第40話
■2015/08/15 誤字脱字の修正、及び表現の一部変更を行いました。
第40話
◇
ヘレナとヘルミーネが仲良く産休に入ってしまったために、俺は単独で行動している。
最初は、ヘルガとツーマンセルを組んだのだが、あまりの行動方針の違いにたった1日でお互いが音を上げた。
ヘルガは、基本的に獲物を見た途端に後先考えずに突撃していく。
真黒の鎧や兜だけでなく、穂先まで黒錆でコーティングしたロンコーネを使っているし、まるで何処かの黒い槍騎兵みたいである。
但し、ヘルガに言わせると俺は、回り込むとか待ち伏せるとか、まどろっこしい手を使い過ぎるらしい。
別の部隊としてなら役割分担出来るが、同じ部隊だと足並みを揃えるのが難しい事などよくある事だ。
最近の俺は、亜人を狙って魔法を織り交ぜた武術で仕留めながら、修正と改良を施している。
第二次駆除作戦でのヘルガの戦い方を見たあと暫くの間は、武術だけで仕留めていたのだが、ヘレナの姉であるヘラが訪ねてきた時に見せてくれた、魔法に依存しない魔法での戦い方によって再度考え方を改めた。
考えてみれば魔法なんて単なる武器の1つでしか無い。
いつの間にか別物だと思い込んでいたが、魔法だけとか武術だけなどと分けて考える必要など何処にもなかった。
『秘伝』の魔法を、碌な習熟訓練もしない内に核兵器みたいな切り札認定してしまったせいで、おかしな事になっていたが、使い捨てのロケット・ランチャー程度の存在だと認識を変えてみれば、戦法が全く変わってくる。
一般的に魔法は平均4スロットくらい並列で起動出来るが、其々のスロットの発動間隔はおよそ10秒間ほど要する。
駐留軍や諸行軍みたいに百人隊で陣形を整えて攻撃すれば秒間数十発の連射攻撃も行えるが、単独では連射など不可能だ。
そのせいで一撃必殺を求めてしまっていたが、手裏剣程度の発射間隔だと思えば、槍撃の合間にも十分に組み込める。
今は、事前に幾つかシミュレーションしておいた戦法を実戦で確かめながら、修正と改良を施している最中である。
◇
正面に聳え立っている大きな樹木の方から、いつもの気配を感じた瞬間に俺は立ち止まった。
樹木の影から現れたそいつは、気配を隠すこともなく十数ヤードの距離まで近づくと俺に向かってハルバートを突きつけた後、俺の目の前に瞬時に移動して斬り掛かって来た。
最近の俺の相手をしてくれているのが主にコイツらデミドラゴニュート、正確には『デミ・ドラゴニュート・タイプ1』というどんな仕分け方をされたのか良く分からない名称のヤツらである。
コイツらは、この深遠の森で以前襲いかかってきたドラゴニュートと同様に、毎回正々堂々と正面から現れ、俺に向かってハルバートを突きつけてから斬り掛かって来る。
しかも、樹木の影には他にも数匹が隠れていて俺たちの戦いを観察しているみたいだが、仲間が殺られても途中で手出しする様な事は一切しない。
毎回、律儀にサシでの勝負に拘り、俺に殺されていく。
そして、回を重ねる度にコイツらの戦闘技術は確実に洗練され、少しずつ強くなっていっている。
少なくともコイツらは、俺の技を上手に引用する事が出来るほどの優れた読み手だという事だ。
デミドラゴニュートはレベル187なので、ドラゴニュートよりは少しだけレベルが低いのだが、それでも俺よりはかなりレベルが高いので身体能力の地力が違う。
俺とデミドラゴニュートとの技術力の差異がほんの少し縮まってくるだけでも、身体能力の違いをまざまざと実感させられる。
既に9匹を倒したが、その間に上がった俺のレベルは6でしかないので、未だレベル差は67もある。
しかも、レベルの差が少なくなるほど倒してもレベルアップし難くなるので、俺がコイツらと同じレベルになるには後数百体は倒さなければならない。
何とかしなければこのままでは、身体能力の差異よりも技術力の差異の方が小さくなって、力ずくで押し切られる日が来るのは確実である。
◇
しかし、楽しい。
コイツらと戦うのが、どうしてこんなに楽しいのかは分からない。
ドラゴニュートよりも再生能力が高いみたいで、コイツらは手足を切断したくらいだと拾ってくっ付けるだけで直ぐに元通りに動かす事が出来る。
「さあどうした?
