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とある狩人の追憶記  作者: 白眉万丈
第1章
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第06話

■2015/08/15 誤字脱字の修正、及び表現の一部変更を行いました。

第06話




 バジリスクが立ち去った後、食べ残されたスネークピープルの亡骸を調べたところ、人肌より多少冷たい程度の温もりがあるのに、液体窒素をぶっ掛けられた人体みたいな硬さと断面だった。


スネークピープルたちとの戦いを見る限り、バジリスクには偏向シールドは無いと思われるが、ビデオゲームみたいに視線で石化させたりはしないものの、生物を硬化させる特殊な毒を持っている事が分かった。


もしも俺の風下にバジリスクが居たり、スネークピープルに気づかずに近づいていたら、バジリスクに襲われていたのはスネークピープルではなく、俺だった可能性が高い。


危険な未発見生物の住む場所に居ると想定して行動していたつもりだったが、ジャングルには慣れ親しんでいるせいで慢心しており、脅威に対する備えが甘かった。


スネークピープルたちの落とした武器の大半を回収し、先ほどまで登っていた樹木の上に戻って、盾の改修を行う事にした。


槍を拾った際に先端から滴り落ちたバジリスクのものだと思われる血液が、石化したスネークピープルの亡骸にかかった箇所を、槍先で突付くと柔らかくなって事が分かった。


解毒みたいな効果がある様に見えるが、咬まれた直後に飲めば硬化が解除出来るのか、解除出来たとしても副作用はどうなのかなど、検証するには色々と危険が多すぎるので、保留せざるをえない。



 スネークピープルたちから回収した弓は、弦の長さが3フィートほどの短弓だが、結構な張力があった。


師匠にガキの頃から教え込まれた古武術を一通り修めたと認められている身なので、槍術や小太刀術だけでなく、弓術も出来る。


但し、精神修養としての弓術などではなく、目標発見と同時に射撃する急射であり、毒矢を用いる技も伝わっているなど、基本的に敵に当たりさえすれば良い、という考えの弓術である。


