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視野の重なり 6

 作業服が机の脚に膝でもぶつけたのか、大仰な金属音が部屋の中に響いた。眼鏡が少しばかり口元を緩める。作業服は咳払いをして、そいつが俺に感染するのを前もって防いだ。そんな奴の心配とは何の関係もないかのような能天気なスリッパの音がドアの向こうに響き、「ヨウコちゃん」がいかにも申し訳なさそうに入って来ると書類を遠慮しながら机の端に置いた。

「ああ、ありがとう。それじゃあヨシオカさん。履歴書の方、お願いできますか……」

 ポケットから申し訳程度の封筒に入った紙切れを引きずり出す。六つの無神経な視線が罪人の所作を観察するような調子で俺の手の動きを見つめているのがわかる。最初に眼鏡が眼を反らした。そのまま立ち上がって後ろの戸棚の灰皿を書類の上に並べる。それにあわせて「ヨウコちゃん」は俺の手から履歴書を奪い取ると出口へ向かった。ようやく作業服も気がついたとでもいうようにひどく歪んだ灰皿を取り出して折れかけた煙草に火を灯した。

「それにしても、大変でしょ?この不景気じゃあ。うちらももろにこいつの影響を受ける所だから、特にそうなんだけど、正直な話し、結構きついですわ。それでついついみんな辞めてって、まあ、前にいた奴は少し違いましたけど」

 二人は意味ありげに顔を見合わせて笑う。俺もつられて笑顔らしいものを浮かべてみる。そしてまた、沈黙。

「コピーしてきました」

 黄色い声と同時に長机の上に二枚のコピー用紙が広げられた。作業服と眼鏡はそれを手に取ると黙って読み始める。俺が何となく視線を二人の中年男から「ヨウコちゃん」の方に向けて見てみれば、彼女は路上の吐瀉物でも見たといった感じ俺から眼を背けた。

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