事件の予感
すいません、イベントの童話書いてて遅くなりました。
少ししたら童話を出すのでそっちもよろしくお願いします。
だしたらお知らせします。
サーシャとアリエスの口調を変えました。
少女の年齢を5歳から7歳にしました。
それからアレン達は配達物を分担し、荷物を届ける為に建物を出た。
その後アレンはというと───
ゴロゴロゴロゴロ……
「はぁ〜……」
配達物の中の大きな荷物2つを荷車に乗せて引いていた。
本当はアレンも手紙等の軽いものを運びたかったのだが───
──アレンは男なのだからそれくらいの持てるだろう?
──アタシは非力だから重いのは任せるヨ。じゃ、頑張ってネ。
と言われ、反論を言う間もなく2人に出て行かれてしまい、こうして今に至るという理由だ。
「全く、少しくらい手伝ってくれてもいいじゃないか...っと、此処か」
アレンがブツブツ言っている間に、一つ目の配達先である一軒の家に到着した。
配達物は木材だ。何に使うかは分からないが、恐らく屋根の修繕をしたりするのだろう。
「すいませーん、お届け物でーす」
アレンはドアを叩き、声を掛けるが返事が無い。
不審に思っていると、唐突にパリンッ!と何かが割れる音と、怒鳴るような声が微かに聞こえた。
アレンは何か起きたのだと思い、ドアを開けた。
「どうしたんです─ふぎゃ!!」
しかし、ドアを開けた途端アレンの顔面に何かが飛んできて、それが鼻頭にクリーンヒットした。
「いてて……何だ?」
赤くなった鼻を抑えながら自分の辺りを見回すと恐らく自分の顔面に飛んできた正体である小鍋が落ちていた。
アレンはその小鍋を拾い配達物を持ち──今度は飛来物に気をつけながら──家の中へと足を踏み入れた。
「お邪魔しまーす……」
すると、家の前で微かに聞こえていた怒鳴り声がハッキリと聞こえた。
声がする方に進んでいくと、二人の男女がいた。
「いい加減にしてよ!!」
「俺の勝手だろうが!!」
「ふざけないで!!」
「あの─っと」
2人は男の方がこちらに背を向ける形で言い合いをしていた。
声をかけようとした所で今度は皿が飛んできて慌てて受け止める。
「あのー、すいません」
「大体あなたはいつも……え?」
「あのー、配達に来たんですけど──」
アレンは怒鳴り合いが止んでほっとしながら次の言葉を発して後悔した。
「どうかされたんですか?」
────────────
「つ、疲れた……」
その後というものの、女性の方に泣きつかれ、男性の方には殺されるんじゃないかってくらい睨まれ。
それを何とか回避して話を聞いていると、またその途中で口喧嘩が始まりそれを仲裁して。
何とか仲直りさせることが出来、しかし何故か部屋の片付けを手伝い、やっとの事で配達物を渡して家を離れた所だった。
時刻は既に一一時半。午前中に終わるかギリギリな所だった。
「さてと、残りは早く片付けないとな。えっと場所は……お、近いな。よかった、これなら間に合うかも。でも……珍しいな、こんな所のの配達なんて」
場所はそれ程離れてはいなかったが、表通り沿いの家ではなく、入り組んだ所の家だった。
この辺りに住む人は表通りに住む人に比べて、余りお金が無い人が住む場所だ。
その為、余りこういう配達はあまり無い為、アレンにとっては珍しかった。
「此処から入れば行けるけど……荷車は通れそうにないな。仕方ない、手に持って運ぶか」
アレンは台車に残っていた木箱を抱え、手狭な道を進んで裏通りを目指した。
「えっと……多分この変なんだけどなぁ」
アレンは路地裏を進み裏通りに辿り着き、目的の家を探していた。
表通りに比べて人通りが少なく、辺りは静まり返っている。
「お、見つけた」
そんな中でアレンはやっとの事で目的の家を見つけることが出来た。
前回と同じようにドアを叩き、声を掛ける。
「すいませーん、配達屋ですけどー」
しかし、中から人が出てくる様子も返事を返すことも無い。
「……留守なのかな?」
またもや返答が無い事を怪訝に思いながらドアノブに手を掛ける。
「開いてる?」
腕を引くとキィ、と小さく音を立ててドアが開く。
