伯爵の息子、ヤナルエ
裏配達をする事を決めた後、暫くして僕とアリエスは二人で第二城下町の南通りを歩いていた。
第二城下町。
主に爵位を持つ貴族達が住み、その町並みは第一城下町と比べものにならない位に気品のある場所だ。
どの建物を見ても簡素な造りの家などは一切無い。
全てが凄腕の職人によって建てられたと判る、豪勢な建物ばかりだ。
その他にも、入るのを躊躇いそうになるような如何にも高級そうな料理店や宝石店等。
正に帰属の為だけに造られた、貴族だけの、帰属の為の町だった。
更に左に目を向ければ、煌びやかなドレスに身を包み、優雅な足取りで歩を進める厚化粧な貴婦人。
右に目を向ければ、家紋か何かが彫られた馬車に乗りながら談笑しているふくよかな貴族達。
擦れ違えば、鼻腔を刺激する甘ったるい香水の香り。
アレンは嫌な方向に五感を刺激する第二城下町で、早くもげんなりとしていた。
「何でこんな居心地の悪い所に住みたがるのかな、貴族っていうのは」
「私達には無い特殊な感性を持っているのだろうな」
「それにしても、この服、着心地悪いなぁ…」
「アレン、あまり変な行動をしていると不審がられるぞ」
「ああ、ごめん。でもやっぱり落ち着かなくてさ」
アレンは改めて自分の服装に視線を向ける。
白いシャツに黒いヴェストを着てその上から黒のロングコートを羽織り、ズボンは黒のスラックス。
頭には黒いシルクハットを被っていて右耳には磨き上げられた透明な宝石が付いたピアスを着け、身体を殆ど黒で包んだシンプルな服装になっている。
本来であれば黒と深緋のオッドアイは目立つのだが、実は外に出る時は分からないように深緋の眼に幻惑魔法を常に掛けて誤魔化しているので、隠す必要は全くない。
「そうか?私は似合っていると思うぞ?」
「そうかな?自分じゃあんまり良く判らないんだ」
「大丈夫だ、何処から見ても貴族にしか見えないぞ」
「それは良かったよ。でも僕なんかよりアリエスの方が似合ってる思うんだけど」
アリエスが着ているのは、後腰が膨らんでいるバッスルスタイルと呼ばれるドレスだ。
全体は濃緑で統一され、至る所に金の刺繍が施されており、光を反射し美しく輝いていた。
左耳にはアレンと同じピアスを着け、頭にはつばの広い白の帽子をかぶり、アリエスのブラウンの髪を美しく際立たせている。
おまけにアリエスは容姿端麗、文句の付け所などあるはずも無かった。
二人が着ているこのドレスと服は、第一城下町で1番腕のいい服屋に材料を提供し、三日三晩掛けて不眠不休で作ってもらったものだ。
因みに店主はコレを作り終わった後、満足そうに笑顔を浮かべて倒れたらしい。
貴族の世界は基本的に爵位で結婚相手を判断するが、それだけでは無い。
その他に、風格、品性、容姿、服装で判断されるのだ。
その為爵位が高くても、品性に欠けていたりすると、婚約を断られる事もある。
中でも服装は大事で、金の刺繍や高価な装飾品を着けて容姿が優れていると、初対面で位を知られていなくても、爵位が高いと思われるのだ。
つまり、それをまさに体現したアリエスの様な人と、お近づきになりたがる者もいるわけで。
「其処の女性、良ければお名前をお聞かせ願えませんか?」
案の定、金髪の男性貴族がアリエスに声を掛けてきた。
見た目は二十代位だろうか、服装から見るに、爵位は子爵の息子といったところだろうか。
そう結論づけた僕とアリエスは、一瞬視線を交わし小さく頷き、人格を切り替える。
そして、そのまま手を差し伸べたままで居る貴族に視線を向け、アリエスはにっこりと微笑んだ。
「わたくしに何か御用でしょうか?」
