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最凶に育てられた最強は配達業を営みます。(魔王の息子は革命家 改編作)  作者: 山源太郎
第一章 白銀髪の少女の想い
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生まれる亀裂

今回短めです、すいません。

 充分に再会の喜びを噛み締めた後、取り敢えず今日の所は解散する事になり、アレンとマリアーナ、リアは『麦と葡萄の女神亭』に向かっていた。

 辺りは既に闇に包まれ月灯りだけが辺りを照らしている。

 アレンが出している【ライト】が無ければ薄暗くしか見えず、歩く事もままならない。

 マリアーナ達が自宅に戻らないのは、サルナンテがマリアーナの行方を探す筈だから自宅に戻るのは危険というアレンの意見からだった。


 ──ある程度落ち着いてから戻れば危険も減るだろうし、リアとまた離れ離れになるのは嫌でしょう?


 アレンがそう言うと、マリアーナは渋々ではあったが了承した。

 やはり愛娘とまた離れるような事にはなりたくないのだろう。

 因みにリアはアレンにおんぶされて、スヤスヤと眠っていた。


「あの、アレンさん。本当によろしいんでしょうか?」

「気にしないでください。僕達【想いの為の配達屋(フォアソウト)】はアフターサービスも行っていますから。これも依頼の一部ですよ」

「でも私達、お金とか全然持っていませんし……」

「お金?そんなもの要りませんよ」

「じゃあ何を払えば……?」

「何も」

「そ、それじゃあ唯の無償活動じゃないですか!」

「ええ、唯の自己満足ですよ。だから何も要りません」

「あんな危険な事までしてくれたのに……どうしてこんな事をしているんですか…?」


 あれだけの事をして何も要求しない。

 マリアーナはそれが自己満足だけが理由に思えなかった。

 だから、聞いた、しつこく聞いてしまったのだ。


「……僕は、立場やその存在だけで理不尽に、残酷に蹂躙されることを放っておけないだけです。人の本質も理解しようとせず、そういう存在だから殺す。そんな事許されていい訳ない。……巫山戯るな」

「……っ!?」


 マリアーナは再び何かを言おうとして──言えなかった。

 その時のアレンの表情はマリアーナ達に見せていた優しい顔では無かった。

 それは感情も何も無い、汚いゴミを見るような侮蔑の含まれた冷徹な表情をしていた。

 その表情に、思わず背筋が凍った。

 マリアーナは一瞬アレンのことが誰だか分からなくなっていた。

 空気が重く、息苦しい。まるでドロドロの沼にでも身体を突っ込んでいるようだった。


「マリアーナさん?」

「きゃっ」


 突然アレンに声を掛けられたマリアーナは、思わず軽く飛び退いてしまった。

 マリアーナのその反応を見て、アレンは申し訳なさそうに笑った。


「はは……すいません、顔に出ちゃってましたね」

「あ、いえ、その……」

「ああ、いいんです。気にしないで下さい。ちょっと感情が表立ってました、普段は気を付けてるんですがどうも仕事が終わった後でコントロールが出来てませんでした。怖がらせてすいません」

「い、いえ……こちらこそ不躾な質問をしてしまってすいませんでした」


 そういったアレンの表情は、既に先程の様な冷徹さは、全く無かった。

 しかし、マリアーナの中にはまだあの表情を見た時の驚きと恐怖が残っていた。


 二人の間に沈黙が流れる。

 アレンは申し訳無さが先立って、マリアーナはアレンに対する残り粕のような恐怖で、お互いに話し掛けられないでいた。

 しかし、その沈黙も長くは続かず、『麦と葡萄の女神亭』に到着した。


「おかえり、アレン君」

「ラル、起きてたのか?」


 中に入ると、この店の従業員のラルが待っていた。

 流石に時間が時間なので格好は長袖シャツとズボンタイプの寝間着を来ていた。

 髪の毛はまだしっとりと濡れていて、とても艶かしい雰囲気を纏っていた。


「流石に新しいお客さんが来るのに誰も出迎えないのはどうかと思って待ってたの。その人がそうかな?」

「うん、こちらマリアーナさん、それで此方がその娘さんのリア」

「あの、今回は本当にありがとうございます。こんな私達を泊めて頂けるということで…」

「そんなに畏まらないで下さい。今の私は従業員でも無いですし、それにお礼を言うならアレン君に」

「アレンさん、本当に何から何までありがとうございます」

「気にしないで下さい。仕事ですから」


 アレンはマリアーナにいつも通りの決まり文句を返した。


「それではお部屋ですけどそこの階段を上がって一番奥の部屋、二一〇号室です。当店にはお風呂もありまして、何時でも利用出来ますのでお好きな時間に入って下さい。朝食は朝七時から八時の間に摂りに来てもらうのが通常ですが、明日は別に何時でも構いません。昼食は食堂に来て好きな物を頼んで下さい。代金は必要ありません、全てアレン君持ちですので。」

