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設定解説「魔動機兵」

 設定解説「魔動機兵」



◎魔動機兵概略

 「魔動機兵」とは、魔力増幅機構「プリズマドライブ」を用いた人型兵器を指す。

 プリズマドライブは、魔素含有率の極めて高い半透明鉱物「プリズマ鉱石」を研磨・精錬することで精製される透明なクリスタル状の「プリズマ結晶」に複数の魔術式を用いて、入力された魔力を増幅して出力する装置である。

 増幅された魔力は、魔素を多く含む金属「ミスリル金属」を使用した魔術回路で魔動機兵の各部に送られ、稼動部を動かすことで魔動機兵は動作する。

 従って、理論上「燃料」のような概念は存在せず、搭乗者の魔力が続く限り動かすことができる。

 ただし、それは魔動機兵が消耗しない、ということではない。

 プリズマ結晶は魔力増幅の際に含有する魔素を徐々に消費し、表面や内部の透明度が損なわれていく「濁り」という現象を起こす。濁り始めたプリズマ結晶で魔力増幅をし続けると、増幅効率は低下していき、最終的に安定して増幅できないほど魔素が減った瞬間に、亀裂や破損など修復不可能な物理的損傷を生じる。

 物理的な損傷が発生する前であれば、魔素を過剰に含ませた特殊液体「高濃度エーテル」内にプリズマ結晶を入れておくことで、プリズマ結晶は消費した魔素を補充し、濁りを解消することができる。

 高濃度エーテルは人工的に魔素を飽和状態以上にまで含ませた液体であるため、ただ存在するだけで空気中にも魔素を放出し、その濃度を低下させてしまう。そのため、厳重に密閉された容器や装置で保管される。


 現在各国で配備されている魔動機兵は規格・骨格共に共通の部分が多い。

 これを、エクター・ニムエは作中で「心臓と骨格が同じ」と喩えている。

 プリズマドライブの性能はプリズマ結晶の純度と装置内に施される魔術式の精度で上下するものの、現行の技術では規格から外れるほどの増幅率は出ない。現在普及した魔動機兵のプリズマドライブに用いられているプリズマ結晶には入力できる魔力量に限界値があり、当然ながら出力できる魔力量にも限界値がある。魔術回路が伝達できる魔力量にも限界値がある。もっとも、入力限界値に達する魔力適性を持つ人間はまずいない数値だったため、そこは問題視されていない。

 増幅するためのプリズマドライブの魔術式も、機体各部を可動させるための魔術式も、そこまで魔力を運ぶ魔術回路の魔術式も、複雑かつ緻密な計算によって成り立っているため、どれか一部を大きく変更すると全体を計算し直さなければならなくなってしまうため、現在出回っている規格外の機体を造り難いという事情もある。例えば、出力増加を狙ってプリズマ結晶の大きさをほんの僅かに変えただけでプリズマドライブ内の魔術式は計算し直さなければならず、既に規格として定められた大きさであらゆる部分が設計されている故に装置そのものの大きさも変えなければならず、影響は多岐に渡っていく。現在普及しているプリズマドライブの大きさや規格が生産性、整備性、運用性、出力性能において最良のバランスであった。

 一定以上の魔力入力で、一定以上の魔力出力を安定的に得る、というのがプリズマドライブの設計思想であり、今の規格形式を逸脱することは、著しく生産性、整備性を低下させることになってしまう。

 機体内部に走る魔術回路の材質や魔術式精度でも魔力伝導率が上下し、プリズマ結晶の品質と合わせて機体の基礎性能に影響している。

 従って、高性能な機体の開発、品質の安定した量産機の生産には良質なプリズマ鉱石やミスリル素材が必要となったため、近年になってそれらの資源が豊富かつ良質な土地が多くあることが判明したアルフレイン王国は他国から狙われることになってしまった。


 機体の大きさはフレームが五メートルほどであるため、外装によって上下するが最大でも六メートルには届かない。操縦席のある胴体が太く長い、機体を支える足も太く短めで、それに合わせて手も太く短め、と全体的に人間を縦に少し潰したようなバランスになっている。

