表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

逆さまマーメイド

執筆者:影峰柚李

短くなってしまいました。

海の中から眺める街は光の反射で輝いて見える。

青と白の宝石のようだ。

こんなに綺麗な街だったなんて初めて知った。

生まれてからずっとマスクなしじゃ生きられないような街で生きていた。

ついこの間まで仲が良かった子が突然死ぬ、死がつきまとった街。

そんな街の排気ガスも、ゴミが溜まった匂いも、ここまでくれば感じない。

ここで感じるものといえば苦しさと、塩の味くらい。

魚なんて一匹も泳いでない。

絵本で見た海の中はもっと神秘的だったのだけれど、

やはり現実は期待を裏切るもののようだ。

海の底は暗く、何も見えない。

だんだん苦しさも感じなくなってきた。

海と同化しているみたいだ。

今の私はさながら人魚といったところだろうか。

人魚姫のお話はどんなだったかな。

ああ、そうか、地上に行きたいお姫様の話だ。

人魚はいつだって地上に憧れる。

あの世界はなんて素敵なんだろう!と。

だが、現実は非情だ。

青い空、爽やかな空気、素敵な人。

そんなものありはしない。

海の底から見た景色が本当の景色とは限らない。

地上にでた人魚はあまりにも違う理想に幻滅して死を選ぶ。

理想は、理想のままとどめておくのが一番綺麗なんだ。

私はどうだろう。

あの地上から見る海は、灰色で、ゴミが漂っていた。

あまり海は好きじゃなかったかもしれない。

けれど、ここまでくるとゴミはないし色も綺麗。

地上から見た海とは別世界だ。

この海なら、好きになれるかもしれない。

見た目じゃ分からないのは海も地上も同じという事か。

今の私になら人魚の気持ちがわかる。

人魚はこの海からの景色に憧れていた。

音も、匂いもわからない、反射された世界に。


だんだん意識が遠くなってきた。

もうそろそろ死ぬみたいだ。

私が死んだところで世界が変わることはない。

今のまま、並行的にこれからも世界は回る。


さようなら、私の世界。

さようなら、死んだ世界。


次生まれた時はこの海から見た世界になっていますように。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