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悪魔株式会社  作者: 小判鮫
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渋谷へ行こう②

すごく待たせてしまって申し訳ない。急がないと。

「すいません、お待たせしま…?」

なんかルゼさんが布団のように干されてる。

「…大丈夫ですか?」

「おっ、準備できたか。じゃあ、行くぞ。」

「あー、はい。…あの、さっきまでそこで何やってたんですか?」

「ん?あぁ、頭に血を送ってただけだ、気にするな。ほら、入れ。」

「え、ここにですか?」

「そうだ、出入り口だからな。」

ノートパソコンに手を当ててみると、水を触るみたいに手が入り込んでいった。

「うわっ!!」

驚きで手を引っ込めてしまった。手にはなんともない不思議な感覚だけが残る。

「ふっ、大丈夫だよ、ほら。」

と手を取られて、ノートパソコンの中に入っていく。そして、飛び出たのはスクランブル交差点。

「な?大丈夫だっただろ?」

「…はい。でも僕達、周りの人から見たらどうなってんですかね?いきなり飛び出てきた人ってすごい怖いと思うんですけど。」

「んー、どうだろうな。でも、前にテレビから出たときも驚かれなかったから、違和感補正とかがあるんだろうよ。」

「ええ、テレビから出たんですか!?貞子みたい…。」

「まぁ、そのときばかりは俺の方が怖かったよ。出ていったら、いきなり指さされて笑われたからな。」

「確かに怖いですね、それ。」

「本当、今の時代は便利になったよ。出口がたくさんある。」

「あの、出口っていうのは?」

「んー、例えば、携帯とかノートパソコンとか。あと、鏡とか水もそうだな。要するに光を反射するもの全てが出入り口になる。」

「じゃあ、僕の部屋に置いてある鏡も出入り口ですか?」

「うん、そうだな。でも、鏡は入口としてはおすすめしない。思い通りにいかないことが多い。その点、ノートパソコンはマップにピン刺せば大体上手くいく。」

「そうなんですね。そういえば、これからどこ行くんですか?」

「腹減ったから、腹ごしらえ。」

交差点渡り終わった後、そのまま近くのビルに入ってカフェに着いた。席に案内されてメニューを見る。

「ルゼさん、ここ、ほとんどスイーツしかないですよ!」

「ん?それがどうした?」

「え、えーと、腹ごしらえならもっとお腹にたまるものの方が…。」

「今日は甘いものをたくさん食べたい気分だからいいんだよ。お前が他のを食べたいなら、この後もう一軒寄るか?」

「いえ、それは大丈夫です。」

「そうか。」

定員さんを呼ぶと、ルゼさんはパフェを五個とその他にパンケーキやプリンアラモードなどの甘そうな食べ物をたくさん頼んだ。僕はサンドイッチを一つ頼んだ。定員さんがなんだか苦笑いしてる気がする。

「そんなに食べれるんですか?」

「あ?こんなん余裕だよ。」

えええ、なんか本当に人は見かけによらないな。

テーブルいっぱいにスイーツが運ばれてくる。そして、次々と胃の中に消えていく。ルゼさんの顔がすごく幸せそう。

「ひとくち食べるか?」

「あっ、いえ、んあぁ、やっぱ貰います。」

「はい。」

「ほぉ、すごく美味しいです!甘いし、冷たくて。」

と言うと少し微笑んで、またパフェを食べ始めた。

あっという間にテーブルいっぱいのスイーツがなくなった。きっと、いや、絶対にこの人の胃袋はブラックホールだ。そして、会計で二万円もするのも驚きだ。

「すごく美味しかったですね。」

なんて言いながらビルから出ると、信号無視した車がスクランブル交差点を猛スピードで突っ切った。たくさんの人が撥ねられ、車が赤く染まる。Uターンしてもういちど、交差点を突っ切ると車は建物に突っ込んで停車した。

目の前で起こったことがとても非道でおぞましいことだと感じた。だが、驚きと恐怖で言葉も出なかった。というか、なんて言えばいいかわからなかった。足も動かなかった。交差点でたくさんの人が倒れている。異様な光景だ。

「凄かったですね。大丈夫ですかね、あの人達。」

「んー、あれは悪くて重症、良くて即死だな。」

「あぁ、そうですね。」

こうやって普通に会話してて良いのか。良くない気がするが、その他に僕にできることは何もない。

周りを見渡すと、泣きわめく人、どこかに電話する人、倒れてる人の応急手当をする人、動画を撮る人、ただ見ているだけの人。実に様々だった。

「これを見て、どう思って、どう考えてる?」

「んー、そうですね。すごい悲惨なことだとは思います。あと、誰かの死をまじかで見たことなかったんで結構驚いてますね。意外と呆気ないな、なんて思ったり…。」

「ふーん、そうか。」

なんかルゼさんの顔が笑ってるように見えた。

「あー、これからどこ行くかぁ。キューにお土産買っていかないとだからなぁ。」

「へー、買うんですね、お土産。」

「まぁ、約束したからな。」

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