態のまま奥に連れて行く。
カグヤ様が持っている訳じゃない。空中に浮かんだまま、カグヤ様の後を追う様に行ってしまった。リーちゃんという兎耳女はこちらからは顔が見れないが、たぶん、観念した顔か、恐怖の顔に彩られている事だろう。
少しして『ギャー!』とか『お許しを~!』とか聞えてきた。
さらに、竹刀で肉を叩いた音も絶え間なく響いている。
想像に難くない様子が行われているのだろう。
30分位は経ったであろうか?
何の音も聞こえなくなった。
「ごめんなさいね。桜坂茂さんにはご迷惑ばかりかけて。」
カグヤ様が先ほど去られた方から出てこられた。
「いえ。大丈夫です。」
「あら、お優しいのね?」
「あははは。」
笑って誤魔化した。
「ところで、茂さんを元の世界に戻したいのだけれど、今すぐには無理なの。」
「えっ?」
「本当にごめんなさいね。」
「わかりました。」
今の僕にこの言葉以外を言える勇気は無かった。
「それでね。茂さんに選んで欲しい事があるの。」
「はい?」
「この、場所で次のチャンス迄待つのか?異世界を堪能するのか?私のお使いをしてもらうのか?」
「それは、どういう事でしょう?」
月の神カグヤ様がおっしゃるには、今いるこの場所は精霊界で、地球の日本に送還してもらう為には一定のタイミングが必要らしい。なので、ここで待つという選択が一つ。
二つ目は、この精霊界から繋がっている異世界、つまり地球以外の異世界で時間潰しをするというもの。三つめは、勇者を必要とするところへカグヤ様に送ってもらうというモノ。
う~ん。どうしようっか?
今回の選択
①今いる場所で時が来るのを待つ。
②今いる場所と繋がっている異世界観光をする。
③勇者を必要としている場所へ召喚してもらう。カグヤ様の手伝いをする。
2021年1月15日24:00締め切りです。
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