 搭乗者は操縦席にある「ヒルト」と呼ばれる魔力を入力するためのグリップ状の装置を握り、手から魔力を送り込む。ヒルトから入力された魔力は魔術回路を通じてプリズマドライブに送られて増幅され、機体各部へと流れる。

 基本的に搭乗者は入力する魔力を制御することで魔動機兵を操る。

 ヒルトを握り、魔力を送り込むと手のひらに圧力感、圧迫感が返ってくる。この抵抗感の大小が魔動機兵を操縦する際に必要な魔力適性の閾値となっており、それを受けた上で押し返すように魔力を送ることができれば魔動機兵を動かすことができる。


 また、魔動機兵が人型なのは、魔力の制御イメージが自分の体の延長線上のようにできるため、操縦が容易であったから。

 とはいえ、自由自在に動かせる者は稀で、基本的には機体各部に施されている魔術回路に流れる魔力のオンオフを自動的に判断、処理して、流れた魔力量から関節を曲げる量を決定するなどしている。そのため、魔動機兵の動作は本来的には画一的なものであり、それを逸脱するような細かい動きは魔力量ではなく、魔術回路に細かい動作を指示を与える形になるため魔力制御能力が重要となる。



◎魔動機兵の武装

 魔動機兵が用いる武装には大きく分けて三つのカテゴリがあり、射撃武装、近接武装、盾、という分類になっている。

 射撃武装は主に銃火器の形をしており、実体弾を発射しているが、内部的には魔術を用いて反発力や斥力を発生させ弾丸を撃ち出している。銃身内部に魔術式が施されており、弾速や精度の向上や安定化がなされており、装甲貫通力や破壊力が高められている。

 グリップ部に魔動機兵の手のひらと接続するためのコネクタがあり、魔術機構を動作させるための魔力は魔動機兵側から供給される。このコネクタは共通規格になっており、現行の魔動機兵であれば武装を使い回せるようになっている。

 近接武装は剣や斧といった人が用いる近接武器の形状をしているが、単純に硬度や剛性を高めた金属の塊となっており、刃物であっても重量や硬度で叩き割る、押し潰す、圧し折る、といったニュアンスでダメージを与えて断ち切るものが多い。

 盾は攻撃を防ぐための装備で、通常の装甲よりも硬度や剛性を高めた金属素材を積層したものとなっている。盾の装甲をそのまま魔動機兵の装甲に用いると重量とコストがオーバーするため、大きさを絞って装備させ、関節部や操縦席のある胴体など、損傷時に致命的となる部位をカバーするのが主な役割となっている。

 分類的には小盾、中盾、大盾の三つが存在し、装甲面の大きさ、重量、防御性能が異なる。



◎以下は本編に登場した魔動機兵を紹介。

 評価項目はS、A、B、C、Dの五段階に+-を加えた十五段階評価。

(S+、S、S-、A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、の順)

 「操縦難度」は扱い易さ。操縦に必要な魔力適性が低いほど評価が高い。

 「出力性能」は攻撃性能。評価が高いほど高威力、重量のある武装を使用できる。

 「機動性能」は移動性能。評価が高いほど移動力、機動力に優れる。

 「装甲性能」は防御性能。評価が高いほど重装甲。機動性能とはトレードオフの場合が多い。

 現存する魔動機兵全機種の平均値をBとした場合の評価である。


~アルフレイン王国~

《アルフ・アル》

 操縦難度:S

 出力性能:C+

 機動性能:C+

 装甲性能:C+


 アルフレイン王国が開発した第一世代型の魔動機兵。

 ベクティアで開発され普及し始めた第一世代初期型魔動機兵とほぼ同等の性能を持ち、アルフレイン王国の魔動機兵の基礎とも言える機体。現在は訓練用、作業用などに用いられることが多く、前線配備数は減少傾向にある。

 とはいえ、製造や整備コストが安いのもあり、苦境に立たされているアルフレイン王国の魔動機兵戦力の三割近くはまだ《アルフ・アル》が占めている。


《アルフ・ベル》

 操縦難度:A

 出力性能:B+

 機動性能:B+

 装甲性能:B+


 現在のアルフレイン王国の主力で第二世代型魔動機兵の初期型に当たる。

 《アルフ・アル》の総合性能を全体的に底上げした非常にバランスの良い機体となっていて、魔動機兵の傑作機とも言われる。要求魔力適性値に対する性能バランスに秀でた汎用性の高い機体。

