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視野の重なり 12
ドアが開いた。青い上っ張りを着込んだ女が一人、店内を覗き込むようにして入ってきた。彼女は事務所で出会ったあの時とまるで見違えたように滑らかな足取りでこちらへと向かってくる。俺は別に無視する理由を探す訳でもなく、目の前の雑誌の山を空いた椅子の上に片付けると彼女がボックス席に腰掛けるのを待った。
「奇遇ですね、こんな所にいらっしゃるなんて、面接の方、どうでしたか……と言っても社長がいないんだから……また今度っていわれたんでしょうけど」
雑誌を閉じて俺の顔を捉えているその大きめの瞳が暑苦しい。肩の辺りで切り揃えられた髪を掻き上げながら俺の手にしている雑誌に眼を移しながら、慣れた手つきでテーブルの端の砂糖とナプキンの下で下敷きの振りをしているメニューを取り出していた。
「雨、結構降ってきてるみたいですね。これじゃあ、現場は結構大変なんじゃないかしら……と言っても別にアタシに何ができるという訳でもないし」




