とある大人達の会議
短いです。
本編の大人側の注釈のような扱いでしかないので、読まなくても支障ありません。
個人的には読まない方がいい気がしたりもします。
「そうか、“流れ人”じゃったか…道理で…」
「あくまで、その可能性が高いってだけなんだがな。そこら辺どうなんだ、エド?」
「あ、ああ、間違いないかもしれない。その“星の降った場所”ってのも、あの日俺が行った森の辺りと合致するし…」
「ふーむ……して、あの子の言う、他の子の…炎を出すとかいう話は本当じゃったのか?」
「ああ、諸々の説明を小僧がした後見せてもらったぜ。ただ、あのぐらいなら魔術師、魔法使いどっちでも出来ると思うぜ?」
「ガウス…魔術も魔法も基本的に詠唱が必要になるだろう…あの子たちの年齢で無詠唱だなんて、天才どころの話じゃない」
「アーカード…そう言えばお前、魔術齧ってたな。お前から見てどうなんだ?魔の適正が高いとか分かんねえか?」
「道具があれば俺でも分かるんだけどな…そんな占い師を名乗れるような実力は付けれてねえよ」
「まあ良い、その辺りは結局、あの子らの性格次第じゃ」
「その件に関しては問題ないと思うぜ?かなり警戒されてるが、怯えが原因だろうしな、アレは」
「ああ、俺も似たような印象だった。歳の上な子が小さな子を庇う様な形で警戒してたし、いい子ばかりなんだろう」
「俺らと話せるのは今の所あの子だけだろ?」
「それも多分、こっちの意識とかを自分に集中させる為だろうけどな」
「どういう事じゃ?」
「あの子らは施設にいたって話はしただろ?どうもそこで実験をされてたみたいでな」
「実験?なんで?」
「あの子らの元いた場所では魔法とかそういうのはなかったらしい」
「そんな場所があるのか…」
「流れ人って断定した理由もそれだな。
んで、そんなだから炎を出せたりするのは珍しくて、施設に連れてこられて色々されたらしい」
「色々って…」
「まあ、こん中じゃ王都なんかの大都市に滞在した経験があるのは俺やアーカードぐらいだしな、想像つかねえだろ?」
「そんな酷いもんなのか?」
「言っちまえば一般的な魔獣への扱いなんかと似たようなもんなんだがな、血を抜き取る・肉を切り裂く・臓器を検べる」
「なっ…!」
「……そのような者がおるのか…」
「まあ、これは小僧から聞いた話だし、あいつも他の子の実験に関してよく分からねえらしいけどな」
「…これは…なんというか…」
「尚更見捨てられなくなっちまったなぁ…」
「むぅ……ん?そういえばお主ら、誰もあの子らの名前を知らんのか?一度も呼んどらんが」
「直接話が出来たわけでもねえし、小僧に関しちゃ名前忘れてるらしいぞ?施設じゃ番号付けはされてただけらしいからな」
「番号…?」
「ワハハ、田舎モンのおめえにゃ分かんねえかエド、簡単に言やぁ、数だよ数」
「むぐ…1匹とか2匹とかそんな感じか」
「言い得て妙じゃねえか、小僧は“108番”で自分より後に来たのは子どもばかりだったらしいぜ。歳とった奴が自分より後に来たことはないっても言ってたな」
「名前を忘れる程長い間、その施設とやらにおったということか…」
「あいつの話じゃ“忘れる”ってよりそもそも“覚えてない”んだろうがな」
「物心付く前からって事かよっ」
「らしいな、あんな小せえガキがこんな作り話をポンポンと出せるわけねえし、全部真実だと思うぜ」
「ああ、仮に嘘だとしても吐く理由が無いしな」
「……分かった。あの子らを村の一員と認めよう」
「うっしゃ!それでこそ村長だぜ!」
「嬉しそうじゃの…」
「まあな……んで、食い扶持の方はどうするよ?当面の問題はそれだろ?」
「じゃな、差し当たっての問題はそれしか残っとらん」
「エドも大口叩いた割にはそんな狩れてなかったしな」
「雉16羽は多いだろ!!」
「俺の雉13羽にウサギ7匹のが多い」
「罠を仕掛けるのはずりぃっつの!」
「狩りをすんならココを使わなきゃな」
「…脳筋のクセに」
「ああん!?じゃ罠無しで勝負してやんよ!後で吠え面かかせてやる!」
「おう!上等じゃねえか!さっさと行くぜ!!」
「あ!テメエ卑怯だぞ待てゴラァ!」
「………ハシャいどるのう…」
「くっだらねえ…」
「アーカード、お主も早う狩りに行ってこんかい。男衆は全員狩りをするのが村の掟じゃろうて」
「ぬぐ……はぁ、獣狩りよりも魔獣討伐のが楽だぜ…」
「よく言うわい、等級:銅から昇格できず帰ってきたクセに」
「なあっ!それは言わないでくれ…そもそも、ここら辺の獣はゴブリンなんかより強いってのは本当なんだからよ…」
「子どもの時にあのような風来坊に憧れるからじゃ、身の程を知るにはちと時間がかかりすぎじゃがな」
「その記憶も曖昧だけどな、今じゃ顔も思い出せねえよ」
「あの魔術師は仮面を付けとったじゃろうが、そもそも見えとらんわい」
「…………」
「…大丈夫かおんし…儂より耄碌しとるんじゃなかろうか?」
「うるせえっ!!」