視野の重なり 7
「じゃあ、買い物の続き、よろしく頼むよ」
眼鏡の呟きを確かめるようにして「ヨウコちゃん」は消えて行った。
「まず最初に……」
作業服の法が口を滑らすとは俺も思っていなかった。奴も自分がそういったことが間違いであったとでもいうように顔を顰めながら口をつぐんだ。眼鏡の方は相変わらず書類にポケットから取り出した蛍光ペンでマークをつけている。それが一種の拒否の仕草とでも受け取ったのだろう、作業服は眼鏡と俺の顔の上に視線を走らせているばかりで、今にも憤死しそうな表情を浮かべて黙り込んだ。
「どうして、うちの会社を運んだんですか……」
眼鏡の下の薄べったい漏れた言葉は、硬く俺の耳に響いた。つられて俺の口の端に、ヒキツレのようなものが浮かんできた。いつものことだ。作業服はそれを愛想笑いとでもとったのか、草食動物のような頑丈な顎のあたりを歪め、笑いかけているような表情を作る。
「とりあえず職種を優先して会社を選びました。皆さんもご存知の通り、経理関係の求人となると今の時期はちょっと……、そして……」
「まあ、そんなものでしょうね。別に無理して作らんでいいですよ、アタシも同じような経験ぐらいありますから。まあ、職安の求人票なんか職種と待遇と連絡窓口くらいしか書いてないですから……、まあこっちとしてもねえ……、まあ履歴書見せてもらいましたけど、前の会社はずっと経理の方ですか?」
「いいえ、初めの半年くらいは営業の方だったですけど、どうも性があわないと言うか……。まあ早い話が外された訳です。それからはずっと経理の方で……、まあコンピューターをいじるのは慣れてた……」




