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とある狩人の追憶記  作者: 白眉万丈
第3章
46/78

第46話

■2015/08/15 誤字脱字の修正、及び表現の一部変更を行いました。

第46話




 俺が購入した大陸間輸送船は、全長約600フィート、全幅約75フィート、貨物は甲板上に積んで輸送するタイプで、本体の大きさもシルエットも軽空母といった感じだが、この分類の船舶の中では小型サイズらしい。


但し、船体の左右に水車みたいな転輪が付いており、風がなくてもこれを乗組員の魔力や人力で動かす事で推進力を得る事が出来る。


 この船が『倉庫』の魔法の中に置いてある。


この空間は約1マイル四方の真白な空間だが、天井や床や壁面が蛍光灯みたいに光っており、十分に明るい。


今のところ船しか存在しないが、少しずつ拡張するとともに何れはここに土を入れ、草木などを移植していく予定だ。


 俺には理解出来ない思想だが、こういった輸送船の乗組員は基本的に寄港している時でも仕事以外で陸に上がる事は無いらしく、艦内は居住区となっている。


内部を見学する前は軍艦や潜水艦みたいにコンパクトな居住区だと想像していたが、実際には客船の様に広い居住区であった。


但し、窓が少ないので明かりを灯さなければ真っ暗である。


折角の広い甲板上を無駄にしては勿体無いので、別途購入した家庭用下水処理設備付きの2階建て家屋を艦尾に設置し、物資は下層の倉庫に放り込んでおいた。



 巨人の駆除作戦を終えた俺たちが船尾の家に到着した時には、船内の探検に行くとの書き置きが残してあり、ヘレナやヒルダたちは居なかった。


俺たちが泥まみれの身体を洗い流して風呂から出てきた時に丁度、彼女たちも戻ってきた。


「ソード。」


「ヒルダ。楽しかったか?」


「うん。あのね。お部屋が一杯あってね。―――」


駆け寄ってきたヒルダを抱きかかえて、ヒルダの拙い言葉のマシンガントークを聞いていると、ヴィクトリアが船内で迷った事を説明してくれた。


俺たちが巨人の相手をしている間、彼女たちはずっと船内を探検していたみたいである。


ヒルダにとってこの船は探検できる場所が山盛りなので、大喜びだったそうだ。


とは言え、唯でさえ延べ床面積が相当広いのに加えて、泥棒対策として錯視を用いた色々な仕掛けが施されているせいで、かなり迷ったらしい。


暫くすると突然ヒルダが眠ってしまったので、ヘルミーネとヘレナと一緒にベッドルームへ連れて行った。


ずっと駆け回っていたらしいし、普段ならヒルダは既に眠っている時間なので仕方が無い。



 リビングルームに戻ってきた所で、ヘルガやレナートたちの会話する声が聞こえてきた。


「私は未だ気持ち悪いよ。何だったんだい、アイツは?」


「俺もだ。アイツが穴を埋立てるのを見てた時にはこんな事は無かったんだがな。

アイツが話しかけてきたら突然酷い二日酔いになったみたいに気持ち悪くなった。」


「お二人は、何の事を言ってるんですか?」


「ミスター・ジョンドゥーとかいうランク7ハンターの事だよ。」


「やはり、彼はまた来たんですね?」


「知っているのかい?ヴィクトリア。」


「緑色の巨人の時にも辺境伯とギルドマスターの救援要請を聞き入れて、この街に来ていたみたいですよ。

但し、ソードが巨人にとどめを刺した頃になってやっと、辺境伯の屋敷の転移門に現れたそうですが。」


「何となく、きな臭くなってきたと感じるのは俺だけか?」


「私もだよ、レナート。

緑色の巨人を仕留める事が出来たのは、マグレだったとソードが言ってたからね。

それがなけりゃ、今回と同じ様に絶妙のタイミングでアイツが登場した筈さね。」


「しかし、未だ2度だから偶然という事もありえる訳だ。」


「いいえ。他の街のギルドからも警告が来ていますから、一連の巨人をこの街に送り込んだのは彼だと思います。」


「ヴィクトリア。それが分かっていてギルドは何故、何もしないんだ?」


「先ず、証拠がありません。

それと彼のステータスにはドラゴンスレイヤー系の称号しかないので、こういった事件に直接手を下した訳ではなく、予測困難な筈の事象を巧みに利用しているのではないかと言われています。」


