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レジスタンス-それはありふれた絶望だった-  作者: アンリ
第一章 孤独を愛したはずの男について -オオノ-
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9.新たな絶望への序章


 俺達の組の仕事は特殊だ。死体運搬は全十棟のうちで俺達の組だけが請け負っている。であるから、俺達は俺達の中だけで完結した生活を送ることができ――それゆえ新しいソウのことは誰にもばれなかった。


 元々、俺達以外の組は複数の組で団体行動を前提とした働き方をしているところが多く、死体を積んで棟外を歩き回る俺達にはそれなりの自由があったのだ。三食は部屋に備えられた棚に配給されるし、週に一回のシャワーはソウだけは濡らしたタオルで拭くのみにとどめた。そうすると俺達は完全なる孤独な組になることができた。


 だがこの孤独には辛さや寂しさはなかった。ソウのことにいまだ納得していない俺ですら不思議な心地よさを感じた。これがナルセの言う孤独を愛するということなのかとすら思うほどに。


 そして新たな子供が加わったことで、不思議と四人の結束が強まった。いつも顔をしかめて自分のベッドに腰掛け貧乏ゆすりをするだけだったベンじいが、ほんの少し、口元を緩ませるようになった。その視線の先にはきまってソウとナルセがいた。二人はまるで親子か兄弟のように仲睦まじい関係になっていた。雛鳥が親鳥を慕うがごとく、ソウは何かあると決まってナルセに頼った。それをナルセも穏やかに、当たり前のことのように受け入れた。そんな三人を見ていたら、じくじくとしていた俺の鬱憤も少しずつ消えていった。まあいいか、うまくいっているんだから。そう結論づけて。


 この研究特区において、こんな四人組は他にはなかったはずだ。ソウという危険因子を抱えていたというのに、俺はまたも喉元の刃から盲目になりつつあった。穏やかな空気が俺を、俺達四人を盲目にさせたのだ。



 だがそんな時間は長くは続かなかった。

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