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第一話:扉の向こう

 そろそろ自習しにでも学校いくかと思いながら大学二年生の横山詩は携帯をみる。携帯は十時少し前を指していた。全休日と呼ばれる自主的に作った休みの日は九時過ぎに起きてダラダラするのが決まり。でも今日は勉強しようと思い重いからだを起こす。大学生にもなってメイクは週末やお出かけする時だけ。理由は簡単、めんどくさいのとメイク代のお金を他に使いたいから。そう思いながら思いまぶたをこすりつつもパッと準備をし、扉を開ける。扉重い…寝不足だからかな…と力を一段とこめる。

「っしゃ! …って、え?」小学生か幼稚園児ぐらいの少年がそこに座って詩を見ていた。

「君どうしたの?」ここ単身者マンションだぞ。てか平日だろ?サボりか?そう思考をめぐらすが…答えない。

「迷子?学校は?」

「迷子じゃない。学校はいかない。」詩の頭には家出の二文字がかすめる。

「おうちはどこ?」

「言えない。」

「名前は?」

「言えない。」なんだこいつとイライラしつつもほっておけず詩は目線を合わせながら再度聞く。

「ここまでどうやって来たの?」

「車。」

「だれと?」

「お母さん。」これって…もしや。家出以外のあることが浮かんだ。本当に家出じゃなくて…その答えが頭を掠めた瞬間、すぐにやることが決まった。運よく全休日だ。これは連れてくしかないな。そう思いまた少年に声をかける。

「ねぇ、おうち帰れるようにお姉さん手伝うから一緒に来てくれる?」

「やだ、帰れない」多少のイラつきは押し込む。今日はいい天気だ。したいことだってあるっつーの。と声に出せない気持ちを抑え込み笑顔のまま

「ならお腹すいたでしょ?ご飯食べに行こうか!」と声をかける

「…うん」とりあえず警察署近くの安い定食屋に連れてく。相当お腹空いてたみたいでむしゃぼりつくのを見つつ考察が止まらない詩。名前も家も言えない…か。しかも親に置き去りにされたってことだろ?育児放棄じゃないか?家には帰りたくないと言われてもな。そう思い水を一杯飲む。小さい子が一晩中外で一人でいたんだな。怖かっただろうな。なんだか、引き渡すのは可哀想だとこれから自分がすることにすでに罪悪感が生まれている。


 無事に逃げられることもなく食べ終わり、罪悪感と共に警察署まで連れてく。

「いやだっ!いやだって!」

  途中から手をつないでいたが、警察署が見えるとどうしても逃げようとする少年。

「暴れないの!」

  子供のくせに力強いっ…!って、アザ?詩の目線は少年のTシャツからのぞくあざの方にもっていかれる。

「どうしたんですか?」あまりにも少年が暴れるために警察官が話しかける。

「すいません、家の前で拾いました」

「こちらでお話を」一瞬眉間にしわをよらせつつも署内に案内する。

「はい」と初めての警察署内に悪いことをしていないのに嫌な汗がでる。事情を説明すると児相への連絡がいったらしい。相変わらず少年は何にも言わないみたいだけど、諦めたのか大人しくしている。

 「ありがとうございました。」

 「あの…あの子どうなるんですか?」

 「とりあえず病院で検査した後に児童養護施設に行くことになりますね。」

 「あの…」

「はい?」

 「この子の親が見つかるまで預からせていただけませんか?」

 理由なんて、特にない。ただ独りなんだと思うと少しほっておけなかった。それだけ。と、詩は自分の行動に、思わず苦笑いしてしまっていた。でも、覚悟はしている。ちっぽけかもしれないけど、昔見た誰かの目と同じ目をした目の前の少年を手放せなくなっただけなのかもしれない。誰と似てたかも思い出せないのに。


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