 アルフレイン王国の魔動機兵戦力のおよそ五割を占める。現地改修されたカスタム機も多い。


《アルフ・セル》

 操縦難度:C+

 出力性能:A

 機動性能:A

 装甲性能:A-


 アルフレイン王国の第二世代型魔動機兵。主に指揮官や精鋭など、エース向けに配備されている高性能機。

 《アルフ・ベル》をベースに設計されており、要求魔力適性が高くなった代わりに全体的に性能を向上させている。現行の量産型魔動機兵としては高水準でまとまった機体となっている。


《アルフ・セル/レオス仕様》

 操縦難度:C

 出力性能:A+

 機動性能:A+

 装甲性能:A-


 通称「守護獅子」

 アーク騎士団第十二部隊の騎士隊長、レオス・ウォル・ハイエール上級正騎士が登場するカスタム機。

 《アルフ・セル》をバランス良くチューンした機体で、総合性能は《アルフ・カイン》に迫るバランスになっている。

 獅子隊と呼ばれるのはこの機体に獅子の横顔を模したエンブレムが描かれているため。


《アルフ・セル/アルザード仕様》

 操縦難度:D-以下

 出力性能:S+

 機動性能:S

 装甲性能:A+


 通称「バーサーカー」

 魔力適性が高過ぎて通常の魔動機兵を過剰出力で自壊させてしまうアルザードのため、極限まで各部の魔力伝導率を落とし、装甲の増加や重量級武装の搭載など操縦に必要な魔力量を増加させる措置を施した機体。機体そのものに外見的な特徴はなく、《アルフ・セル》と同一。

 アルザード以外にはまともに動かせないほど魔力伝導率の低い機体となってしまっているが、それでも彼が本気で魔力を込めると規格外の性能が発揮されるものの、耐久値以上の魔力が流れるため各部が自壊、十分程度でプリズマ結晶も破裂する。戦闘後、全損とも言える状況で帰還することが多いため整備士、補給を手配する士官泣かせの機体。

 また、出力性能、機動性能はアルザードが登場した時に発揮される性能であり、実際の調整で設定されている値ではD-相当。規格外の魔力適性により、常人では装甲以外D-相当の性能でしか動かせないものを出力性能S+、機動性能Sまで引き上げて動かしている。普段は壊さぬように入力する魔力量を抑えているため、出力、機動性共にA~A+相当の《アルフ・セル》本来の標準的なパフォーマンスで稼働させている。

 そのため、発揮される性能が安定しておらず、対峙する側からは急に性能含めて豹変したように見えるのも「バーサーカー」と呼ばれ恐れられる一因になっている。

 ちなみに、コストの安い《アルフ・アル》が調整して回されない理由はプリズマドライブや魔術回路の品質(機体の基礎性能や、回路や各部が耐えられる最大魔力許容量)が低いと自壊、結晶破裂までの時間も短くなってしまうから。


《アルフ・カイン》

 操縦難度:C-

 出力性能:S

 機動性能:S

 装甲性能:A+


 アルフレイン王国の近衛騎士団に配備されている近衛専用機。

 現行の魔動機兵としては最高峰の性能バランスを誇るが、相応の魔力適性が必要で操縦難度は高い。製造コストも現行の魔動機兵の中では最も高いため、大量配備は難しく、少数精鋭な近衛用の機体となっている。

