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Ardent Armada  作者: 剣崎 宗二
Chapter 3「首都」
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6話「Dragon over the Mountains」

「……で、主砲を何に向けて発射したの?」

「別に主砲を発射したわけではなく、ただ――」

「嘘つかないで」

 ぴしゃりと言葉を遮る千瀬。


「あたしはこのギルドでは一番新入りだけどさ、それでも長い間、一緒に戦ってきたつもりよ。主砲発射だって、一緒に戦っている間に何度も見てきた。…オーエン、あんたがカスタマイズを重ねたあの砲撃の爆発を、見間違えるわけがないわよ」

「……」

 押し黙ってしまうオーエン。後ろの扉が開き、帰還したタクマがそこから出てくる。

「今回の作戦は僕たちで合意した物だ。…できれば、千瀬に動物たちを『根絶』させると言う事をさせないようにね」

「それはつまり、あたしが反対するって思ってたって事?」

「ああ、千瀬は動物が好きだからね――」

 パン。平手打ちが、タクマを打ち据える。


「――あたしも、甘く見られたものね。そこまで物分りが悪いと思われてた?」

 反応できなかった。余りにも意外だったから。

 横を向いたまま、タクマは千瀬の言葉を噛み締める。

「あたしにだって分かってる。若しもあたしたちが去った後に、また甲獣が出ればどうなるのか。…できれば動物は傷つけたくない。生態系は壊したくない。けれど、人の生活が。命が――天秤に掛かってるのは、分かってるつもりだよ」

 深く息を吸い込む。

「あたしが一番怒っているのは、あんたたちがそんな理由で、タクマの命を危険に晒した事。……オーエン、あたしが戦おうとした時に言ったよね? 死んじゃうとどうなるか分からないから、リスクは避けるべきって」

「ああ」

「あたしが一緒に戦っていれば、もうちょっと楽になってた。安全になってた。…せめて、相談はして欲しかったかな」

「実際僕は特に問題なく、帰って来れたんじゃ――」

「そういう油断が一番危険なのよ!」

 タクマの反論に、声を荒げる千瀬。

「良く話に聞くんだ。自信がついた狩人仲間ほど、帰ってこれる確率は少ないって。山の怖さを忘れた狩人は、山に飲まれるって。…若しも、一つ運が悪くて。下で大型が出てきたらどうするの?」

「その時は逃げて――」

「若しもそんなの六体に囲まれていたら?」

「……」

「…あたしが居れば、どんな状況でも切り抜けられるとは言わない。けど、少なくとも少しは安全になると思う。…それとも、あたしはそんなに頼りにならない?」


「……確かに、俺たちは千瀬を甘く見ていたかも知れんな」

 苦笑いして、オーエンが立ち上がる。

「すまなかった。仲間を信じ切れなかった」

 頭を下げる。理が己にないと見れば、すぐさま素直に謝るのも、彼の性格の一環である。

「ん、いいのよ。分かってくれれば」

 パン、と千瀬がその頭を叩く。

「分かって欲しかったのは、あたしだってこのギルドの一員って事。…隠し事とかはしてもらいたくない。楽しい事も悪い事も、一緒に分かち合うべきだと思うんだ。特にこんな状況になった以上はね」

「…それは僕の責任でもあるね。…申し訳ない。考え付くべきだった」

 タクマもまた、頭を下げる。本来はリーダーである自分が、こういった人間関係を処理すべきなのだ。…ただ、どうも未だ、こう言う事は苦手だ。

「ん、いいのよ、分かってくれれば。…あたしだって、このギルドの一員だから。……若しもタクマがそう決断したなら、あたしはきっと、それに従うよ。…だから、隠し事は、これで最後にして」

