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最凶に育てられた最強は配達業を営みます。(魔王の息子は革命家 改編作)  作者: 山源太郎
序章 夜の国に消える三つの影
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プロローグ

 夢を見ていた。

 とても昔の、朧げな夢だ。

 身体を優しく包み込む温かさ。

 優しそうな顔をした二人。

 しかし、その二人の顔は靄がかかった様にぼやけていて、はっきり見ることが出来ない。


 「───」。

 「───」分かるか?パパだぞー。

 ───ふふっ、あなたったらそんなに「───」にデレデレしちゃって。

 ───仕方ないだろ?こんなに愛しく思わせる「───」がいけないんだ。


 二人は恐らく自分の方を見ながら、会話をする二人と、一緒にいる時間がとても幸せに感じた。

 そんな夢の中の、その温かく幸せな時間を、永遠に過ごしたいと思った。


 しかし。


 目の前にあの優しそうな二人とは似つかない人達が現れた。

 その人達は自分を見て、気味が悪そうな顔をして、指を指しながら言った。


 ───悪魔だ!!

 ───呪われてるぞ!!

 ───殺せ!殺せ!!


 人々は罵詈雑言を叩きつけ、殺そうとする人までいた。

 しかしその2人は決して自分の事を離さなかった。


 ───大丈夫よ、「───」。

 ───俺達が護ってやるからな。


 その2人の言葉、熱、想い、全てが温かった。

 悪いモノから護ってくれていた。

二人がいれば大丈夫だと思っていた。


 けれど。

 その温かさは失われてしまった。


 ───「───」!!「───」!!

 ───くそ、離せ!!「───」を返せぇ!!


 怖い顔をした男が二人の温もりを奪った。

 大好きな二人の声が遠ざかっていく。


 必死に泣き叫んでいたが、男は構わずに2人を引き離した。

 そうして、いつの間にか1人になっていた。

 周りは壁、身体には布が巻いてあるだけだった。

 真っ暗な空に冷たい風。

 それらが心を、身体を、全てを急激に冷やしていった。


 ───さびしいよ、こわいよ。あのふたりにあいたい。あのあたたかさがほしい。


 まだ喋る事が出来なかった。出来るのは真っ暗の中で、泣き叫ぶだけ。


 ───だれか、だれか。


 ただ必死に。あの暖かな温もりを求めて、強く願った。


 ───たすけて。と。


 その瞬間、身体中が温かいものに包まれた。


 ───なんだろうこれ、あったかい。やさしくてあんしんする。


 感じた温もりに、いつの間にか泣き叫ぶのを止め、ちいさな寝息を立て始めていた。






「──、──」


 何か聞こえる。聞き覚えのある声だ。

 その声を聞いてるうちに、さっき迄どっぷりと底に沈んでいた意識が浮上してくる。

 闇しか無かった世界に光が射し込んでくる。


「───、──ろ!」


 声が聞こえる光に向かって手を伸ばす。

 そして、光の根源であろう場所に触れた瞬間───。



「おい起きろ!起きるんだ!」

「……ん?」


 意識が夢から現実に引き戻される。

 寝惚けたままであたりを見渡すと、月の光によって薄らとだが、家屋が見える。

 段々と意識が覚醒していき、彼は今いる状況を思い出した。

 此処は高くそびえ立つ城壁の上。

 其処で自分は仮眠を摂っていた所だった。


「全く、何時まで睡眠を摂っているのだ。もう直ぐ時間だぞ?」

「...時間?」


 ブラウン色の髪を背中まで伸ばした彼女に言われて、自分は懐をまさぐり、時計を取り出す。

 短針は頂点の印から十一個目の印をもう直ぐ指そうとしていて、長針は十二個目の印を指していた。

 つまり、十時になる五分前だ。


「うわ、やばっ。何で起こしてくれなかったんだよ」

「何度も名前呼んで身体も揺すったけど目を覚まさなかったのだ。爆睡し過ぎだ」

「まじか...ごめん」

「もう起きたんだからいい。遅れた訳でも無いからな。まあ三分前になったら魔法で焼いてたがな」


 危なかった。と内心で冷汗をかいていた。


「まあまあ、疲れてたんでショ。その変にしといてあげなさいナ」


 すると、突然現れた黒髪のショートの女性がフードを脱ぎながら歩み寄ってきた。


「来たか。首尾は?」

「上々」

「流石だな」


 再び時計に目を落とす。

 長針は既に一つ目の印に到達する1歩手前だ。


「よし。それじゃあ準備はいいな?」


 二人の方に目を向けると、二人とも力強く頷いた。


「───それじゃあ行こう」

「「「想いの為に」」」


 城壁の上に強風が吹いた。

 三人の来ているマントが風に靡いて音を立てる。





 そして風が止んだ時、其処にはもう三つの影は無かった。

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