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異世界で正しく生きるには  作者: 春に狂う
ここを拠点とする!
13/64

ルイーナ・デュークリオン

ああもう、厄介な…



「いやー、少年いい身体デスね〜(マナ)神経の並びがとても綺麗デス」


「あの…人の身体を(まさぐ)りながら知らない言葉を列挙しないでくれませんか…」


「ここまで綺麗な魔神経(マナライン)を見るのは初めてデスよ〜、これだけでも調査に来た甲斐がありましたよ〜ふへへ」


「あの……聞いてください……」



先ほど出会った、ルイーナと名乗る女性……女性かな?声から恐らく女性だと思うのだけど…なんだろう、“判断出来ない”というか、“判別しづらい”というか…なんなんだろう…?


とにかく、ルイーナと名乗るこの人は、凄そうな名前の学校で教授をやっていて、何をかは分からないけれど調査班の代表という事らしい。

彼女は自己紹介を終えると、僕の胸元のあたりをジッと見つめ、人差し指で仮面をコツコツと叩き、何度か顔と胸元とで視線を往復させたかと思えば、途端に目の色を変え──と言っても目そのものは見えないので比喩でしかないのだけれど──そのまま僕は拘束され、今に至る。




……というか今なんて──調査?



「ルイーナさん」


「魔力炉の要となる心臓部から端末である五体の細部まで緻密に組まれた神経(ライン)が調度品のような均衡の美を漂わせ──ああ!良い。良いデスね〜!」


「ちょ、やめっ、あ、あの!“調査”って…何のですか?」



詳しくは分からないけれど、学院の名誉教授だとか筆頭調査官だとか、大仰な肩書きを名乗るということは恐らく、ルイーナさんは何やら凄い人物なのだろう。

そんな大層な地位の人物が、“調査に来た”というのはどういった意味を持つのか…


訝しげな僕の目から、その意図を把握したのか、ルイーナさんはふい、と目を逸らした。



「……アー…調査、調査…んー、|守秘義務が…えーと、『言っちゃダメ』なので、少年に詳しい内容までは教えられないデス。

ただ、私は学院長…偉い人からとある事態の調査を命じられてます。それは、たしかに少年が気にかけたような事態になるかもしれない事デス」


「あ、答えてくれるんですね……ん?」



“かもしれない”?