 見つめてきた千瀬の目を真っ直ぐ見返し、タクマは頷いた。

「あん?皆、何をやってんだ?」

 そこへ、一歩遅れてACが帰還する。その顔は、何が起こったのかを理解しているようでもあり、質問はわざとらしく聞こえる。

 それに対し、タクマはただ、苦笑いを返すだけであった。


「そろそろあたしは寝るけど、皆はどうする?」

「タクマ、お前さんはさっさと寝るべきだな。『圏制』で体力を消耗しただろう」

「そうさせてもらうけど……オーエンは寝ないのか?」

「ああ、まだ本日の戦闘データの整理と、砲撃プログラムの書き換えが残っている」

 ――『Ardent Armada』に於いては、実に多くの要素が、プレイヤーによるカスタマイズが可能となっている。戦艦の自動砲撃もその1つだ。

 メンバーの多いギルドであれば、常に戦艦の全砲台に人を付け、手動で射撃する事が可能となっているが、『ウルフパック』のようにメンバーが少ないギルドはそうはいかない。故に、各砲台の動作をプログラムし、どのような状況が起こった時にどのように狙いをつけるか――と言った事がプログラムできるようになっている。

 これならば、いざ戦闘となった時。敵を指定して、ボタン一つ押すだけで、事前に組んだプランに沿って敵の回避ルートを封じるように援護射撃できたりするのだ。

「生物系の敵の回避パターンに対応する為のプランも組まないといけないしな――」

「そう言って、今日も徹夜するつもりなんでしょ?」

 一瞬の間。

「――ああ」

「ダメだよ! 昨日も徹夜で寝てないじゃん! プログラムなんて明日明日! 今すぐに空飛ぶ敵の大軍が襲ってくる訳じゃないでしょ?」

「だが、それまでは誰かしら周囲を警戒しないと――」

「レーダーや接近警戒は動いているでしょ?」

「いざと言う時誰も起きなかった、では話にならん」

「なら俺がここで寝りゃいいんじゃね?」

 艦長席を指差したのは、AC。

「てめぇが何日も寝てねぇと、判断にミスが出るかも知れねぇ。そりゃごめんだ。 …なら、俺がここで寝りゃいい。今日はあんまし戦ってねぇから疲れてねぇし、気配がありゃ一瞬で起きるからな」

