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異世界で正しく生きるには  作者: 春に狂う
ここを拠点とする!
19/64

魔術師ルイーナ・デュークリオン

戦闘シーンです!短いです!!


魔術によって起こされる現象は基本的に“それっぽい何か”なので水を創り出しても魔術の発動をやめれば消えます。飲んでも無駄です。

火炎系の魔術は練度が低いと“炎っぽい見かけの魔術”にしかならないので何も燃えません。

練度が高くなると酸素との化合を引き起こせるので燃えます。

 星を見た。

 夕焼けに染まる平原に、燦然と燃ゆる輝きを。


 それは炎


 赤く、何よりも煌々と

 熱く、何よりも轟々と


 全てを焼き尽くさんとする豪火

 何もかもを飲み込むだろう灼炎



 死が形を成したようだった。


 通常の火や炎とは違う灼熱が、そこにあった。



 異質の輝きが、鮮烈な風のように頭を貫いた。






































 ────事の次第を説明しなければならない。

 先ず、村の中央に集まったみんなに、事情と経緯を説明したのは僕。

 続いて、村への宿泊を対価に、ゴブリンの殲滅を“提示した”のがルイーナさん。


 “子どもたち”には今も小屋の中でジッとしてもらっている。

 スプラッタな結果になりそうだったのと、調査だとか研究だとかを口にするルイーナさんに、あの子たちが能力を使う場面を出来る限り避けようという2つの理由からだ。


 中央に戻ると、既に話は決まっていたのか、ルイーナさんが(やぐら)の上に立っており、手には小さな杖が握られている。

 砦に遮られて、平原の様子が見れないので、僕は村長たちに見つからないように、こっそり外へ向かった。



 そして、僕は魔術の……いや、ルイーナ・デュークリオンという人物の能力を目の当たりにした。


 何か口ずさみ、杖を振るう。

 その2つの動作だけで、ゴブリンが1匹ずつ激しい炎に飲み込まれていく。


 うち漏らさないように強く

 被害が広がらないよう狭く


 ゴブリンが立っていた箇所に、焦げ跡が増えていく。


 “傾国級”、実際にそんな定義があるのかは知らないが、ルイーナさんは自身の実力をそう表した。

 “半端な村の少年”である僕に分かりやすく説明する為だろう……しかし、誇大な表現をした割に彼女の攻撃は小規模なように見える。





 ふと、残り3匹というところで攻撃の手が止まった。

 見ると、少しだけ彼女の息が荒くなっている。

 どうしたのだろう、そう思ったと同時、ゴブリンも彼女の異変に気付いたのか、何か動物の革で作られていると思われる道具を取り出し始めた。


 細長く、中央の幅が少しだけ広い…あれは────



「ッ──ルイーナさん!投石が来ます!!」



 言うが早いか行うが速いか、ゴブリンの投石革(スリング)は、その回転の遠心力で石を射出した。

 かなりの速度で射出された石は、瞬く間に彼女の身体を破壊するだろう。


 事実、地球の歴史から見ても投石機というのは、金属製の鎧が普及して尚猛威を振るった程に殺傷力に優れた道具なのだ。

 ましてや、鎧すら身につけていない彼女の細身では、多少距離が離れていようともタダでは済まない。



 そんな僕の予想はあっけなく覆された。






「ていっ」



 スパン

 と、そんな軽快な擬音が聴こえそうなほど、事もなげに“投石を切り裂いた”



「「「ギッ!?」」」


「え?」



 射出された投石はおよそ15、近代における銃弾のように真っ直ぐ飛ぶ筈もない投石は、その弾道は当然のごとくブレブレで、彼女から離れて飛んでいった石もあった。

 その全てを杖の一振りで真っ二つに切り裂いたのだ。


 確かによく見れば、彼女の持つ杖の先端には金属光沢を放つ鋭利なパーツがある。


 だがしかし、それだけだ。


 それだけでは、例え剣の達人でも、飛翔する複数の石を1度に切り裂く事など不可能だ。

 そもそも、刃が届かないわけだし



 僕や(恐らく)ゴブリンの混乱も余所に、ルイーナさんは櫓から飛び降り、勢いをそのままに地を駆ける。

 慌てて棍棒を構えるゴブリンだったが、彼女の振るう杖は、先ほどの投石と同様、ゴブリンの構えた棍棒ごと首を跳ね飛ばした。


 スパン


 スパン


 スパン



 3度、命が消えるにはマヌケな音が響く。



 村が守られた。

 その事実だけを見て安心するのは難しく、ルイーナさんが居なければ僕らの命を奪っていただろうゴブリンたちを憐れんでしまう。


 自分よりも力を持つ者に蹂躙される。


 そんな“暴力”を、ゴブリンにもたらしたのは僕だというのに、それに対して憐憫の情を持つ自分に吐き気がする。



 どうだっていい、そんな気持ちは忘れろ。

 忘れなきゃならない。

 そんな感傷に浸る暇があるなら村の平穏を保つ策を講じるべきだ。


 そうだ、今回は彼女という言わば救済策が偶さか居たから何とかなったが、次に同じような事が起きたらどうするのか、考えなければならない。

 現実的でなかろうと、先ず自分に打てる策から手当たり次第に試さなければ、この世界であの子達を守り抜くことは夢のまた夢だ。

 だから…………




「しょ────うねーんっ!見てたんデスか〜?見てたんデスね〜?」


「わぶっ」


「お姉さんの勇姿はどうでしたか?カッコよかったデスか?惚れちゃいましたか〜?」


「あのっ、ちょ…離し……て…」



 思考に耽っていたせいで接近してくる彼女に気付かず、全力のハグを受けてしまう。

 多分ゴブリンを解体したのだろう猛烈な血臭と、柔らかな質感に圧迫され冗談抜きに意識が離れていく。


 ゴブリン以外のモンスターや肉食獣の群れに襲われた際の対処法を教えてもらわなければならない。

 目覚めた時、直ぐに聞けるよう頭の中で強く思った。


 彼女の不気味な笑い声に一抹の不安を抱きながらも…

ゴブリンが使った革は野生の鹿から剥いだ皮です。

今回の30匹の群れは、ゴブリンの巣から帰ってこないゴブリン(主人公が殺したゴブリン)の探索に出向き、死体を発見して危険の排除のために出された第一部隊的な群れです。


ルイーナさんがゴブリンを3匹首を跳ねて殺した理由は魔物の肉体に存在する魔の結晶体を回収し、魔回復用の魔法薬を作る為と、

ルイーナさんの被っている仮面に複数搭載されている機能の1つに、魔力の観測機能があるので、魔力の多い個体を残していたという理由があります。


強い血臭に苛まれた状態で圧迫感を感じた時って気絶しません?

祖父の猪狩りに付いて行った時、解体作業の最中、僕は気絶しました。

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