視野の重なり 16
「追加を頼みたいんだけどいいかな?」
ぐっとのめるように項垂れていたせいで、両脇にはっきりと分けられた髪の間から覗く額が青白く光って見える。右手を軽く挙げた俺のせいで茶色い髪のウエートレスは立ち往生したままだ。「ヨウコちゃん」が口を開こうとするとメニューを突き出してくる。
「なんか……こう……」
「今度は、アイス……」
同時にこぼれだした言葉に、残されたのは茶色い髪のウエートレスの仏頂面。俺はコップを啜り、彼女は俯いて黙り込む。俺が間を嫌ってコップの中の融けかけた水を口に含めば、彼女は何を思ったのか目の前の雑誌を横にどかしてゆっくりと身を乗り出してきた。
「それは少し……」
「そう言えばさっきは花屋の前で群れていたの……あれ友達?」
アイスコーヒーが運ばれてきた。俺はいつものようにストローを包んでいる紙を粉々に引きちぎって、おもむろにコップの中に突き立てた。その作業が進展する間も、決して「ヨウコちゃん」は俺の問いに答えようとはしなかった。俺は汗が噴いているコップを握りしめると、薄すぎるコーヒーを口の中に啜り込んだ。彼女は何も切り出せないまま諦めたような調子でパフェをつついている。眼は座ったままだが、彼女は微笑もうとしているように見えた。不自然で悲しげで、刺々しくて、まるで先ほどの中年コンビが繰り広げた滑稽な面接ごっこの裏返しを演じているようだ。




