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「海で聴く歌」
地元に海がないので、妄想して書きました。 by 小夜子
バイト帰り、俺はチャリをこいで帰る途中だった。
静かな海が眼下に広がり、寒さに身を震わせつつ、家路を急ぐ。
すると、どこからか歌が聞こえてきた。
優しくて、綺麗な、素敵な歌声。
声からして女性だろう。
だが、それはアイドルやテレビで流れる曲とは違っていた。
音程もリズムもよく、聞き取りやすい。
明るく、でも、どこか暗く…。
綺麗というよりは可愛いという感じの歌だった。
俺は胸がゆっくり癒されていくのを感じた。
それは海の近くから聞こえてきた。
こんな時間に誰か歌っているのか?
自転車を止めて、時計を見ると時刻は午後21時を示している。
心配なのもあったが、俺はそのまま曲を聴きづけた。
数分後、曲は終わった。
階段下、浜辺で女の子は声の調子を整えながら何かブツブツ言っている。
音楽のテストでもあるのか、ただ単に歌いたかっただけなのか…。
そこら辺はわからないが…いや、真相なんてどうでもいい。
俺は再びチャリをこぎ、海を後にした。
明日も聞きに来よう-。