まだその段階に至ってないという事だろうか…

何か引っかかる言い方のような──



「さて、少年の身体も堪能しましたし、この村の長のとこへ案内してもらっていいデスか?」


「構いませんけど、その前の言葉に異議を唱えます!」


「ノー、堪能したのは本当デス!」


「言い方が誤解を招きます!訂正してください!」


「良いリアクション!ばっちぐー、デスよ少年!」



──が、続く彼女の言葉に意識を逸らされ、抱いた微かな疑問は霧散してしまった。



木刀や、おばけの木の片付けをしてから、彼女を村長の家へと案内する。
















「…そう言えば、最初に僕に話しかけて来た時、どこにいたんですか?辺りには誰もいない事を確認したんですけど」


「ヤー、恥ずかしながら落とし穴の中に居ました。

この村に来るまでとても長い道のりだったので、疲れて眠ってたのデスよ〜」


「え?あの、落とし穴の底には尖らせた木を刺してたんですけど…」



落とし穴は外敵(ゴブリン)を想定して作ったものなので、村の人たちが丸太や木材を加工して、槍衾(やりぶすま)の様な形で、落とし穴の中に設置してあると言っていた。


ガウスさんやエドさんはゴブリン程度なら落ちれば確実に命はないとまで言っていたから、ルイーナさんが落ちたのであれば、それこそひとたまりも無い筈だけれど…



「疲れてるとは言っても、あの程度なら大丈夫デスよ。

常に危険が伴う調査官は伊達ではないのデス!」


「ええ…」



──飄々と、大した事ではないかの様に彼女は言う。

だが、落とし穴に落ちる人間が、その下にある槍をどうやって防ぐのか。

防げるというのか。


少年には分からない。

彼の常識には、そういった“不可思議な事”を是とするものは無い。



「こんな風に…」



ルイーナさんは、そう言って“空中に模様を描き”始めた。

淡い紫色の光が、白い指先の軌跡を辿るように線を描く。


そんな目の前の光景が非現実的すぎて、思考が止まる。こんなのは知らない。これはなんだ。

そんな疑問は幾つも浮かぶけれど、何1つマトモに思考が続かず、眼前の出来事に見惚れてしまう。



「出来ました〜!」


「う、わ…」



──恐る恐る

そんな表現のままに、事実、幾ばくかの恐怖心を抱えながら、少年は自らの好奇心の赴くまま、目の前の光に手を伸ばし…



「…え?」



ペタリと、“光に手が触れた”


()れようとしたのはそうだけれど、(さわ)れるとは思わなかった。

いや、反射的に手を伸ばしただけで、触るとかどうするとか、考える以前だったと言った方が正しいか…


硬質な感触を持つ光の紋様は、光の部分しか触れないようで、隙間に手を伸ばすとすり抜けてしまう。

温かいとも冷たいとも知れぬ不思議な感覚に、つい意識が集中する。



「ふふ〜、なんなら教えましょうか?教職に就いてる身デスから得意なんデスよ、そういうの」


「え?あ、良いんですか?僕お金とかそういうの持ってないんですけど…」


「構いませ〜ん、少年カワイイからルイーナさん贔屓しちゃいま〜す!」


「ぅぐ…そういう理由は…」



ありがたい申し出ではあるのだけど、理由が理由な為に、諸手を挙げて…とはいかないし、なんなら断りたくなってしまう…

こんなのは、余計なプライドでしかないのだろうけど



「意地っ張りなのも良いデスね〜ふへへへ」


「あ!着きましたよ!!ここです!村長の家ここですから!!村長ー!」



ドンドンと、戸を叩く拳につい力が込もってしまう。



「そんな強く叩かんでも聴こえとるわい……どちらさんかの?」


「あ、ごめんなさい…この人はルイーナ……えっと」


「ルイーナ・デュークリオンと申します」


「だそうです……ん?」



口調がマトモになったような…



「デュークリオン…生命氏族のお偉いさんの名ではなかったかの?」


「ハイ。血族ではなく、私自身、平民の出ですが、彼らの傘下に入っている為、この姓を名乗っています」


「……立ち話もなんじゃ、中に入らんかの」



先ほどまで接していた彼女とはうって変わった様な凜とした態度。

村長は、こういった来客の経験があるのか、何処と無く手慣れた様子でルイーナさんを中へと案内していく。















「先ずは突然の来訪となった事、お詫びいたします。

重ねて失礼ではありますが、本件において、村民の皆様には場合によっては避難して頂く可能性がある事をご承知ください」


「それは構わん、そんな事よりなんの話なのかを先に説明してくれんかの」


「失礼しました。

ブランシュ赤王国の調査班より、厄災種(ハザード)である“獣”の被害が観測されました。

各地域にも、新たに目覚める厄災種(ハザード)、“竜”・“悪魔”の危険性を憂慮し、対応が遅れると予測される人里への避難勧告と、周辺の調査の任務が課され、私は最も距離の遠い“ドルイドの森”周辺の村を回っています。


既に同盟各国より、異界踏破者の派遣、ハンターギルド本部への金等級(ゴールドクラス)の招集依頼が発令されています。

この村は…その、生命氏族の統治下にある訳ではない為、ご存知ではないかもしれませんが、こちらが『氏族書』になります」


「……物々しいの」



深く、ため息を吐いた男は、口元に蓄えた髭に手を添えながら、静かに、しかしハッキリとそう口にした。

まるで、氏族書に覚えがあるかのように、表情から滲む剥き出しの嫌悪感を隠そうとも…いや、隠す事をハナから諦めているかのように─



「…遥かな過去、世界を壊す一歩手前とまで言われた氏族大戦より幾度か起こってきた厄災種(ハザード)による破壊…確かに何度も乗り越えてきたものではありますが、前回…78年前での被害は大戦後類を見ない被害でした。