先程とは全く違う雰囲気に、全く違う声色で微笑みながら言葉を返したアリエスに、金髪の貴族は呆けた表情で固まり、少ししてはっと意識を引き戻した。
「す、すまない。あまりの美しさに見蕩れてしまっていたよ」
「うふふ、お上手ですわね。それで、わたくしにどんな御用ですか?」
「ああ、美しい貴女の名前を是非とも私に教えてはくれないだろうかと思い、声を掛けたのだ。して、貴女のお名前は?」
「あら、こういう時は先ず、お声をお掛けになられた方が名乗るものではありませんこと?」
「これは失敬。私の名はマリアン・ヤナルエ。伯爵マリアン・キャバスの息子だ」
(マリアン……聞いたことないですね……)
僕は頭の中でマリアンの情報を調べるが、記憶している中にマリアンという名前は無かった。
有名な家では無いと判断し、適当にあしらうようにアリエスに目で伝える。
アリエスは意図を理解し、コクッと小さく頷きヤナルエとの会話を続けた。
「初めまして、わたくしの名前はカタリナと申します。以後、お見知りおきを」
アリエスが名乗った偽名はここに来る前にもしもの為に決めておいたものだった。
そのもしもの状況に直ぐになるとは思っていなかったが、これは仕事。二人共問題無く対応した。
「カタリナか、とても良い名ですね。益々気に入りました!どうだろうか、私と一緒にお茶でも──」
「申し訳ありませんが、其処までにして貰えませんか」
ヤナルエがアリエスをお茶に誘おうとしていた所で、二人の間にアレンが割って入った。
「ん?何だお前は?」
「私はカタリナの婚約者です。それ以上私の妻になる者に付き纏うのは止めて頂けますか?」
「なんだと?」
アレンの存在を今認識し、邪魔をされて明らかに嫌そうな反応したヤナルエに──事前に決めていた設定を使って───物申すと、ヤナルエは眉間に皺を寄せた。
「彼女と私は愛し合っています。子爵でしたから黙って聞いていましたがそれ以上は私を通してからにしてもらえますか?」
「ごめんなさい、ヤナルエさん。誘いは嬉しいのだけれど、私にはこの人が居るから貴方にはついていけないの。ごめんなさい」
アレンに続いて、アリエスはそう言うと、隣にいるアレンの腕に自分腕を絡ませ、そのまま肩に頭を乗せて、甘えているような体勢をとった。
それを目撃したヤナルエは、吃驚したのか、目を丸くして固まっていた。
(これで引いてくれれば楽なんですが…そう簡単にはいきませんよねぇ…)
アリエスにキスをされたアレンは、内心辟易としながら考えていた。
不遜な態度の貴族は対応が面倒臭い。
ただでさえ堅苦しく甘ったるい匂いのするこの場所に居続けるのは嫌なのに、こんな所で道草くっている場合では無いのだ。
「なっ…僕を、僕を弄んだのか!!」
しかし、アレンの期待を裏切らず、目の前のヤナルエは額に青筋を浮かべ、顔を赤くして怒鳴ってきた。
実際はヤナルエが勝手に勘違いをしていただけなのだ。
アレンは別に離れていたわけでもなく、かと言って従者のような格好もしていない。
アレン達に一切非は無い。しかし、それで片付かないのが貴族なのだ。
アレンは溜息をつきながら絡められているアリエスの手を解き、一歩前に出る。
「そういうつもりはありません、私は元々彼女の隣に居ましたし、気付かなかった貴方に問題があるかと思いますが?」
「ぐっ…な、生意気だぞ!!僕は伯爵の息子だ、お前なんか父上に言いつければなんとでもなるんだぞ!!」
ヤナルエは喚きながら自分の父親を使いアレンを脅して来た。
が、そんな事はアレン達にとっては想定内だった。