今度は右脚を斬り飛ばしただけだぞ。さっさと足を治して立ち上がれ!
ハイなジルバを見せてみろ!ショータイムはこれからだ!」
そして、コイツらは治癒魔法なのか、治癒能力なのかは分からないが、目を潰し、耳を引き千切り、手足を魔法で吹き飛ばしても数分もすれば生えてくる。
そして、十数分間に渡るダンスの末、袈裟斬りにポール・アックスをデミドラゴニュートの鎖骨に叩き込んで決着が着いた時には、俺も軽傷とはいえそこら中を斬り裂かれていた。
日を追う毎に、負傷率が上がっている気がする。
俺には才能が無いらしく、『秘伝』を購入する前の適性診断で断られたので、治癒魔法は使えない。
何箇所かは血が止まらないが、接着剤もモルヒネの錠剤も使い切ってしまったので、ハンターギルドに戻ってから治癒魔法使いを雇って治して貰うしかない。
取り敢えず抗生物質を服用した後、アルコールで消毒してから針と糸で傷口を縫い合わせて応急処置をしておいた。
◇
俺が2度とここへ来なくてもアイツらは、ここで他の何かを襲いながら少しずつ強くなっていくだろう。
それに物足りなくなったら、すぐ傍にある街へ向かうのは確実である。
あの街には俺の子供を宿したヘレナがいるのだから、そんな真似を許す訳にはいかない。
しかし、この危機にすぐに取れそうな対策手段が浮かばない。
焦っても何の役にも立たないが、かと言ってヘレナを守れず単に善戦しただけ終わり、後から後悔する事になるだけの手段なんて尚更役に立たない。
危機というのは危険と好機の抱き合わせだし、祝福は苦悩の仮面を被って訪れるらしいから、ここは地道に真っ向からデミドラゴニュートどもを下していき、実力を上げるチャンスだと考えたほうが良いのかもしれない。
何かを得るためには、好きな事だけをするのではなく、やらなければならない事を好きになる必要があるしな。
俺はデミドラゴニュートの真っ二つになった死体だけでなく、何個かの左腕や右脚を回収して『収納』の魔法で格納すると『転移』の魔法でハンターギルドの中庭へ移動した。
◇
ギルドの中庭に出ると非常事態を告げるサイレンが鳴り響いていた。
何事が起こっているのかは分からないが、取り敢えずヘレナの身の安全を確保するのが最優先である。
確か今日はヘルミーネの家に妊婦が3人で集まる予定だったし、ヘルガも狩猟は休みの筈だ。
俺は念の為に『探査』の魔法を使ってヘレナたちがギルドビル内に居ない事を確認したあと、即座に『転移』の魔法でヘルミーネの家の庭へ移動した。
裏口を開けて中に入ると幸いな事にヘレナたちだけでなく、レナートやカールまで臨戦態勢で詰め掛けて来ているのが分かった。
「ソード!」
一番近くにいたヒルダが俺の名前を呼びながら駆け寄ってきたので、抱きかかえてからヘレナの元へ向かう。
「何があったんだ?」
「転移門から、紫色と青色と緑色の肌をした3匹の人型の生物が突然現れて、兵士を襲っているそうです。」
俺が尋ねると、ヘレナではなく、ヴィクトリアが答えてきた。
「亜人か?」
「それは分かりませんが、それよりも転移門から現れたことが問題です。
もしかしたら生体兵器かもしれませんが、そうだとすると転移元の街は酷い事になっているかもしれません。」
この世界では侵略戦争が無い訳ではないが、領土が広がるに連れて必要な兵士の数が増えるので、無闇矢鱈と侵略する訳にもいかない。
安全な地域ほど貧困だし、裕福な都市ほど危険生物と常時交戦状態の場合が多いので、そんな都市を支配下に置けば防衛の為に多大な人材と資金を必要とするが、折角支配地が大幅に増えても戦後の復興をしながらの収入と見合うかは疑問である。
紛争の大半は継承権争いか隣接する領地との利権争いであるが、何れにせよ今のとろここの街にそんな争いのタネはない。