「それは幾ら何でも…」

「マリアーナさん気にしないで下さい。アフターサービスですから。どうしてもと言うなら【物品配達屋キャリシンク】の方をどうぞご贔屓に」

「折れてはくれないんですね……?」

「はい、仕事ですから」

「……分かりました。そこまで言うならお言葉に甘えさせて貰います」


 マリアーナはアレンが折れないのが判ったのか、不承不承といった様子で納得してくれた。

 普段通りのアレンにマリアーナは安堵したのか、先程までのぎこちなさはすっかりなりを潜めていた。

 ラルはその光景を面白可笑しそうに笑って見ていた。


「それではこちらが部屋の鍵になります。ごゆっくり」

「ええ、ありがとうございます」


 マリアーナはラルから部屋の鍵を受け取り、アレンから背負っていたリアを受け取り抱え、宿の部屋に向かっていった。

 完全にマリアーナの足音が聞こえなくなってから、ラルが口を開く。


「アレン君、今回はちょっと甘過ぎない?こんな事までするなんて今まで無かったよね?」

「自分でも判ってるよ。でも今回はちょっと昔の事を思い出してさ……」


 アレンはラルのその問い掛けに言葉を濁す。

 アレンは裏配達の事をエユレとラルには打ち明けていた。

 流石に宿泊させて貰っているのに、危害が及ぶ可能性を話して置かないのは駄目だと思ったからだ。

 それに加えてラルに話しているのは、アレンが一番と言える程、ラルに心を許しているからだっだ。


 今回、アレンがこれまでに無いほど肩入れをしているのは、自分の姿とリアの姿が重なって見えてしまったからだった。

 それはアレンにとって一番大切な記憶(・・・・・・・)であり、アレンの中で最も残酷な記憶(・・・・・・・)でもある。


「昔の事?そういえばアレン君の昔の話聞いた事無いな。ねぇアレン君、アレン君って昔──」

「ラル、ちょっと僕疲れたんだ。そろそろ寝たいんだけど、いいかな?」


 アレンは思わずラルの言葉を無理矢理遮った。

 ラルが一瞬呆けた後、少し眉尻を下げて弱弱しく言葉を続ける。


「え?あ、ごめん……お仕事して来たんだから、疲れてるよねっ。ごめんね?話し込んじゃって」

「そんな事無いよ。僕もラルともっと話したいんだけど…今日はもういいかな?」

「うん、気にしないで。ゆっくり休んでね、アレン君」

「うん、ラルもね。それじゃあ、お休み」

「お休み」


 そして、近い様で離れているアレンの人と人との距離は、この自身の過去を話せない事にあった。

 本当は話したい。でも話すことが出来ない。


(ごめんラル。でも怖いんだ……。僕の過去を話して、皆が僕の事を嫌いになってしまう(・・・・・・・・・)のが……)


