選択一話 信じられない出来事。
新年 明けまして おめでとうございます。
今年も 宜しく お願い致します。
「いやいや。父さん。何言ってんの?」
今、僕は混乱している。
実の父と思っていた父から、血の繋がりは無い!と言われたからだ。
しかも、母親も実の母ではなく、血の繋がりは無い!そうなのだ。
こんな事を聞いて、普通にしていられるだろうか?
否!
無理である!!
「冗談は、ほどほどなモノにしてくれないと、心臓に悪いんだけど?!」
「すまん。が、冗談ではない。お前が15歳になったら、正直に話そうと思っていたんだ。母さんとも、そう決めていた。」
「嘘だよね?母さん?」
「嘘じゃないのよ。本当の事なの。だからといって、私達は貴方の事を愛していない訳じゃないわ。愛しているからこそ、今、話しているのよ。」
ダメだ。最後の頼みの綱である母さんさえこうだ。
「嘘だ!信じられない!!」
「おい!」
「ちょっと!」
僕は、そう言って家を飛び出した。
父さんと母さんが何か言っていたが、良く聞こえなかった。
今まで普通であったモノも、そして当たり前だったモノが一瞬にして砕け散った。
道なんて覚えてない。
兎に角走った。『ぜえぜえ』言いながら走った。
小一時間位走っただろうか?
流石に疲れてきた。
「もう走れない!」
立ち止まり、手を膝に置いて『はぁはぁはぁ』と荒い息をしていると、少しづつ落ち着いてきた。
心臓の音がバクバクと聞こえる。
何でなんだ?
何で今なんだ?
段々と落ち着いてくると、自分が置かれた状況が分かってきた。
今年、僕は高校受験を控えている。
バスケ部の主将であった僕は、この最後の夏、県大会優勝で有終の美を飾る事が出来た。
春の大会は残念ながら、県大会3位だった。その時に負けた相手に勝ち優勝した。
僕はスポーツが得意だ。運動神経は良い方だと思う。
勉強だって、苦手じゃない。勉強するという行為自体は好きじゃない。試験の為の勉強って感じが嫌だったからで、知識を得る行為自体は好きだ。
戦国時代の織田信長や、三国志の趙雲とかが好きな武将だ。
まぁ、織田信長が好きなのに曹操が嫌いなのは歴史のバイブルの影響が大きいので許して欲しい。似ているけど、物凄く違うと僕は思っているから。
話が脱線したけど、そんな僕に突然降って湧いた話が、実の父母ではないという事件だ。
これを事件と言わずして何が事件か!
「これからどうしたら良いんだろう。」
本当にそう思うと声に出ていた。
「はぁ。」
息が徐々に落ち着いてきて、地べたに座り込む。
あれ?
地べた?コンクリートじゃない?
辺りを見渡すと、建物が全くない。
ただ、土の道が続いているだけの草原の様な場所だ。
「えっ?えぇぇぇぇぇぇ!」
こんな草原をテレビ以外で見たことない。
つうか、そもそも僕の家の近くに草原なんてあるか?
緑があるとして河川敷か公園しかないはず。
一時間かそこら走ったぐらいで、草原なんてあったか?!
「ここは何処だよ?」
辺りを見渡しても知っている風景じゃない。
「どうすんだよ。迷子かよ。ハジィ!」
愕然として、立ちすくんだ。
「あっ!スマホ!」
そう思ってポケットを探ると、スマホがあった。
「良かった。これで・・・嘘!」
電波が入ってない!!
信じられず、インターネットを何度も開こうとするが、開けない。
「マジかよ!くそっ!!」
僕はやけくそ気味に横になった。
今は昼間で太陽が高く昇っている。
その太陽が、僕を笑っている様な、そんな気がした。
僕は今日、全てを失った。
両親から、実の親子じゃないと言い渡されて、スマホの届かない場所に迷子になった。
「父さん・・・母さん。」
段々と悲しくなり、涙が溢れてくる。
僕はどうしたら良いんだろうか?
誰か教えてくれよ!
人間、不思議なモノで泣くと少し落ち着いてくるみたいだ。
それとも僕だけなのかもしれないけど、少なくとも僕は落ち着いた。
「ふぅ。これからどうするって言ったって帰るしかないよな。」
溜息をついて、家に帰る事にした僕は、立上り、服をパンパンと払って来た道を戻ろうと、さっき走って来た道を戻る。
ただ、さっきみたいに走る事は憚れた。
とぼとぼと、携帯片手に歩く。
圏外マークが無くなり電波が届く場所に来れば良いなという思いだけで、ジッと携帯画面と睨めっこしながら、道を歩いた。
小一時間位そうしていただろうか、ここまで休まず歩いて来たけど、電波が入る事も無く、知っている風景になる事も無かった。
「オカシイ。どうなってる?」
30分位歩いたところで、ふと疑問に思った事だったが、今はもう確信に近い。
「絶対変だ!」
そこで、僕の頭の中はある疑惑が過る様になる。
もしかして、ここは日本じゃないのではないだろうか?