「そうですか、分かりました。貴方がそう言うなら、私にも考えがあります」
「な、なんだ」
「私の爵位。勿論、解っていて文句を言っているんですよね?」
「な、何が言いた──」
「侯爵です」
淡々とアレンが言うと、ヤナルエはほんの少しの懐疑と動揺を浮かべた。
そして問い正そうとする言葉が完成する前に、空かさずアレンが言葉を挟む。
「…は?」
「聞こえませんでしたか?私の爵位は侯爵です。つまり、貴方よりも上の爵位を持っていると言う事です」
「なっ…う、嘘をつくな!!そんな嘘に騙されるか!!」
「そうですか、残念です。素直に誤って頂けたのなら──許してやったんだがな」
「ひっ!?」
ヤナルエは焦りを浮かべながら否定の言葉を連ねるが、アレンの言葉と雰囲気が変わり、小さく悲鳴を上げた。
貴族の爵位というものは五つの階級に分けられている。
男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵。これがこの貴族の世界の階級だ。
貴族は上の階級には絶対に逆らわない、いや逆らえないのだ。
下の者にとって、上の命令は絶対。
少しでも上の者の機嫌を損なえば、自分だけでなく家族の首も飛ぶハメになる。
勿論、これは真っ赤な嘘なのだが、堂々と冷静に言えば、人というものは信じかけてしまうものである。
現にアレンがほんの少し威圧を掛けながら口調を変えただけで、さっきまで真っ赤だったヤナルエの顔が、真っ青になっていた。
「ま、まさか…ほ、本当に…?」
「本当に残念だよ、マリアンヤナルエ。後日君の家に不敬罪の罪状を送らせるから、謹んで受け取ってくれ」
「あ、あぁ…あぁぁぁぁ……」
ヤナルエは自分の失態に漸く気づき、絶望に染まったうめき声を上げながら、地面に膝から崩れ落ちた。
普通なれば、これでマリアン家は没落。貴族では無くなり、この第二城下町に居られなくなる。
ヤナルエは自分の行いを悔いていた。
無知で居たが為にこの様な失態を犯し、家族をも自分一人の行動で道連れにしてしまった。
(僕は、僕はなんて馬鹿な人間なんだ。権力に、地位に溺れた結果がこれだ。この地位は僕が手に入れた訳では無いというのに……)
しかし、ヤナルエは其処で折れる人間では無かった。
(でも、何時か必ずこの汚名を返上する為に、もう一度、今度は僕の力で貴族まで伸し上がってやる。先ずは父上達に謝ろう。謝って済む問題じゃない。罵られたって貶されたっていい。泥水を舐めてでも僕は必ず這い上がってやる……!!)
と、心の中で半端では無い決心をヤナルエはしていた。しかし。
「──と、本来ならばこうなるのですけど、今回私は爵位も名前も名乗っていません。こちらにも非はあるので、今回の件は不問にしましょう」
「…ぇ?」
「今度からは気を付けて下さい。それでは」
「ぁ…ありがとうございます!!!!」
本来、例え相手の爵位が上だと知らずに暴言などを吐いても、問答無用で不敬罪などの罪となる。
だがアレンは貴族でも何でもないのだ。寧ろ、本来罪に問われるのはアレン達の方だ。
しかし、全くもって無罪のヤナルエはアレンの嘘爵位を、本気で信じてしまった。
このままは放置してアレンが去れば、居もしない貴族からの罪状が来るまで、ヤナルエ家は震え続けることになる。
流石にそれは可哀想だと思ったアレンは、適当な言い訳をしてその場を去った。
結局、ヤナルエの人生を掛けた決心は、脆くも崩れ去った。
しかし、ヤナルエはそんな事を忘れているかの様に心の中で感動の嵐が吹き荒れていた。
(こんな貴族が、こんな素晴らしい貴族が居るなんて…!!)