 心の中でアレンはラルに謝罪をしながら、自分の部屋に行く為にゆっくりと階段を上がっていた。

 取り残されたラルは、右手で左肘の辺りをグッと掴みながら悲しげに顔を歪めていた。

 ラルは気づいていた。アレンが自分達と一定の距離を置いている事に。

 でもそれが何故なのか、理由までは判らなかった。


「アレン君……どうすれば、どうすれば君は……」


 悲しそうに呟いたラルのその言葉は、誰も居ない食堂に木霊して、儚く消えた。




 ────────────




 裏配達を終え次の日。


「ふぁ〜あ」


 アレンはいつもよりも早めに『麦と葡萄の女神亭』の一室で目を覚ました。

 身体の節々を伸ばしながら、頭を覚醒させていく。

 服を着て、そろそろ下に降りようと思ったところで、アレンは昨日のラルとの会話を思い出した。


「うわぁ……ちょっと気まずいな……」


 あんな態度を取ってしまった後では顔を合わせづらい。

 しかし、エユレに迷惑を掛ける訳にはいかないし、どの道外に出る時に嫌でも顔を合わせなければならないのだ。


「行くしかないか……」


 アレンは重い腰を持ち上げ、億劫な気持ちに苛まれながら、エユレの朝食を食べる為に部屋を後にした。




 下に降りるとまだ早朝の為なのか、客はそんなに居なかった。


「アレンさん」


 アレンがいつもの定位置であるカウンターに腰掛けようとすると、後ろから声が掛かった。

 振り返ると其処にはマリアーナとリアが手を繋いで立っていた。


「マリアーナさん。おはようございます、早いんですね?」

「ええ、昨夜はぐっすり寝られて早く目が覚めたので。ありがとうございます、アレンさん」

「ぐっすり寝られたのは僕のお陰じゃなくてこの宿のお陰ですよ。何か不満があれば遠慮無く言ってください。僕からエユレさんに伝えますから」

「そんな、不満なんて無いです。朝食も戴きましたけどとても美味しかったですし」

「それは良かった。まあ暫くはゆっくりしてください、色々あった後ですから」

「そうですね、そうさせてもらいます」


 アレンがマリアーナと言葉を交わしていると、不意に左脚にポスッと軽い衝撃を受けた。

 下を見ると満面の笑みでアレンを見つめるリアがいた。


「おにいちゃん、おはよう!」

「おはよう、リア。朝から元気いっぱいだね」

「えへへー」


 元気良く朝の挨拶をしてきたリアに心が暖かくなる。

 アレンが朝の挨拶を返しながら頭を撫でて上げると、嬉しそうに目を細めた。

 どうやらリアは頭を撫でられるのが好きなようだ。


「こら、リア駄目でしょう?アレンさんはこれから朝ご飯を食べるんだから邪魔しちゃいけません」

「じゃあリアもいっしょにたべる!!」

「リアはさっき食べたでしょう?ほら行くわよ?」

「えー」


 自分の意見が通らず、ぶぅと頬を膨らませるリアを見て思わず笑みが零れる。


「マリアーナさんまだ人は少ないですし少しお話ししませんか?勿論、リアも一緒に」

「ですが、いいんですか?お邪魔だったりとか…」

「そんな事無いですよ。食事は賑やかな方がいいですからね」

「やったー!」

「ではお言葉に甘えて…」


 三人は左からアレン、マリアーナ、リアの順に座った。


「あら、アレンくんおはよう。今日は何にするの?」

「そうですね…じゃあお腹空いてるのでステーキ定食で。それとリアとマリアーナさんに何かデザートをお願いします」

「ふふっ、優しいのね。判ったわ、すぐに用意するわね」


 アレンに気づいて近寄ってきたエユレに自分の朝食と二人のデザートを頼んだ。

 するとマリアーナがアレンに慌てながら話し掛けてくる。


「ちょ、ちょっとアレンさんっ。そんなデザートとか戴けませんよ!」

「気にしないで下さい。僕の気紛れですから有り難く受け取っておいて下さい」

「で、でも……」

「マリアーナさん、リアを見てください」


 アレンがそう言うと、マリアーナはリアの方を一瞥する。

 其処には嬉しそうに、やった、デザート、デザートと呟いているリアの姿があった。


「あんなに嬉しそうにしているのに今更止めたら可哀想ですよね?」

「うっ……」


 やはりマリアーナは自分の娘の事となると一歩引いてしまう性格のようだ。

 リアがいなければこうも簡単に揺らぎはしなかっただろう。


「此処に居る間は好きな物を食べて過ごして下さい。それ位しても罰は当たりませんよ」

「……はぁ、分かりました。お言葉に甘えさせてもらいます」

「はい」


 またもやアレンが折れない事を悟ったマリアーナは渋々了承した。




 それから運ばれて来た料理とデザートを三人は堪能した三人は『麦と葡萄の女神亭』を出て、配達屋の仕事場に来ていた。


