表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジスタンス-それはありふれた絶望だった-  作者: アンリ
第一章 孤独を愛したはずの男について -オオノ-
2/47

2.この世の原理とは

 *


 この世界の何が正しく何をもって真実とみなすか。


 歴史をひも解く権利も、哲学的に考察する権利も、俺達デルタ系にはない。


 今、この世界はアルファ系と呼ばれる人種によって支配されている。そしてデルタ系と呼ばれる人種は追い立てられ、過重労働を負わされ、搾取される側にある。住む場所も職種も制限され、毎日をアルファ系によって管理されながら生きている。


 この二つの人種の際たる違いはその外見だ。簡単にいえば、俺達デルタ系は黒髪黒目、アルファ系はそれ以外だということ。また、アルファ系は、デルタ系を凌駕する特徴、才能をすべてにおいて有している。すべてというのは実に正しい表現で、たとえば先に述べた肉体面の強靭さはもとより、政治や産業、学問、ありとあらゆる分野を発展、高度化してきたけん引役がアルファ系であるということからも分かる。


 アルファ系はデルタ系の生殺与奪の権利をも有している。それを与えたのは神なのか、それとも元々アルファ系が保有する当然の権利なのかは分からない。分からないが、今、世界は確かにアルファ系の意志一つで動いている。快楽主義で知的好奇心が強く、しかも非常に行動力がある彼ら。そんな彼らによって、俺達デルタ系は文字通り『生かされている』だけの存在だった。


 ここ、俺達が住む区域には全部で十の棟がある。そのどれもが強制収容されたデルタ系の人員ですし詰め状態になっている。誰もがある日突然ここに連れてこられた。俺もそうだ。俺は元農民だった。痩せた固い大地に家族と共に鍬を入れているところを、ただ一言「乗れ」と指示され、大型車に押し込められ、その日のうちにここG棟に収容された。どういう指針で俺が選定されたのか、それは今でも分からない。同年代に比べて少し背が高くて少し頑丈で少し無口で……どれも大した特徴ではない。


 それぞれの収容棟には常時五百人近い同胞が住まわされているらしい。男のみだが、老いも若きも、さまざまな世代の人間がここにはいるらしい。いるらしい、というのは、ここでの生活は同じ部屋で暮らす四人によって構成されるからだ。元々、部屋毎に与えられた労役に日々従事しているせいで、他の部屋の人間と関わる機会があまりない。それに他者と近づくことで守衛に見とがめられるのを誰もが恐れている。ここでは、もしも問題行動を起こす者がいれば、同じ部屋の者同士で連帯責任をとらされることになっている。


 だから、この部屋から一人が消え、入れ替わるように新しくやってきたナルセに、俺は指導をする必要があった。このたこ部屋のごとき四人組の中で俺はもっとも長く逗留しており、自然と組の長のような立場におさまっていたのだ。


 *

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