「ヴィクトリア。アイツの代わりに他のランク7ハンターを呼ぶ事は出来ないのか?」


「近場に居るなら兎も角、離れた場所へ赴くのは彼だけです。

そのため、彼が首謀者であろうが無かろうが、必然的にギルドは彼に頼るしか無い状況です。」


「そう言えばカールが、アイツは感謝の気持ちが少ない街には二度と救援に赴かない、とか言っていたな。

それでギルド職員が卑屈になってまでアイツに謝意を述べていたのか。」


「そうだと思います。

過去にも何度か、救援要請のあった街から去る時に彼がそう言った場合には、近場にいても2度と救援要請に応じなかったそうです。」


「腐っている奴だね。」


「ヴィクトリア。何でこの街がアイツに狙われたんだ?」


「恐らく、窮地に陥り易く、頻繁に助けを呼ぶので狙い目だと思われたのでしょう。」


「窮地に陥ったら、助けに来てくれるってか!?」


「どちらかと言うと、窮地に陥いらないと助けに来ないんじゃないのか?」


「そりゃあ、安心だ。」


「カールの話しだと、アイツが一度でも救援に赴いた街は度々厄災に襲われるらしいけど、どれぐらいの間、付き纏われるんだい?」


「彼が標的を他の街へ変更するのは救援要請に応じた際の様ですが、必ずしも全ての救援要請に応じている訳でもありませんので、不明としか言えません。

それと、付き纏っている街からの救援要請に応じたものの間に合わず、閉鎖になってしまった街も幾つかあります。」


「それって、登場のタイミングを間違えたんじゃないのか?」


「本番中なのに楽屋で寝ちまったんだろ?

そんで出番も舞台も無くなったから河岸を変えたんじゃないのかい?」


「やってる事がまるっきりガキだな!?」


「少なくとも後1個は青い飴玉が残っているから、アイツが暫く居座るのは確実だ。」


「青色の巨人の事だね。

それにしても何処に隠れているんだろうね?」


「恐らくだが、隠れているんじゃなくて、逃げたんじゃないのか。

あの大穴の中には紫色の巨人が何かに追い立てられた様な形跡があったし、土木系の魔法か爆薬で岩盤が切断された痕跡も残っていた。

それも全てアイツが跡形もなく埋め立てたけどな。」


「レナート。あの穴の中を調べたのか?何処に繋がっていたんだ?」


「ああ、あれは地下遺跡側の出入口を塞いだ通路の一つだった。

以前の調査記録で深淵の森に繋がっているのが分かっているモノらしい。

ランク6以下の生物ではぶち破れ無いほど岩盤が分厚く、深淵の森にいるランク7の生物は全て巨大だからあの狭い通路には入れない筈だったみたいだ。」


「アイツがその事を知ってたってのかい?」


「ギルド職員に確認したが、特に秘匿事項でもないから調査記録は公開されていると言っていた。

アイツにも調べる事は簡単だった筈だ。」


「という事はだ、青色の巨人が仮に何処かへ逃げていても、アイツは何らかの手段を使ってこの街へ追い込んで来る可能性がある、という事だ。」


「何か打つ手はないのかい?」


「あの偏向シールドさえなければ、俺の魔法攻撃が効くんだがな。」


「熱線や雷をドアノッカー扱いとは、あの巨人は本当に化け物だよな。」


「目ン玉に槍を突っ込むにしても、魔法で身動き取れない様にしなけりゃ当たんないしね。」


「アイツが使ってたボーラを真似る手があるな。」


「ああ、そりゃあ良いね。」


「ランク5以上のハンターが1人1個ずつ投げれば何とかなるだろ?」


「あれは1個、100ポンドくらいあったんじゃないか?