「あの、アレンさん。今日は一体何を?」

「今日はこれからの事を話そうと思ってついて来てもらいました」

「これからの事、ですか」

「そうだヨ。マリアーナさん達の為の話し合いダ」

「え?」

「早かったね、フェイ、アリエス」

「あれくらいの仕事量など雑作も無い」


 マリアーナと話をしていると何時の間に現れたのか、フェイとアリエスが入口付近に立っていた。

 二人はアレンに頼まれて先に仕事を終わらせて貰っていたのだ。

 因みに朝が弱いアレンはそんな早朝には起きられないので、他のことで埋め合わせをするようになっていたりする。

 仕事を早速終わらせた二人は、アレン達の向かいの席に腰掛ける。

 それを確認したアレンが話を切り出した。


「それじゃあまずはフェイ、頼んでいた件は?」

「ちゃんと調べたヨ。今サルナンテ・ナチリアは人を雇ってマリアーナさんを血眼になって探してるみたいだヨ。相当マリアーナさんに執着してるみたいダ」

「やっぱりか。しつこい男だなあ。アリエスの方は?」

「私も町の人達に声を掛けて聞いてみたが、似顔絵を見せられて知っているか否かの質問を受けたという人が居た。恐らくそれもサルナンテに雇われた者だろう」

「あ、あの……」

「ん?どうかしました?マリアーナさん」


 アレンがフェイとアリエスに調査して貰った報告を受けていると、隣に居たマリアーナが眉間に皺を寄せ申し訳なさそうに声を掛けてきた。


「あの、私皆さんに物凄く掛けてませんか?もしそうだったら私、あの宿を出て──」

「マリアーナさん、それは駄目です」


 マリアーナが全てをいい終える前に、アレンがその言葉を遮る。

 そう言ってマリアーナを見つめるその目はいつもの優しさではなく、真剣な心情を映していた。


「マリアーナさん、僕は昨日も言いましたよね?貴女はまたリアと離れたいんですか?また、リアを悲しませるような事をさせたいんですか?」

「そ、そんなつもりはっ──」

「だったら黙って僕達に護られて下さい。余計な心配を貴女がする事なんて何もありませんから」

「っ……そんな言い方ないでしょう!?…私だって世話になってるからには──」

「だからそれが余計だって言ってるんだよ(・・・・・・・)

「……っ!?」


 突然、アレンの雰囲気がガラリと変わった。

 先程までの労わる様な優しさは微塵も感じられず、態度や口調にも鋭さが現れていた。

 マリアーナはそんなまるで別人のようなアレンの姿を見て、身を強ばらせていた。


「貴女が俺達を心配した所で何も変わらない。目障りなんだよ判らないのか?」

「……」

「それとも何だ?自分がなにか出来るとでも思ってるのか?自意識過剰も大概にしてくれよ。目障りなんだ、そう言うの」

「っ……」

「アレンそれはちょっと言い過ぎじゃないノ?」

「そうだぞ、幾ら何でもそれは言い過ぎだ」

「なんでだ?だって事実だろ?」


 フェイとアリエスがアレンの態度に対して注意をするが、当の本人は聞く様子はない。

 すると唐突にガタッと椅子を動かし、マリアーナが立ち上がった。


「……もういいです、これで失礼させて貰います。助けてくれてありがとうございました、後は自分でどうにかしますので。リア、帰るよ」

「勝手にしてくれ。これで依頼は終わりだ」

「おかあさん、何処に行くの?」

「お家に帰るのよ。こんな所に居たら駄目なの」

「え、でも……」

「いいから。行くわよ、リア」

「ぁ…おにいちゃん……」

「………」


リアがアレンの事を呼ぶが、当人は返事をせず唯リアを見つめるだけだった。

 マリアーナがリアの手を掴み、アレン達の仕事場を出ていく。

 しかし、アレン達三人は決して離れていく二人を追いかける事はしなかった。

 これはあくまでも依頼。

 本来、必要以上の感情の入れ込みは不要なのだ。


マリアーナ達が仕事場のドアを開けて、路地裏を闊歩していく。

 三人が見つめる方向には、ドアが閉まる最後まで、アレン達の方を戸惑った表情で見つめるリアの表情があった。




次の投稿は三日、四日後です。


おまけ


マリアーナが出ていく時。


「……もういいです。リア、行くわよ」

「やだっ」

「いいから!」

「やだぁっ!」

「リアどうして!?」

「おかあさんよりもおにいちゃんといっしょにいたいもん!!」

「なっ!?Σ(´Д`;)」

「さあ、リアはこう言っているがどうするんだ?」

「っ……」


勿論ボツりました。この先の展開が出来ない自信があったので(*´ω`*)


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