張力のもっとも強い弓を背負い、他は予備として橇に括りつけた。


矢は、3つの矢筒で計20本しか残っていないが、ディノニクスの爪や下等竜ドラゴンの羽もあるので、矢自体は時間に余裕が出来たら作れば良い。


3本の槍は、そのまま使える。


盾は分解して大きなカブトムシの上翅の状態に戻した後、防刃板の木材部分と入れ替えた。


橇も木材からカブトムシの上翅に変更し、廃材である木材は矢の材料や薪として利用する事になる。



 弓の状態を確認し始めた頃に、今まで小さかった虫の座和めきが急激に大きくなっていく事に気付いた。


もしかしたら、バジリスクが居たせいで虫の音が小さくなっていたのかもしれない。


そういえば、バジリスクから数十ヤードほどの距離に近づいた時に、虫の座和めきが急激に小さくなった、という事を今更ながらに思い出した。


それに、下等竜の亡骸に近い場所ほど、虫の座和めきがなかったし、ヘビやカエルなども見かけなかったのだが、数百ヤードほど離れた場所から急に賑やかになった記憶がある。


その御蔭で安眠できたのだが、やはり相当慢心していたようだ。


つまり、恐竜ではない恐竜みたいな生物は、小型の生物から忌避されている可能性が高いので、警報がわりに使えるかもしれないという事だ。


俺と同様に油断していた可能性もあるが、このジャングルで生きるスネークピープルたちがそんな事にも気づかずに、いともあっさり狩られていた事が気になる。


あくまでも虫の座和めきは警報の一つでしかない、との認識でいた方が良いかもしれない。



 丸5日間かけてジャングルの中を、直線距離で約30マイルほど進んだ。


下等竜の亡骸があった場所を出発してから6日である。


僅か30マイル程度の距離を進むのに、これほどの時間がかかった理由は、余りにも珍しい動植物が多過ぎて、目移りした俺が寄り道ばかりしていたせいだ。


俺はかなりの広範囲を徘徊したが、下等竜を見かけたのはかなり遠くの方に居たもう1匹だけだった。


嬉しい誤算だが、下等竜の縄張りは想定以上に広いのかもしれない。


バジリスクは7匹ほど倒したが、ライオンと虎の違い以上に色違いや形状が異なる個体ばかりで、ステータスがなければ、同じバジリスクとは判断出来なかっただろう。


バジリスクに似た体格の生物なら他にも十数ほどいたが、400ヤード以上離れた場所から発見する事が多かったので、大半の名称は分からなかった。


この時に、ステータスを読み取れる最大距離は320ヤード程度である事が分かった。



【名称】

 亜竜目 嵐竜科 ワイバーン

【レベル】

 185



バジリスクに似た体格の生物の1種類がこいつで、虫の座和めきが聞こえる状況で突然、2フィート未満の至近から奇襲を受けた。


師匠たちを除いてだが、俺が気配に気付かずに此処まで接近を許した事は今まで一度もなかった。


ワイバーンは、体高約8フィート、体長約26フィート、腕の替わりに翼竜みたいな翼があり、羽毛はなく、バジリスクと同じ様な灰色の鱗と皮膚だが迷彩模様ではない。


4度の奇襲全てが、反射的にワイバーンの口の中に連続でショットガンを撃ち込む事で、俺は何とか生き延びる事ができた状態だった。



 ジャングルを進むほどに、バジリスクやワイバーンだけでなく、高レベルの獣頭人身の生物も見掛ける事が減り、逆に低レベルの獣頭人身の生物に遭遇する機会が増えた。


また、興味深いことに、獣頭人身の生物は名称やレベルが全く同じでも武器や鎧を装備しているタイプと衣服すら一切身に着けてない動物みたいなタイプがいる事が分かった。


爬虫類や昆虫類、4足歩行の哺乳類などの出現頻度に、そんな傾向はない。


ヒト型爬虫類 ダイノサウロイド科 リザードマン

ヒト型爬虫類 ダイノサウロイド科 スネークピープル

ヒト型哺乳類 セリアンスロゥプ科 トロール

ヒト型哺乳類 セリアンスロゥプ科 オーガ

ヒト型哺乳類 セリアンスロゥプ科 オーク

ヒト型哺乳類 セリアンスロゥプ科 ゴブリン


 身長約6フィート、見た目は正にトカゲ人間で、ゴリラみたいな筋肉量と、青銅色の鱗や皮膚を持つ鰐頭人身のリザードマンが、レベル56。


 身長約6フィート、TVドラマのブイに出てきたエイリアンに似た頭部と、紺色の鱗と皮膚を持つ蛇頭人身のスネークピープルが、レベル40。


 身長約12フィート、顔が多少違うがビデオゲームのレジデントエビ○4に出てきたエルヒガンテに似ている河馬頭人身のトロールが、レベル31。


北欧の伝承に登場するトロールの姿は様々な描写があって一定しないが、ここではこの姿なのであろう。


 身長約8フィート、見た目は体毛のない牛頭鬼ごずきに似ている牛頭人身のオーガが、レベル25。


北ヨーロッパの伝承だとオーガは自由に動物や物に姿を変えると言われているが、日本では鬼と訳されることが多いので、地獄草紙に描かれた牛頭羅刹の印象が強い俺の認識に合わせて翻訳されているのかもしれない。


 身長約6フィート、全身が褐色の体毛で覆われており、大きな牙がある猪頭人身のオークが、レベル19。


ラテン語でオークは地下世界の生物という意味だし、中世のオークは巨大な海の怪物で、鱗と牙と豚のような鼻を持っていて、剛毛が生えていた筈なので、これも俺の認識に合わせて翻訳されているのだろう。


 身長約4フィート、茶色の体毛に覆われていて鉤爪を持つ猿のような子鬼に見える鼠頭人身のゴブリンが、レベル11。


ヨーロッパの伝承だとゴブリンは妖精や幽霊だし、ホブゴブリンに至っては密かに家事を手伝う善良な妖精というのが伝承での姿だったが、シネマの帝都物○の影響が強い俺の認識に合わせて翻訳されていると思われる。


 特に深淵の森の外縁部で遭遇した獣頭人身の生物からの攻撃に応戦した際には、一合も槍を交える事なく、簡単に首筋を断ち斬る事や口の中に突き込む事が出来た。


何となく、腕力だけが取り柄の素人が群れをなして武装していた、という感じの手応えである。



 移動に関しては特に問題はなかったのだが、夜間の休憩中に抗えない睡魔に襲われて困った。


除隊するまでは、3日間徹夜でジャングルを行動しても平気だったし、普段は6時間の睡眠で十分回復していたのだが、下等竜を倒した日から、夜間の見張り中に気づくと眠っていた、という状態が続き、連日10時間以上は眠っている。


体調が悪かった訳でもないし、倦怠感があった訳でもなく、それどころか日に日に活力が漲って来るから、余計に原因が分からない。



<続く>

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