「……そうだったな」

「あたしも明日早起きするから、そうと決まればさっさと寝る! 後、ちゃんと風呂には入ってよね。 ゲーム時代はどうでも良かったけど、ここじゃ入らないと臭くなるよ!」

「はいはい。…母親のようだな」

「母――っ!? あたしそんなに年取ってる!?」

 そう言って、苦笑いしながら自分の部屋のほうへと退散するオーエン、それを追いかける千瀬。それに続くようにして、開いた自動ドアから出ようとしたタクマが振り向き――

「…ごめん、後は任せた」

「ああ、任せとけって」


 扉が閉じた後、深く艦長席に腰掛けるAC。

「ったく…どいつもこいつも、背負い込みすぎなんだよ」

 そして、静かに目を閉じた。


 ――同時刻。

 アルタンの村で、リンシーは母親の隣で、眠りに付こうとしていた。

「あんたを助けてくれたあの人たち…泊まっていきゃいいのにね。村の外に泊まる場所があると言ってたけど、どんなもんなんだろうねぇ」

「あたし…行った事あるよ。…空飛ぶお城…」

「空飛ぶ城、ねぇ……あんた、夢でも見てたんじゃない?」

「確かに行ったんだ、嘘じゃないよ…。あそこから、お兄ちゃんの機兵に乗って、飛び降りてきたんだから」

「行商人が話してた、お姫様と王子様の話の聞きすぎなんじゃないのかい? …危険な目にあったばかりなんだから、今日は早く寝て休みなさい」

「はーい……ほんとに…行ったんだから…」


--------------------------------------

「んぁ……?」

 ベオウルフの艦長席で、起き上がるAC。

「……ったく、長年の習慣ってのはどうしても変わらねぇもんだな。こんな時間に起きっちまうってよ」

 腕のデバイスに表示された時間を一目見て、上半身を起こす。

 まだ六時前だ。現実世界でも夜にやる事があり、寝る時間が遅くなる時もあったが、その場合でも、この時間には必ず起きてしまう物だ。

 起きて周囲を見渡すと、特に変わらない風景。機械に満ちた、空中戦艦ベオウルフのブリッジであるからして、それも当たり前か。

「あ、もう起きてたんだ、AC」

 自動ドアが開き、入ってきたのは千瀬。

「ああ、今起きたばっかだけどな。…こんな時くれぇは、いい朝飯が欲しいもんだが」

「それくらいならあたしが作ってあげるよ」

 へっ?と言った表情に、ACの顔が変わる。

「…なによ。あたしだっていつも狩りの後食べ物は自分で作ってるんだからね?」

「そういうんじゃねぇよ。材料は……」

 いくら千瀬に料理が出来ると言っても、倉庫にあるあのカプセルから、味がまともな料理が出来るとは流石に思わない。

「ああ、それなら心配要らないよ。……昨日村長さんから、少し貰ってきたし」

「貰ってきたって……甲獣の肉をか?」

「うん」

「ちゃっかりしてんな…」

「まぁ、そのお陰で朝食食えるんだから、いいじゃんいいじゃん」

「まーそうだな。…そんじゃ、お手並み拝見と行こうか」

 料理の支度を始める千瀬を見ながら、思い出そうとする。

 ――まともに朝食を取るのは、もう何ヶ月ぶりだろうか。それが――閉じ込められたゲームの中になるとは、皮肉な物である。


「うん? もう食べ始めていたのか」

 ブリッジ少し後方にある、ミーティングルーム。入って来たオーエンがテーブルの上に並べられた肉にかぶりつくACの姿を見て、そう漏らす。

「あん…」

「今食べ始めたばかりだよ。タクマは?」

「風呂に入っている。暫く掛かりそうだからな…先にこっちを見てこようと思ったのだが」

 なるほど、と千瀬は思う。確かにオーエンの髪は乱れ、トゲトゲとしている。起きたばかりなのだろう。

「ふむ。これが甲獣の肉か」

「ああ、そう言えばオーエンとタクマは食べれてなかったね。安心して、あたしがしっかり作ってあげる」

「それは……楽しみにしていよう」

 隣で肉にかぶりつくACの様子を見れば、これは決して不味い物ではないと言う事は良く分かる。

「はい、出来たよ」

 差し出される肉。それは薄く、切られていたが……ナイフ、フォークなど、食事に使うような道具は一切ついてきていなかった。それもまた当然か。『Ardent Armada』内に於いて、このように食事を取る必要はなかったのだから、それ用の道具があるはずもまた、ない。

「んなもん、手掴みで食えばいいだけじゃねぇか」

 肉をつまんで口中に放り込むACを見て、今一度苦笑いを浮かべるオーエン。

「…仕方あるまい」

 彼もまた、口内に肉を投げ込んだ。


「それで、昨日得られた情報は?」

 風呂から上がったタクマが、食事を終えた後。皿を片付け、『ウルフパック』のメンバーは、再度ミーティングルームに集まっていた。

「付近の大きな街と…この国について。得られた情報はそれくらいだぜ」

「聞かせてくれないか」

 タクマが促すと、ACは、一枚の手書きの地図を取り出す。

 それは簡素極まりない物であったが、大まかにはまだ判別できるレベルであった。


「俺たちが居るこの国は、ライディア。村の人はそれ以上は知らない…ま、殆ど国から援助やら管理がされた事はねぇ。でなきゃ、甲獣が出たらそっちを頼ればいいだけの話だからな。…国に取っちゃ、資源のない山奥の村なんて、気にもならないんだろうよ」

