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視野の重なり 4

 さすがにこの男は「面接」には慣れているらしい、別に表情を変わる訳でもなく、どうにか格好だけはつけようと長机を前に焦っている作業服を後目に、椅子を軽くそろえただけで座り込んだ。その口元に「笑い」が浮かぶ。俺もまたそれにあわせて義務的な笑みを頬に作り上げる。

「ゲンさん!お茶はヨウコちゃんに頼んだの?」 

 作業服の顔に曖昧な困惑の表情が浮かぶ。作業服の持つ机の脚が、ひ弱に見える壁にぶつかって悲鳴を上げた。その様子を見ても眼鏡は眉を顰めるが決して立ち上がって助けようとはしない。

「あの……、お茶なんですけど……、何処に置きましょうか?」

 開けっ放しのドアから音もたてずにのっそりと「ヨウコちゃん」が現れた。凍り付いたように椅子を両手に抱えながら動きを止めた作業服の眉間に、同情とも諦めともつかない悲しげな皺が刻まれては消える。

「あんなあ、今、こうやって用意しているんだってのに……、とりあえずこの棚にでも置いてだ……、あっ、なんだ。二つしか入れてこなかったんかよ?」

「だって……。いいえ、すいません。気が付かなかったもので」

「気が付かなかったって、新人じゃあるまいし、俺のはどうでも良いけど部長のくらい入れてこなきゃダメだろ?」

「申し訳ありません!」

 「ヨウコちゃん」の大きすぎる瞳が凍り付いた。働くのを止めた作業服の姿を頬杖で見守っている眼鏡の痘痕だらけの顔がその中に映っているだろう。眼鏡は気にする風でもなくつけっぱなしのテレビの画面を表情も変えずに見つめている。俺は目の前に置かれた緑茶を飲んだ。熱湯で入れたうえに葉を入れすぎたのか、苦味とエグミが舌の両脇に纏わり付く。

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