視野の重なり 14
「これで外が晴れていればいいんだけど……。私、よくこんな買い物なんかに出掛けたとき、よく寄るんですよ、ここに、ここら辺ってもうほとんど新しい住宅街だから喫茶店とか寄り道するとこほとんどないでしょ?だからどうしてもこんな、駅の近くの狭い喫茶店なんかについ寄ってちゃって……」
「しかもここなら駅前の立体駐車場に車を置いておけば、事務所にはばれないしね」
「ヨウコちゃん」の手が雑誌をゆっくりとこちらに近づけるのを見るとつい無駄な合いの手を入れたくなった。彼女は慌てたようにグラスを手に取り、一息に水を飲み干した。虫歯でもあるのか、氷に軽く冷やされただけの水の冷たさに顔を顰めながら俺が黙ってカップの中をかき混ぜている姿を見つめている。俺は少しだけ。ほんの少しだけ自分のいったことに後悔しながら、無意識に置き去りにされた宗教雑誌の方に眼をやったいた。彼女はグラスを置くと再びそれを取り上げた。拝むようにそれを胴の前で広げながら俺の方を覗き込む。視線に押し切られるように俺はカウンターの方をみればいつの間にか髭の姿がそこから消え、茶色い髪のウエートレスがおっかなびっくりコーヒーをカップに注いでいる姿があるばかりだ。「ヨウコちゃん」はようやくそんな俺の習慣を飲み込んだとでもいうように、引き戻されてきた俺に向かって落ち着いた調子で語り始めた。
「これ……、お読みになりました?ヨシオカさて意外と本とかお読みになるような感じですから……」
「まあ、一応。ざっとですけど……眼は通してみました」