「…酷い話ね」

「ま、それでも山の幸を求めて、商人はやってくるけどな」

「それで他所から来る商品と交換している訳か」

 ベオウルフから撮った、村の写真をスクリーンに映したまま、オーエンが自分の顎を撫でる。

「ま、そんな感じだ。なんで、とりあえずその商人から貰った地図を写させてもらった」

 ACが腕のデバイスを操作すると、スクリーン上に映し出されている物が、一枚の地図に変わる。

「撮影機能があるってのも便利なもんだ」

「ゲーム内で『スクリーンショット』を撮る機能だろうな。こう変わってるのか」

 その上の箇所をACが指差す。

「ここが、ライディア首都、ラール…って事らしい」

「けど、この地図の出来あんまりよくないから、そのままじゃ――」

「心配は要らんよ、タクマ」

 タクマが振り向くと、オーエンの顔には笑みが。

「大体の距離感、それと川等の参照物があれば十分。高度を上げて空中から写真を撮影して比べれば済む事だ」

「毎度ながら、解決法を考えるのが早いな?」

 苦笑いするタクマに、オーエンはくいっと眼鏡を押し上げる。

「それが俺の仕事だろう?」


「そう言えば、あの甲獣については、他に何か情報は来てなかった?」

 艦長席に座ったまま操作を続けるオーエンを余所目で見ながら、タクマが問いかける。

「ああ、あれね、村長さんも余り良く知らないんだって。村長さん曰く、一度目に襲われた際は成すすべなく、村丸ごと逃げるしかなかったって。その後、商人から、首都を襲った甲獣が『機兵』と呼ばれる巨大な鉄の巨人によって撃退されたと聞いたのを、リンシーからあたしたちの操作するアーデントの話を聞いた事で思い出したって」