「ギルドからの指示は何だって?」
「地下遺跡への退避勧告ですが、妊婦や幼児が摂氏5度の空間に長時間いるのは身体に悪いので、私たちはギリギリまで様子を見ることにしました。」
「なるほどな。ありがとう、ヴィクトリア。」
「ソード。アンタの『転移』でこの子たちをジルヴェスター辺境伯領にでも送ってくれないかい?」
ヴィクトリアとの会話を終えると、ヘルガからそんな言葉が出てきた。
「勿論、そのつもりだ。
但し、『転移』の魔法は質量が増えると指数的に疲労感が増すから、一度に転移出来るのは3人が限度だ。
そのため一旦、『倉庫』の魔法で造ってある俺のプライベート空間に入って貰う必要がある。」
「それって確か、商人が使う魔法じゃなかったかい?変わったモノを持ってるね。」
「まあな。レナートはこれで2度目だが覚えているか?」
「あの真白な空間に建っている馬鹿でかい船の事だろ?」
「クールだろ?何せ、俺独りなら百年間生きていけるだけの食料品や必要品が積みこんであるからな。」
レナートは、俺が『倉庫』の魔法に格納しておいた大陸間輸送船の事を言っているのだろうが、以前のレナートは動けない状態で見上げていただけだったから、余計に大きく感じたのだろう。
高い買い物だったが、もしも俺が突然死んだりして『倉庫』の魔法で格納しておいたモノがぶち撒けられても、海の上だろうと森の中であろうとあの船の中に居る限り、ヘレナは当分の間は安心して生活する事が出来る。
「それじゃ、ソード。この子たちの事は頼んだよ!」
「ヘルガ。アンタはどうするつもりだ?」
「勿論、残るよ。」
「そうか。
じゃあ、他の皆は格納するから俺の近くに来てくれ。」
ヘルガの今みたいな顔を昔見た事がある。
敵に囲まれて絶体絶命の時に、独りでカミカゼアタックを仕掛けた、あの馬鹿にそっくりだ。
格納が終わった俺はジルヴェスター辺境伯領へ転移し、ハンターギルドへ皆を預けると、ここへもう一度戻ってきた。
「ソード、どうしたんだい?」
「よう、ヘルガ。チケットは未だ有効だろ?俺にもダンスを満喫させてくれ。」
「何言ってるんだい!これは遊びじゃないんだよ!」
「こいつも遊びなんだよ。そうじゃない事なんて、この世にあるのか?」
敵に回る可能性が有るなら容赦なく殺すが、仲間のために死地に飛び込む戦友を見捨てる事は2度と出来ない。
それに、仲間の戦死報告書を作成するのも査問会での質疑に追われるのもゴメンである。
「どうなっても私は知らないよ?」
「テメェのケツはテメェで拭くさ。それに死にに行く訳じゃない。」
「ふん。好きにしな!」
俺はポール・アックスを担ぐとヘルガの後に付いて、転移門のある施設へ向かった。
◇
転移門のある施設からは煙が上がっている。
ド派手な爆発音が聞こえてくる所をみると未だ諸行軍や駐留軍は戦っているようだ。
入り口の扉を潜ると見えてきたのは、体長約17フィートの緑色の肌をした巨人が素手で兵士を殴って、ボーリングのピンの様に吹き飛ばしている光景だった。
丸裸だし髪の毛もないが、まるでシネマのインクレディブル・ハル○である。
いや、背中にデカイ刺が生えているし、眼も赤いから、ビデオゲームのレジデントエビ○に出てきたモンスター化したスティー○にも似ているかもしれない。
しかもコイツのステータスを読取る事が出来ない。
何というか焦点が合わなくてオートフォーカスが動きっぱなしの様な感じである。
そして紫色と青色の肌をしたヤツラの姿は見当たらない。
緑色の肌をした巨人は、迫撃砲の急速射撃みたいな諸行軍と駐留軍による制圧射撃を真っ向から浴びても全く痛痒を感じていない様に見える。
少なくともワーウルフ第4形態並みの頑丈さがある。
その攻防を見ながら俺は右手方向へ、ヘルガは左手方向へ進んでいく。
