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Ardent Armada  作者: 剣崎 宗二
Chapter5「妬みと、危機と」
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19話 「Hunter for Blood」

久しく動かせなくて申し訳ございません。

実生活に関わる諸事情からこの小説を動かせなくなっておりましたが、久々に時間とモチベが動きましたので。

 ――夜は静かだ。こと、この世界に於いては。

 だが其れとは裏腹に、遠くに見える屋敷では、何らかのパーティーでも行われているのか、明かりが漏れているのが見える。

 あれも光の魔法の賜物なのか、そう考えながら――タクマは森の中に着陸した。

「AC、反応はここら辺だったか?」

『ああ。一瞬だけだったから恐らくすぐに範囲外に出たんだろうが……』

「了解、探してみるよ」

 そう言って、タクマはスキル「圏境」を展開する。

 ――範囲内に、反応はない。


「こちらもないようじゃな――」

 光の鳥が、四方へと散る。

 一緒に降下したアレクシアも、探索の魔法を使用している。


「…外れかな…?」

 スキルを維持し続けるのは得策ではない。アレクシアの魔法とて、使い続けられる限度があるだろう。

 一旦『ベオウルフ』へ帰還しようと考えた、その瞬間。

「居たのじゃ!」

 即座に振り向き、アレクシアの居た方に、タクマは向かう。


----


(「容態は安定してきましたけれども――」)

 腕時計型のデバイスに表示された、各種数値に目を通していく。

 タクマたちは知識が無い故に、治療カプセルから出力されるさまざまな数値をあまり詳しく検討した事はない。

 だが、研修医とはいえ、医学を学んだ事があるサラには、表示される数値の意味の殆どが明確であった。

「……」

 先ほどの口論中の、タクマの態度を見れば。このチームの人間が如何にオーエンに多大な信頼を置いていたかは分かる。

 そして、自分のせいでオーエンが死に瀕している事で、飛び出していった千瀬の気持ちも、サラには理解できた。


 降りて行ったタクマたちは、できるだけ穏便に千瀬を止めると言っていた。

 けれども、実際に一度、彼女と会ったACは、どこか本当にそれが出来るのか、疑っているようでもあった。


 ――まだ出会ってからそれほど時間は立っていない。

 けれども、『ウルフパック』の面々は、自分を助けてくれた。

 戦闘力もない自分を、仲間として扱ってくれた。


 医療にかかわる人間として、神頼みなどしたくはない。

 けれども――今は、今だけは。叶えてほしいと思った。

(「どうか、ご無事に…」)


 その瞬間、プシュッと、何かが開く音がした。


----


「なぁ千瀬、一旦艦に戻って、ゆっくり話し合わないか? コール伯爵を襲ったら、色々と面倒な事になってしまう」

「……」

 通信への返事は、ない。

 代わりに彼女の機体――『アルティア』の手が、腰に伸びた。

 そこにあるのは、近接戦用の二丁拳銃。

「……!」

 最後まで、「仲間」である彼女が本気で撃って来ることはなかろうと油断していたタクマとは違い、アレクシアの反応は迅速であった。

 鈍重な機体からは想定できない速度でタクマの前に滑り込むと共に盾を斜めに構え、鋭い角度で射撃の跳弾を誘発する。


 ――弾丸は、付近の木を貫通し、真っ二つになるまで吹き飛ばした。


「…っ…!」

 重い衝撃が機体に伝わる。

 精一杯の「技術」を以て受け流した物の、機体の性能差は如何ともし難い。

 再度銃弾が飛来すれば、止められる自信はない。アレクシアの頬を、一筋の汗が流れ落ちる。


「…邪魔をしないで」

 通信から流れて来た声は、まるで氷の刃が如く。

「何があってもあたしは殺す。オーエンに、あんな事をしたやつを!」


「…もう何を言っても無駄みてぇだな」

 影から、高速で拳が突き出される。

 が、それをまるで予期していたかのように、上体を逸らした『アルティア』。

 腕を曲げて銃をその拳の元に向け、一発。


 カン。

 銃撃は装甲に弾かれたものの、その衝撃でACの『グレイヴン』が闇の中から弾き出される。

「…タクマ。もう無理みてぇだぜ。遠慮なく仲間を実弾で銃撃できるほど……千瀬の覚悟は決まってるって事だ」

 1つの目標。

 それへの覚悟がキマった者ほど、戦場で怖い物はない。

 ACは……それをよーく知っていた。


「力づくで止めるしかないのか……!」

 仲間同士での争いは出来るだけ避けたかった。

 だが、このままコール伯爵を襲撃してしまえば、国から犯罪者として指定されるのは必至。

 どの町にも補給に降りれず、如何なる情報もこの一帯では得られなくなる。

 それどころか、この国と協力体制にある国々からですら、同じ対応をされる可能性すらありえる。

 タクマは、静かに握るブレードに、力を込めた。


 その瞬間、千瀬が動く。

 やはり戦闘なしで抜けられればそれで良いのか、AC、タクマの両者から離れる形で、森の中へ紛れ込もうと動き出す。

 だが、中量たる千瀬のアルティアよりも、やはり軽量機であるタクマの紫狼牙の方がわずかに早い。ブースターを吹かし、回り込むようにして、行き先を遮る。

「だから、邪魔をするなら――」

 アルティアの拳銃銃口が、紫狼牙に向けられた瞬間。


「――待ちたまえ」


 聞き覚えある声と共に、巨大な影が落下し、その間を遮った。

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