 その言葉に、オーエンの手が止まる。

「最初に聞いた時から違和感が少しあったのだが…それはつまり、俺たち以外の『プレイヤー』がこの地に来ている可能性もある、と言う事だな?」

 一瞬にして、全員の動きが止まる。

「…確かに、居るかもしれない。居れば情報交換したいかな。若しかしたらこの世界から抜け出す為の方法の手がかりが掴めるかも知れない」

「…そうだな。若しも相手が友好的ならば」

「どう言う事だ?」

 オーエンの言葉に僅かながらの棘を感じたタクマが聞き返す。

「この世界では、必ずしも元の世界の『法律』が尊守されるとは限らない、と言う事さ」


 ――と、その瞬間、警報がベオウルフのブリッジに鳴り響く。

「え、何、どうしたの?」

「何か異常な物を探知したのだろう」

 オーエンが艦長席に駆け寄ると、ピッ、とパネルにタッチする。

 レーダー図が展開される。その上では、光の点が、段々と。少しずつ、中央に近づいてきている。

「相当サイズが大きくないかこれ? …オーエン、カメラの情報は出せるか?」

「この距離だと見え難いが……ほら、これが映像だ」

 ピッピッと、何度かパネルを叩くと、ブリッジ前方の窓の半分ほどに、映像が映し出される。

 そこにあったのは――

「…ドラゴン?」

「こんなタイプの敵キャラクター、Ardent Armadaにあったっけ?」

「機械タイプのヤツならいたが、こんな生物タイプの物は無かったぜ」

「とりあえず方向転換するかな。…アレがただの通りすがりなのか、それとも僕たちを狙ってきているのか、それで分かるからね」

 タクマの言葉を聴き、操作に取り掛かるオーエン。周囲360度……天井、そして床までもが、外の景色に変化する。

「うわっ!? 何度経験してもこれだけは慣れないなぁ」

 かくん、と足が曲がりそうになる千瀬。

 それにフフッ、と笑いを漏らすオーエン。

「ったく、やる前に言ってよ!」

「すまんすまん」

 そしてタクマに目線を向ける。まるで、『どうする?』と聞いているかのように。


「若しもただの通りすがりなら、やり過ごす」

「若しもそれが敵なら?」

「…迎撃するだけだ。 ――千瀬、甲板に出てくれるか? 砲撃ではカバーできない状況もあるかも知れないから」

「りょーかい。とりあえず用意しとくよー」

 そう言うと、後ろの扉だった筈の場所から、彼女は自らの機体のある格納庫に向かう。


「やっぱり着いてきてるな」

 方向を転換し、別の方に進んでも尚、スクリーン上のドラゴンは、彼らの方へと向かってくる。

 それどころか、距離が段々と近づいている。速度の差があるのだろう。

 そしてある程度距離が縮まった所で――

「うわっ、撃ってきやがった!?」

 スクリーン上に写るのは、巨大な火球。高速で向かってくるそれを、速力で既にドラゴンに劣っていたベオウルフが回避するのは難があった。

 然し、次の瞬間。

「ったく、いきなり!?」

 銃声と共に、空中で火球が爆発する。

「相変わらず正確な狙撃だな」

「へっへー、どんなもんだー!」

 自身の機体――『アルティア』の中で、スコープを覗きながら、どうだ、とでも言うような自慢げな表情を浮かべる千瀬。


 ブリッジでは、決断を問うように、オーエンがタクマの方に目線を向ける。

「仕方ない。 …攻撃してきたからには迎撃しないとね。――千瀬は迎撃! でかい物だけでいい。オーエンはシールド展開して、砲撃の準備!」

「了解した」

「はいよー!」

 次の火球が飛んで来る。また銃声と共に爆発する。

 流石に遠距離だけでは無理だとドラゴンも悟ったのか、更に翼を羽ばたかせ加速。急速に接近する。

「自動迎撃プログラムの設定はまだ完了していない…やはり、昨日徹夜してでもやっておくべきだったかな」

 苦笑いする。だが、直ぐに頭を切り替える。やらなかった事を後悔しても、仕方の無い事だ。

「右舷バルカンで迎撃するぞ! AC、準備出来たか?」

「おうよ!」

 回答したACが居たのは、艦の下方にある部屋。その部屋に設置されていたのは、無数の、前方にスクリーンが設置されたパイロットシートの様な物。

 そのシートの1つに座り、両側のトリガーを握る。

「迎撃程度、手動でやりゃいいだろ…繋げてくれ、オーエン」

「了解した」

 次の瞬間、ACの目の前に映し出されたのは、ベオウルフに接近してくるドラゴンの姿。

「よっしゃ!オラオラオラオラァ!」

 トリガーを引くと、振動、爆音と共に、画面に映し出されるは無数の弾丸。ベオウルフ右舷の機関砲と『接続』されたそのシートから、砲を遠隔操作し、弾幕を張るAC。

 飛来する弾丸を左右に回避し、ドラゴンが口を開いて火炎弾を撃とうとした、その瞬間。

「はいはーい、そこまで!」

 銃声。一発の銃弾が、大きく開いたドラゴンの口の中に飛び込む。直後、血を口から吐き。ドラゴンが落下していく。


「これは…何と言うか…」

『意外と呆気なかったわよねー』

 拍子抜けした表情を、ほぼ全員が浮かべていた。

「…砲の発射用意もしていたのだがな。結局使わずに済んだと言う事か」

 溜息を付きながらオーエンが周囲のスクリーンを消していく。壁が、外の景色ではなく、普段通りの無機質なそれに変わる。

「レーダーにも反応はないの?」

「ああ」

「それじゃ千瀬、戻ってきて良いよ」

「りょーかい。お疲れ様ー」


「タクマ」

 通信が切れた直後。オーエンの声に振り向く。

「ちょっと降りてもらっていいかね? 戦利品の回収だ」

「あー、そうだったね。じゃあちょっと紫狼牙で行ってくる」

 そうしてタクマが出て行った直後。パネルを操作したオーエンの目の前には、望遠カメラに映った、山の岩壁に落下し、叩きつけられたドラゴンの無残な姿があった。

「……敵の実力を測るというのも、難しい物だな」

 ゲームだった頃のArdent Armadaには、敵の強さの目安として、大体のレベルを表示する機能があった。

 それがない今、予測しなかった強敵の出現によって、自分たちの安全が脅かされないか――オーエンの心に、一抹の不安が過ぎった。

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