 青と白を基調とし、金で紋様など装飾が施された見た目的にも高級感のある機体になっている。


~アンジア~

《バルジス》

 操縦難度:S

 出力性能:B

 機動性能:D

 装甲性能:B


 アンジアが多用する主力の第一世代型魔動機兵。

 機動力を犠牲に出力と装甲を増加させ、魔力適性が低くとも正面から撃ち合って安定的な勝利を得る、という思想で設計されている。装甲に曲面が少なく直線が多いのも特徴。


《バルジカス》

 操縦難度:A

 出力性能:A-

 機動性能:C

 装甲性能:A


 アンジアの第二世代型魔動機兵。

 《バルジス》の設計思想を順当に伸ばした機体で、出力と装甲に偏重した機体となっている。


《バルジカス・デュアルファイア》

 操縦難度:A

 出力性能:S-

 機動性能:C-

 装甲性能:S


 通称「フレイムゴート」

 山羊のエンブレムが施された《バルジカス》をバフメド・バルフマン専用にカスタマイズした機体で、火炎放射器とその燃料タンクを二基搭載する特殊仕様。両手が火炎放射器で埋まってしまうため両肩にキャノン砲を装備しているが、背面の燃料タンクに積載重量を取られてしまっているため装弾数はあまり多くなく、味方との連携により真価を発揮する機体となっている。

 火炎放射器の有用性が低下する平原などでは、燃料タンクを予備弾薬パックに切り替え機関銃を装備し弾丸をばら撒く。


~セギマ~

《ヘイグ》

 操縦難度:A+

 出力性能:B-

 機動性能:B-

 装甲性能:C


 セギマの主力として配備されている第一世代型魔動機兵。

 バランス重視の設計がされており、その性能や設計思想は《アルフ・アル》に近い。装甲をやや削り、出力と機動性を高めた設計になっており、操縦難度もやや上昇している。技量次第で第二世代型魔動機兵とも対等に渡り合える、第一世代型末期に量産された機体。


《ジ・ヘイグ》

 操縦難度:B+

 出力性能:A-

 機動性能:A-

 装甲性能:B


 セギマの第二世代型魔動機兵。主に指揮官やエース、精鋭部隊向けに配備されている上位機種。

 《アルフ・ベル》から装甲を落とし、出力と機動力に割り振ったようなバランスになっている。その分、要求魔力適性値が同世代の第二世代型量産機としては高めになっている。


《グルム・ヘイグ》

 操縦難度:C-

 出力性能:S-

 機動性能:S-

 装甲性能:A-


 通称「ブレードウルフ」

 ウル・ウェン専用にカスタマイズされた機体。《ジ・ヘイグ》をベースに各性能を限界までチューンした機体になっており、その性能は現行最高峰の魔動機兵である《アルフ・カイン》にも迫る。

 専用の薄刃かつ片刃のアサルトソードを複数携行し使い捨てていく戦い方と、狼を模したエンブレムから「ブレードウルフ」と呼ばれるようになった。


~ノルキモ~

《ノルス》

 操縦難度:S-

 出力性能:B-

 機動性能:B

 装甲性能:D


 ノルキモの主力となる第一世代型魔動機兵。

 装甲を極端に減らし、機動性と出力を向上させた攻撃的な設計になっている。脆く打たれ弱い分、軽量で機動力に長けており、偵察や電撃戦、強襲などに向いている。


《ノルムキス》

 操縦難度:A-

 出力性能:A-

 機動性能:A+

 装甲性能:C


 ノルキモの第二世代型魔動機兵。指揮官や精鋭などに配備される上位機種となっている。

 《ノルス》の設計思想をそのまま伸ばし、全体的に底上げした機体。同世代の魔動機兵の中では最もピーキーな設計になっている。

 装甲を削り軽量化することで各部の稼動に必要な出力を減らしている機体バランスの都合上、積載可能な重量も少なくなっており、低い防御性能を補おうと大盾を装備すると機動力が大きく低下するため、事実上重量のある武装が持てない。


《ノルムキス・ハイク》

 操縦難度:C

 出力性能:S-

 機動性能:S+

 装甲性能:D


 通称「ダンシングラビット」

 レイヴィ・バーナー専用にカスタマイズされた《ノルムキス》。装甲を極限まで削り、出力と機動性を高め、頭部のセンサー類も増量と強化を施している。

 専用装備とも言える折り畳み式の長距離狙撃銃は特注品で、ミスリル鉄をコーティングした専用の特注狙撃弾を使用する。

 射程距離と狙撃精度は現行の魔動機兵では最長を誇り、攻撃されない距離から精確な狙撃で味方を援護、支援し、素早く別の場所へ移動し再び狙撃する、という戦法を得意とする。

 頭部から飛び出た二本のセンサーアンテナ、遠距離を素早く動き回る戦い方から「ダンシングラビット」と呼ばれるようになった。


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