ヤナルエは今は忘れていた昔の記憶を思い出していた。
──いいか、ヤナルエ。貴族というものは人の上に立ち、権力を持つ者だ。その権力は決して自分の為に使うものでは無い。力を持たない平民達の為にその力は振るわれなければならないのだ。力の使い方を間違え、自分の欲望の為にその力を振るえば、それは唯の暴君だ。絶対、そのように力を使ってはいかんぞ?……まあ、今はそんな貴族の方が少ないがな。
それは今は亡きヤナルエの祖父が残したものだった。
(そんな貴族になろうと幼い頃は心に決めていた筈だった。なのに何時しか周りの色に染め上げられてしまった……しかし、もう迷う事は無い。僕には目標が出来たんだ)
ヤナルエはじっとアレンの背中を見据えてから、頭を深々と下げる。
(何時かあの人のような、権力に見合う振る舞いが出来る貴族になろう。そして、誰にでも誇れる様な立派な貴族になろう)
ヤナルエはそう心に堅く誓うのであった。
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ヤナルエを騙して恐い思いをさせたアレン達は、暫く進んだ後に脇道に入り、首元のシャツのボタンを一つ外してから、人格を元に戻す。
「あぁ〜疲れたぁ…」
「ああ、一事はどうなるかとおもったぞ」
「ごめん、ちょっと吃驚させようと思ってたらまさかあそこまでなるなんて思わなかったんだ」
アレンは壁に寄りかかり脱力しながら答えた。
人格を切り替える。
これはアレン達三人全員が使える能力だ。
裏配達において、最初に必ず足りていないものがある。
情報だ。
今回のように情報が少ない場合には、このように貴族の町に潜入する事もあれば、盗賊に入ることだってある。
その際に相手の警戒心を緩め、味方だと思わせる為にこのスキルは絶対必須なのだ。
表情、感情、仕草、口調、雰囲気、全てを全くの別物に切り替える。
時には優雅に。
時には冷徹に。
時には傲慢に。
時には残虐に。
想いの為にどんな事でもする。それが【想いを届ける配達屋】なのだ。
「さて、そろそろかな。フェイ、其方はどうなった?」
『ンー、まあ上々かナ』
アレンが右耳に着けているピアスに触れると、宝石が淡く光り、フェイの声が聞こえてきた。
アリエスもアレンが声を掛けたところで、左耳に手を添えていた。
これはアレンが魔石を加工して造った魔力通信機だ。
魔石に相手の魔力を登録しておき、通信する時に登録した相手の魔力を指定し、魔力を込めれば会話が出来るという仕組みだ。
因みに今は、アレン、アリエス、フェイ全員の声がお互い聞こえる様になっている。
「それじゃあフェイ、集めた情報を教えてくれ」
『オッケー。まずはリアちゃんのお母さんを攫った貴族だけど、名前はサルナンテ・ナチリア。爵位は伯爵で、歳は四十三歳。邸は東通り三番地区、目印は青い屋根。造酒に手をつけてるけど、裏で色々悪い事やってるみたいだヨ。まあその辺りの証拠はリアちゃんのお母さんを助けに行った時にでも探してヨ』
「わかった、ありがとう。リアはどうした?」
『それなら言われた通りアレンのとこの下宿先に預けたヨ。エユレサン吃驚してたけど軽く説明したら了承してくれたヨ』
「ありがとう、フェイはゆっくり休んでくれ。何かあったらまた連絡するよ」
『わかった。それじゃあ後は頼んだヨ』
「ああ」
通信を切り、フェイに心の中でもう一度感謝しながら、少し乱れた服装を整える。
「目的地は分かった。これからの事について話しておこう。先ず僕達はここから出て東通りに向かう訳だけど、そこで酒屋に寄る」
「どうしてだ?」
「サルナンテは造酒に手をつけているとしたら何かやってるかもしれないだろ?例えば他人の酒の根も葉もない悪い噂を流しているとか」
「相手の酒屋を脅したりしている、とかか?」
「その通り。フェイもどんな悪い事をしているか迄は分かってないみたいだから──」
『いや、全部判ってるゾ?』
「え?」
早速酒屋を調べて回ろうと話をしていると、何時の間に繋いだのか、フェイが割り込んできた。
『サルナンテはさっきアレンが言った通り、根も葉もない悪い噂を流してたり、店の配送前の酒樽を壊して営業妨害したり、裏で違法物品を取引してたりしてるんダ』