少なくとも、現代日本と言われる時代ではない。
そう思い出していた。
では、ここは何処なんだ?
現代日本じゃない所。
もしかして過去にタイムスリップ?
それとも、異世界に迷い込んだ?
いや、それは物語だけの話の筈。
じゃあ、ここは何処なんだ?
頭の中はグルグルと疑問が繰り返される。
そう考え事をしながら歩いて一時間が経った頃だろうか、急にスマホに着信が入る。
着信音はありきたりな初期収録されている音じゃない。
「あれ?僕はこの曲の設定にしてたかな?いや、そもそもダウンロードしてないはずなんだけど?」
今、世界に一人ボッチみたいな感情のせいか、独り言を言ってしまうのは仕方がないと思う。
寂しくなると、独り言を言うのが人間だ!と言う事にしておいて欲しい。
で、曲は【中島〇〇〇さんの地上の〇】。
ちょっと重たいこの曲が流れるなんてあり得ない。
「こわっ!」
と思いつつも、今は藁にもすがりたい気分だったから、ついつい拒否できずに受けてしまう。
だけど、ドキドキは隠せない。
「もしもし。」
『もしもし。桜坂純さんですか?』
声は女性の声だった。
「はい。そうですけど・・・。」
『よかったぁ~。』
「えっと、貴女は?」
『ああ、すいません。電話に慣れてないモノで、私はカグヤと申します。』
「はい?!」
もしかして、変な勧誘だろうか?
つうか、電話に慣れてないって何?
今の時代、中学生の僕ですらスマホ持っているのに、下手したら小学生ですら持っている時代に電話が慣れないって?
疑問が頭を過ったけど、カグヤと名乗る女性は僕の言葉を只の返事と受け止めたらしくて話しだす。
『えぇと、桜坂純さん。貴方は、異世界転移されました。』
「そうなんですか。」
『ええ。そうなんです。』
「ってそうじゃなくて、今何て言いました?!」
ついつい、普通に聞き逃してしまう所だったが、何か変な言葉が聞えた気がしたので聞き返した。
『すいません。貴方は異世界転移しちゃいました。』
「はああああ!」
絶叫しました。
こういうのは小説だけの話じゃないんですか?
そもそも、そんな話、信じられません!!
って言わずにただ、絶叫してました。はい。
『耳が痛いので、大声を出さないでくれませんか?』
「あっはい。すいません。じゃないですよね?どういう事ですか?異世界転移って!」
普通な感じで返されて、イラつきました。はい。
『あはははは。すいません。今、調査中です。』
「調査中?!」
調査中って何?アンタ誰?
小説とかでよくあるのが、女神とか天使とかそんな感じだよね?
「って、アンタは何者?」
『あははは。まぁ迷子みたいになった桜坂仁さんの案内人と言いますか、何と言いますか。そこは察してください。』
すげぇ、図々しい。
何この人?超怖いんですけど?踏む込んだらダメなヤツ?
『まぁ、今はそんな事よりも、今どうするか?と言う方が大切ですよね?うん。大切です。』
ほら、また一人で勝手に話を完了してる。
どうしよう。
『とにかく、貴方との連絡が出来る手段はその電話機しかありません。なので大切にして下さい。』
「はい。で、どうしたら良いんですか?」
にわかに信じ難い相手だと思うけど、冷静に考えて今の僕にはこの状況を理解できない。
とにかく、聞いてみるしかないだろう。そう思った。
『そうですね。そこより先に、もう少し我々が干渉出来る場所があります。桜坂純さんの元居た世界ではパワースポットとか言う場所です。そこに先ずは向かってください。今からその地図を貴方の持つ電話機に送ります。スマホでしたっけ?スマホなら見れると思いますので、そこに向かってください。その場所に着きましたら、また私の方からアプローチしますので、兎に角、その場所に向かってください。』
「は・・・。」
切られた。一方的に喋られて切られた。
沸々と湧き上がる感情があるんだけど・・・今は仕方が無い。そう思う事にした。
但し、送られてきた地図はメールという形できたのだが、その中の文章や、地図を再度見て感情をまた揺さぶられた。
「我慢!」
己に言い聞かせるつもりで大きな声を上げた僕だった。
1話目の選択
A:電話の相手の言う通り向かう。
B:電話の相手の言う通り向かうが、少し離れた場所で待機。
C:電話の相手の言う通りにはしない。
貴方は、貴女は、どれを選択し、主人公のどの道に進めますか?
結果は選択次第。
締切日は2021年1月5日24:00迄とさせて頂きます。
感想欄の投稿宜しくお願いします。