ランク5ハンターがあんな糞重たいモノを投げながら戦える訳が無いだろうが。お前らと一緒にするな!」


「あれくらい投げれるだろ?」


「高速で動き回っている巨人を相手にするんだぞ。飛距離も速度も出ないって言ってるんだ!」


「違う、違う!ボーラを持って追いかけるんじゃない。巨人を待ちぶせして投擲するんだ。」


「俺たちが罠の役目をするのか?」


「ああ。いっそ鎖を軽くして大量に投擲する手も有るな。一瞬でも動きが止まった時に、あの焼夷爆弾みたいなのを投げつければ良いしな。」


「でも巨人は、あれでさえ何本か鎖を引き千切ってたからね。あれより細い鎖だと意味がないんじゃないかい?それに、無傷の状態の巨人にあの焼夷爆弾が効くのかい?」


「確かに、効かない可能性も考慮しておく必要があるな。」


「今のところ確実に分かっている巨人の急所は脳ミソしかないし、弱点は目ン玉だけだけだからね。

一撃必殺を狙うなら耳の穴か目ン玉を一点突破して、脳ミソを狙うしか無いよ。」


「そう言えば、あの巨人は頭だけになっても呻き声を上げて生きていたからな。

確実に足止めするには、ボーラだけじゃ不安だな。」


「足止めなら、落とし穴も有効なんじゃないのか?」


「この前みたいに大雨でも振ってないと、街中での『泥沼』の魔法は一目瞭然だからな、掘ってから偽装する必要があるぞ。」


「だけど、巨人が何処に現れるのか分からないんだから、街中を穴だらけにする訳にもいかないよ。」


「持久戦になったら、怪我人が増える分だけ確実にこちらが不利になるからな。

仮にアイツが助けに来るにしても窮地に陥ってからだろうし、先に用意できる罠は設置しておきたいな。」


「では、明日の朝にでもハンターギルドに打診してみます。」


「ああ、頼む。ヴィクトリア。」


その後も俺たちは色々と話し合ったが、偏向シールドを装備した重戦車みたいなモノを相手にして、槍で立ち向かうのに有効な方法は大して思い浮かばなかった。



<続く>

【人物紹介】

ソード……主人公。本名は、惣田真悟。ステータス上の名前が、シングル・ソード。ランク6ハンター。


ヘレナ……ソードと同棲中。傭兵ギルドの教育担当。ランク5ハンター。


ヴィクトリア……ヘレナの父方の従姉妹。ハンターギルドの契約責任者。ランク5ハンター。


ヘルガ……ヘレナの叔母。元ランク6ハンター。


ヘルミーネ……ヘレナの母方の従姉妹。ヘルガの娘。ランク3ハンター。


ヒルダ……ヘルミーネの娘。4歳。


レナート……ヴィクトリアの同棲相手。ランク5ハンター。


カール……ヘルミーネの同棲相手。ハンターギルドの渉外担当。ランク4ハンター。



【基本魔法紹介】

『氷湖』……物体が湖の氷に閉じ込められている光景を再現したもの。対象を凍らせる訳ではなく、指定位置周辺の動きを止める。距離や範囲や威力は個人の力量に比例し、任意の場所で発動するが、距離に比例して発動時間が遅くなる。


『泥沼』……底なし沼を再現したもの。対象は地面や床に限らず、指定位置周辺を融解する。距離や範囲や威力は個人の力量に比例し、任意の場所で発動するが、距離に比例して発動時間が遅くなる。



【秘伝魔法紹介】

『倉庫』……倉庫に居る光景を再現したもの。容量は個人の力量に比例し、一度構築すれば状態の維持に魔力は消費しないが、出入り時には質量に応じた魔力を消費する。床が存在する正方体の空間で、人間が居住可能。


『爆破』……建物解体用の時限爆弾を再現したもの。モンロー効果により穿孔を穿つ事や爆切が可能。 威力は個人の力量に比例し、任意の方向や時間で発動出来るが、手元を離れると10秒程で霧散する。



【その他】

シグブリット辺境伯領……主人公が転居してきた街。アンブロシウス王国の最南端に存在する。

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