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視野の重なり 9

「まあ、結果は何とも言えない……と言うか、うちの会社はワンマンな所があるから。まあ、たぶんもう少ししたら連絡しますから、今日はこれくらいで勘弁してやってください」

 ようやくのどに支えていたことを吐き出してさっぱりしたとでもいうように、眼鏡は無愛想に背中を向けると事務所の中へ消えて行った。

 茶番の後、あれほど荒んで見えた地面の一欠片すら思わずひれ伏してみたくなるほど愛しく、懐かしく見えるような気がする。やけに軽く感じる腹を気にしながら、薄汚い門柱を通り抜ければ、先ほど代わりののないはずの産業道路が目の前に飛び込んできた。割れたアスファルトからは、枯れかけの雑草が伸び放題に伸びて、ただひたすら帰って眠りたいという衝動によって動かされている足を時に押しとどめようとする。だが俺は無理に同じベースで歩道もない、本道を歩き続けた。鉄柵や金網や、放置された鉄骨や積み上げられた土管。これらの時代の忘れ物の間を、薄汚い事務所の群が塗りつぶすのに懸命な埋め立て地。日の光りが煤で濁った雲の間からこぼれ落ちてくる。きっと人から見れば眼にゴミでも入ったかのようにもとれるように、俺は何度となく乾燥した瞼に指を擦り付けた。その間も俺の足は止まることを知らない。顔を上げて、急に視界が開けたと思えば運河。そしてその脇には代わり映えのしないだだっ広い道が飽きることもなく続いている。それを横切ると、貨物の引込み線の脇にある歩道のようなものの上へ辿り着いた。そこには三台ほどの営業車両が忘れられたように止められ、その脇では背広姿の営業マンがなにやら談笑に花を咲かせていた。奴らは俺の姿を見かけると一様に顔を顰めて、そのままそれぞれに小脇に持った書類ケースや、携帯電話を取り上げて軽くお互いに挨拶もそこそこに、車に飛び乗って走り去って行った。俺とともに彼らに置いてけぼりを喰らった倉庫の群は巨大に過ぎた。果てしなく続くかと思えた引込み線は、本線へ合流するために俺を見捨てて高架の上へと消えて行った。俺は道端に置き去りにされた苔の生えたライトバンのように途方に暮れつつも、そのまま高架沿いの道を進むことを選んだ。地響き、そして警笛。一瞬視界が曇り、そして晴れて、その先にはまたコンテナーターミナルの大きすぎる影。俺の脇では背の高さを優に超えるようなアワダチソウが風にそよいでいる。小人になっていた俺は急ぎ足でかすれきった横断歩道の上を通り抜けた。視界の果てには電機会社の研究棟が俺の視界を遮るように突っ立っている。俺の足ははじめからわかっていたとでもいうようにその隣の未整備地区、轍の目立つ草むらの中を突っ切って行く。地面に白いものが目立つのは、貝殻だろうかそれとも腐った紙切れだろうか。

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