「相変わらず凄い情報量だな…」
『ま、一応情報屋だからネ。でもこれはあくまで情報だけ。証拠が無くちゃ何も出来ないヨ。そんなわけで、脱出経路の確認と証拠の確保、よろしくネ』
「ああ、ありがとう」
フェイの情報収集能力は凄まじい上に、絶対に間違った情報は与えない。
アレンは以前、情報屋として評判が良いフェイに、冗談で王城の警備兵の配置調べられる?とフェイに聞いた所、数日後になって城の構図から侵入出来る場所、警備兵の位置に、見張りの交代の時間まで書かれた紙を持ってきたことがあった。
流石のアレンもこれには驚き、適当に作った偽物じゃないのか?と聞いたことがある。
するとその時のフェイは真剣な表情でこう言った。
──情報屋が嘘の情報を流したらそれはもう情報屋じゃない、ただのホラ吹き野郎だヨ。アタシが集める情報には人の命が懸ってくるかもしれないんダ。もしアタシが間違った情報を誰かに伝えたことが判った時には、アタシは情報屋を辞めるヨ。
この時アレンは心の底からフェイを尊敬した。
情報屋という仕事に誇りを持ち、一度でも違えたらその仕事を辞めるという真っ直ぐな心に感動したのだ。
それからアレンは一度もフェイの情報を疑ったことは無い。
「それじゃあ行こうか」
「そうだな、なるべく日が暮れる前に帰りたいしな」
そう言って二人は東通りを目指して、脇道から南通りに出ていった。
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ここはとある貴族の邸。
その一室の中には隠し扉があり、地下へと繋がる階段があった。
其処にはいくつかの牢屋があり、鉄格子を挟んで平民の格好をした一人の女性と、仕立ての良い服を着た貴族の男が向かい合っていた。
「いい加減私の妻になる気にはなったかな?」
「………」
牢屋の中に座る女性は俯き何も答えない。
普通であれば不敬罪となってもおかしくは無いが、貴族の男はニヤニヤ笑い、全く機嫌を損ねた様子はない。
寧ろ、自分の言うことを聞かないのを嬉しそうにしていた。
「強情だな。我ながら優良物件だと思うぞ?性格は悪くないし、権力は持っている。勿論財力も問題無い。そんな私を受け入れない理由は無いと思うのだがな」
「良い人でしたらこんな牢屋に閉じ込めたりしないと思いますが?」
「普通の部屋に入れて置いたらお前は逃げるだろう?」
「当たり前でしょう!貴方のものにはなりません、いい加減家に返してください!!」
女性は貴族の男に向かって怒りをぶつける。
しかし、男は女性の意見を聞き、残念そうに顔を顰めた。
「そうか…残念だ。こんな手は使いたく無かったのだがな…」
「…?貴方、一体何を──」
「確か君には娘が一人いるんだったよな?」
「どういう…っ!?、貴方まさか…!!お願いします!!それだけは、どうかそれだけは止めてください!!」
女性は鉄格子に縋り付き、必死に懇願した。
余程娘が大切なのだろう、その顔には焦りが見える。
しかし、女性を無理矢理閉じ込めるような非道な貴族の男はそれを見ながら厭らしく笑っていた。
「それは君の今後の行動次第だよ。どうすればいいかは判るだろう?」
「それは…」
「ククッ、いい返事を待っているよ。クッハッハッハッ!!」
貴族の男、サルナンテ・ナチリアは勝ち誇った様に高笑いをしながら地下室を後にした。
扉が閉まる音が聞こえ、辺りが静寂に包まれる。
女性は鉄格子に縋り付いたまま、膝から崩れ落ちた。
「うっ…っ…ふ…」
顔を俯けると、女性は嗚咽を漏らし始める。
白銀髪の髪で隠れた顔から、一粒の雫が落ち、脚に当たり弾けた。
「うぅ…リア……っ」
そう呟いた女性、マリアーナは、愛しの娘の名前を呼び、暫くの間涙を流し続けた。
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少し遅くなりました、すいません。
大晦日までには終わらせたいですね……無理かな?(๑o̴̶̷̥᷅﹏o̴̶̷̥᷅๑)
そんな訳でそれ目指して頑張りたいと思います!!
大晦日の閑話とか入れれたらなーとか…これこそ無理か( •∀︎•` )
頑張りまーす。
次はなるはやで投稿します。