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悪魔株式会社  作者: 小判鮫
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過去のお話

ボスはうさぎよりも寂しがり屋だ。未だに信じがたいが、紛れもない事実だ。

なぜなら、私が数日間、家を空けるとなるとあからさまに機嫌が悪くなるし、喧嘩して少し家出したときにはアルコール、薬物、自傷行為などの依存症を引き起こしていたから、放っておくと本当に死にそうで怖い。

そして、このことを知っているのは家族の中で私だけだ。

「私をよく知ると君は幻滅するだろう。」

昔、ボスにそう言われたことがある。すぐさま否定したが

「ふふっ、そんなに言ってくれるのは嬉しいが、実際はどうだろうね。」

とボスは私に期待をしなかった。

私がボスが泣いているところを初めて見たのは家族の一人が仕事が嫌になってやめたとき。

仕事をやめるとそれまでの記憶は全て消され、人間界に魂が送られる。今までの思い出が全て消されるのだ。

「サタァ、お前は私がやっていることは間違っていると思うのか?」

「え」

「私には心がないと思うのか?私は存在してはいけないのか?」

と涙目になりながら言うと机に突っ伏した。私は自分の目を疑った。信じられなかった。あのボスが泣いていることが信じられなかった。だけど、ボスのためになにかしてあげたいと思った。ボスに自分の気持ちを伝えたいと思った。

「ボス、私はあなたのことが大好きなんですよ。あなたがいないなんて、私には考えられないです。」

と優しく背中をさすってあげると、声を漏らして泣いている。私はボスも完璧ではないことを知るとなんだか安心した。きっとやめるときに散々酷いことを言われたのだろう。ボスからたくさんの愛情をもらっておいて、恩知らずな奴め。しばらくすると、歪んでいる顔をあげて、こぼれ落ちてくる涙を何回も手で拭きながら

「…私は間違っているのだろうか?」

と自信のないか細い声で聞かれた。

「んー、良いか悪いかは分かりませんが、あなたが正しいと思うことをやったらいいと思いますよ。自分に嘘はつかないでください。」

と言うとボスは私を抱きしめてまた涙で顔を濡らした。

「もう、泣き止んでくださいよ。」

と言ってはいたものの私はボスに頼られてる気がしてすごく嬉しかった。しばらくして、ボスは泣き止むと、私の顔を見るなり怯えた表情をした。そして、部屋の隅に走っていき、頭を抱えてしゃがみ込んだ。

「どうかしたんですか、ボス。」

「もう終わりだ。駄目だ。死にたい。殺して欲しい。もう嫌だ。嫌だ、嫌だ。死にたい。殺してくれ。」

近づいてみるとぶつぶつ呟いているのがわかった。

「どうしたんですか?」

ボスの肩に手を置いて近くにしゃがむと

「君はこんな私は嫌いだろう。こんな弱い私では…。」

と蛇に睨まれた蛙のようにこちらを見ては弱々しい面持ちで固まっている。

「ボスは私のことをよく知らないんですね。前に言ったじゃないですか。覚えてないんですか?どんなあなただろうと大好きだって。」

「…こんな私でも本当にいいのか?」

「はい、もちろんです。」

「でも…」

「はぁ、くどいですね……これで証明できましたか?俺は嫌いな人にキスなんかしませんよ。」

「サタァ。あぁ、君は本当に…」

「なんですか、ボス。」

「君は本当に私を困らせるのが上手なようだ。」

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