それほど大きくは無い家だが中は暗く、明かりがついている様子はない。
「不用心だな……」
アレンはそのまま配達先の家の中に入る。
「【光よ】」
薄暗く、部屋の中がよく見えなかったので、光属性下級魔法、【ライト】を唱える。
すると空中に光球が現れ、家の中を照らす。
辺りを見回すが、何処にも人がいない。
「…誰も居ないのか?」
どう考えてもおかしかった。今日配達があるという事は少なくとも2日前に配達は頼まれている筈。
しかもこの配達の依頼人は自分の家に配達を頼んでいる。
留守にしているにしても鍵を掛けてないのは変だ。
しかし、ただの鍵のかけ忘れだったら盗人と勘違いされるかもしれない。
そう思ったアレンは配達物を置いて外に出ようと思い、木箱を床に置き、そして家を出ようと踵を返して1歩踏み出す。
古くなっていたのか、床がギッと音を鳴らす。
すると家の隅でガタッと物音がした。
「誰か居るのか?」
声を掛けるが返事は無い。
アレンは物音がした方に近づいていった。
其処には衣服を入れるタンスが置いてあった。
アレンは取手に手を掛け、ゆっくりと開けた。
しかし、其処には何も無かった。
「……気のせいか」
再び家を出ようと振り返ったその時。
「……ぅ……っ…」
「ん?」
何処からか嗚咽のようなものが聞こえた。
しかし、微かに聞こえるだけで何処から聞こえているかまでは分からない。
「【力よ】」
アレンは身体強化魔法を唱え、聴力を強化した。
すると微かに聞こえていた声がはっきり下から聞こえた。
床をよく見ると、床蓋がある場所があった。
其処に手を掛け、ゆっくりと捲り上げた。
「ひっぐ…っ……え''っぐ……」
其処には七歳くらいの女の子が嗚咽を漏らしながら泣いていた。
「女の子......?」
俺がポツリと呟くと、女の子の身体がビクッと揺れ、ゆっくりと顔をこちらに向けて来た。そして。
「ひっ──うぇえええええん!!!!!!!!」
「えっ、えぇえええええ!?」
アレンの方を見るなりいきなり大声で泣き出した。
「えっ、ちょっ、まっ──」
「ふぇえええええん!!!!!!!」
アレンは慌てた。
いくら裏通りだと言っても人は居る。
こんなに大声で泣き叫ばれたら、人が来て変な誤解を生んでしまう。
取り敢えず少女を床下から出そうとして手を伸ばす。
「やだ、やだぁ!!!!」
「落ち着いて、大丈夫だから」
しかし、少女は暴れて抵抗して、アレンの手を拒んだが、アレンは暴れるのも構わず腋の下に手を入れて持ち上げた。
床下は暗くてよく分からなかったが、少女の髪は綺麗な白銀の髪だった。
「はなしてぇ!!!!!!!」
「うわぁ、これどうしようかな……」
アレンの中で泣きながら暴れる少女、それを両手で捕まえている男、どう見ても人攫いでしかない。
何かないかな、と思考を巡らせていると、ふとズボンのポケットに入っているものを思い出した。
少女を片手で抱き、ポケットを弄り、それを取り出して少女の目の前に掲げた。
「……食べる?」
「ふぇ……」
それは、一つ前の配達先で貰った棒付き飴だった。
本来はサーシャにあげるものだったが、致し方ない。
少女は泣き叫ぶのを止め、眼前の飴をじーっと見ていた。
(どうだ……?)
少し試しに飴を右に動かしてみる。
すると、涙が少し溜まっている少女の目も、右に動く。
上に動かすと、少女も上に。
左に、左に。
「……欲しい?」
「…コクン」
「じゃあ…はい、どうぞ」
「……」
アレンが飴に被せてある紙を外し差し出すと、それをおずおずと受け取りパクッと咥えた。
するとその途端にまたもやポロポロと涙を流し始めた。
「えっ、ごめん!美味しく無かったかな?」
そう聞くが少女は顔をぶんぶん横に振った。
どうやら飴のせいで泣いたわけでは無いようだ。
「じゃあ、どうしたの?」
「ひっく……っ……おかあさん…が」
「お母さんが?」
「お、かあさんがっ……しらないひとっ、に……つれてっ、いかれちゃ、ったの……!」
少女のその言葉を聞いて、アレンの纏っていた空気が真剣なものに変わった。
「その話、詳しく聞かせてくれるかい?」