ですので、あのような過ちが起きぬよう──」


「御託は良い」



─その目つきは、親の仇を見るかのようだった。



「…いや、すまんの、お嬢さんまだ20半ばといったとこじゃろう…八つ当たりじみた事をして申し訳ない」


「…は、い…いえ、大丈夫です…」


「……ワシらのような、身の守り方も知らんような者が、このような場所に村を作っている理由…お嬢さんには分かるかの?」


「……生命氏族の在り方への疑念から、独立を宣言したり、疎開する人は少数ではありますが、存在…します」


「そうじゃ、そして何故、78年前は被害が大きかったのか、そちらではなんと説明されておるかの?」


「厄災の始を観測されるまでに遅れがあったからだと言われています」


「…遅れたのではない。見過ごされたのじゃ」


「え?」


「当時の厄災が観測された1番最初の被害はどこであったか、それと被害が報告されてからの対応も、調べると良いじゃろ」


「ッ待ってください!78年前、あの時の厄災に何らかの悪意が混じっていたとして、何故あなたがそれを知っているのですか!?」


「調べれば自ずと分かる事じゃ、ワシがここで口にする必要はない」



話は終わりとばかりに、老人は部屋を後にする。

彼女個人を嫌っているという訳ではないのだろう、家を追い出したりしているのではないのだから。

だが、好感がある訳でも、ましてや優しくするだけのの義理がある訳でもない。


彼女は1人、先ほどの会話を反芻する。



「…やはり、“調査”に来て正解だったのでしょうか」



言われた事ー78年前の厄災戦は誰かの意図によって引き起こされたーその真実には驚いたし、事実、一瞬我を忘れたが、告げられたのは彼女の疑念をより確実なものとする証言だった。



厄災種(ハザード)は、何らかの手段を用いることで制御が可能…」



如何に“筆頭調査官”とは言え、学院の教授という立場に就く彼女が、なぜこのような辺鄙な地域への避難勧告、並びに厄災種(ハザード)の探索任務を請け負ったのか

末端の人間が複数人で行うような任務を、なぜ彼女は1人で遂行しているのか


彼女は、何の目的でここに来たのだろう…



「ルイーナさん、聞かせてください。貴女の本当の目的を」



僕は盗み聞きした今の話から、彼女の本当の目的は別にあると判断し、声をかけた。



「そんなに切羽詰まった状況なら、落とし穴の中で眠る余裕は無いですよね?」

結局、落とし穴から出たのは彼女1人の力なのだから“出れなかった”というのは通用しない。


「えーと、少年…どこから聞いてたんデス?」



驚いた様に僕を見た彼女は、妙に巫山戯た表情をしていた。

だからおうむ返しの様に僕も多少の嗜虐心から



「はい、最初から」



笑顔でそう返事をした。























キャラ設定



ルイーナ・デュークリオン

5属性の魔との適正が高く、行使できる魔術の幅広さから5属性魔(フィフスエレメント)と称される。

幼年の頃、デュークリオン家の遠縁にあたる変人魔導師に引き取られ、デュークリオン姓を与えられる。


数年間の修行を経て、第1魔導学院に優待生として入学。

魔術の研鑽に明け暮れ、座学でも優秀な成績を納める。

魔導学院卒業後、エウネメス魔導師団へと入団、隣国との小競り合いを数度経験した後、国家直属の調査隊へ引き抜かれ、同時に魔導学院の教授の地位を与えられる。


普段から付けている仮面は調査隊発足当時の隊長より支給された魔道具であり、複数の機能を有する。

ルイーナさん実年齢は3……(文字はここで途切れている


上から88、54、86の身長は160ぎり届かないくらいで46キロくらいです。

(※この設定は碌に活かされないオタクの妄想です)


因みにルイーナさんに仮面を渡した調査隊初代隊長というのがアーカードさん憧れの旅の魔術師です。

そして軍務経験プラスに調査隊にはむさ苦しい面々ばかりなので、些かショタコン拗らせ気味です。

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