表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で正しく生きるには  作者: 春に狂う
この世界のどこかで
43/64

剣聖 然るに転生

こちらも短編1話です。

世界最強の剣士のお爺さんのお話です。

 野ざらしの岩肌に(かすみ)が水滴を作る。

 冷たい(こがらし)黄土(おうど)色の岩に(しも)の白線を引く。


 昼夜の温度差で風化した岩は、荒れた様相(ようそう)を隠さず、その(けわ)しい威容(いよう)臆面(おくめん)もなく(さら)している。

 苔むした表面が、崩れる寸前で保ち、パラパラと小粒が(こぼ)れていく。


 直角よりも傾斜(けいしゃ)のかかった(みね)天辺(てっぺん)に、どこから運んだのやら木造建築(たてもの)が存在する。

 小さな一軒家などではなく、調度品(ちょうどひん)のように整えられた一級の道場である。


































 ────────────────────────





 意気軒昂(いきけんこう)

 道場より響く音を表現するならば、これ以上に相応しい言葉はないだろう。

 ともすれば、怒号(どごう)にも聞こえる程の掛け声が響く。


 鋼がぶつかり合う剣戟(けんげき)の音

 床を(こす)る運足の高音

 踏み込みが床を叩く低音


 言い知れぬ気に包まれ、緊張した空気をそれらの音が()いて響き渡る。



「ォォオオオアッ!!」


「ぅラア!!」


「せやァっ!!」



 一際目立つ───耳立つ(・・・)声が、道場を震わす。

 その踏み込みの音たるや、震脚(しんきゃく)の如く。

 大鼓(たいこ)を叩いたかのような重低音が鳴りを(とどろ)かせる。



「ヌルいわぁッ!!」



 一喝(いっかつ)で、地響きの如き重低音すらかき消される。

 音量そのものはそれほど大きくはない。

 にも関わらず、男の一括は、まるで落雷のように大気を震わした。



 3人の男を同時に相手取り


 刃の付いた刀剣を竹刀にて


 流水を潜らせるように滑刃



 息を吸うように受け流し、

 息を吐くように叩き伏せた。


 見れば誰もが痛感した事だろう。

 “次元が違う”という言葉の意味を

 “隔絶した領域”という不条理さを



「踏み込みが甘い!振り下ろしが遅い!刃の軌道にブレがある!!込もっているのは殺意だけか!何もかもが不十分!!素振り1000回でもやっとれィ!!!」



 先ほどまで響いていた打ち合いの音は静まり、皆が男の声に頷かされていた。

 乾いた白髪を後ろ結びに、特に眉間に多いシワは男の年齢を窺わせる。


 初老の男は、ジュウロウ・オゥグンベルグ。

 剣士として世界最強の称号を与えられた剣聖(ソードマスター)


 人を


 獣を


 魔物を

 悪魔を

 竜を


 あらゆる敵を斬り伏せ、その手に握った刀一つで人生を歩んできた。

 シラサリの魔王や、ハッペンウルグの武王、カインセハルの魔剣士らとの激闘。

 ウーシャンの武技道の制覇に加え、オルドリンの闘技会を連覇するなど、“|生きた伝説《リヴィングレコード”とまで呼ばれ、世界中から「戦いの場に出ないでくれ」と懇願(こんがん)された程である。




 奥底の(くすぶ)りにままならぬ思いを抱えながら、秘境に建てられた道場で弟子の育成に専念している。


 ────あわよくば、剣気に溢れる者が門戸(もんこ)を開くのを待ち望みながら…………

名前からお気づきの方もいらっしゃると思います。

そうです元日本人です。


現代人とは限りませんがね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