「さあて、1曲付き合って貰うとしようか!」
諸行軍と駐留軍が陣形を立て直すためにヘルガの近くへ退いたタイミングで、俺は巨人の背後へ近づいて行き、『強化』の魔法を最大出力にしてから数歩のダッシュと壁蹴りで飛び上がり、首筋にポール・アックスを袈裟斬りに叩き込んだ。
生物に鉄塊をぶつけたとは思えない、ゴーンという除夜の鐘のような大きな音が響くのと同時に、俺と巨人は反対方向へ弾き飛ばされた。
「おいおい、マジかよ!?」
最近の俺はこのポール・アックスで刃を欠けさせる事も無く岩を切断する事が出来るほどに腕前が戻って来ていたのだが、ポール・アックスの斧刃部分は見事に潰れているので『強化』の魔法がなければ確実に手首を痛めていた筈である。
俺は即座に巨人から離れて、予備のハルバートを取り出すと同時にポール・アックスを投げ捨た。
地面と熱烈なキスを交わしていた巨人は、首筋を抑えながら起き上がるとキョロキョロと視線を彷徨わせたあと、赤い眼で俺を睨みつけてきた。
嫌な予感がした俺は、防壁代わりに『氷湖』の魔法で自分の周囲の空気を紡錘形のドーム状に固めて無色透明な障壁を作った。
その直後に巨人は膝立ちの姿勢のまま、俺に向けて突如巨大な咆哮を上げた。
数十ヤードも離れているヘルガや兵士たちが、武器を手放して両手で耳を押えて蹲ってしまった。
俺がヘルガたちに視線を向けた瞬間に、巨人がクラウチングスタートの様な格好でダッシュした姿が視界の片隅に映る。
俺は即座に『氷湖』の魔法を強化すると同時に『転移』の魔法を発動したのだが、巨人は弧を描いてカーブして行き、俺ではなくヘルガや兵士の方へ殴り込んでいった。
ヘルガは何とか転がって避けたみたいだが、数名の兵士がまたしてもボーリングのピンの様に吹き飛ばされた。
弛緩している所を自動車に撥ね飛ばされたみたいなモノなので、大半の兵士の首や手足が有り得ない方向を向いている。
その後も巨人は大ぶりのパンチを放ちながら蹂躙し続けた。
俺は『氷湖』の魔法を解除するとダッシュして、巨人の背後から足首を狙ってハルバートを横一文字斬りに叩き込もうとした。
だが、回れ右をしてそれを避けた巨人は、武器を振り切って体勢を崩した俺に向けて、一歩踏み込んでから振り下ろしのパンチを放って来た。
『強化』の魔法を最大出力にして俺は衝撃に備えたが、一瞬早くヘルガが巨人の踵にロンコーネを横一文字斬りに叩き込んでいたらしく、除夜の鐘の音とほぼ同時にゴォーという音を放ちながら、狙いを外したパンチは俺の目の前を通り過ぎて行った。
そのパンチの風圧で飛ばされて、俺は床に散らばっている兵士たちのバラバラ死体に揉みくちゃになったあと起き上がろうとして気づいたが、どうやら左腕に巨人のパンチを食らっていたらしく、痛みも感じ無いくらいに骨を粉々に碎かれており、左腕がタコみたいにグニャグニャになっている。
ヘルガに礼を言おうとしたが、彼女の耳から血が流れているのが見えたので、ハンドサインで済ませた。
巨人はすっ転ばされただけでダメージはないらしく、キョロキョロと視線を彷徨わせたあと、ヘルガを睨みつけた。
俺は先程と同じ様に、防壁代わりに『氷湖』の魔法で自分の周囲の空気を紡錘形のドーム状に固めて無色透明な障壁を作る。
そこへ運悪く、四方の入り口から増援の兵士たちが大挙して乗り込んで来た。
その直後に巨人は膝立ちの姿勢のまま、ヘルガに向けて先程よりも巨大な咆哮を上げる。
数十ヤードも離れている増援の兵士たちは、武器を手放して両手で耳を押えて蹲ってしまったが、既に鼓膜の破れているらしいヘルガは、巨人の眼にロンコーネを連続で突き刺した。
しかし、バランスを崩したヘルガは、巨人が片手で眼を押さえながら振り回したもう片腕の手刀の直撃を食らって吹き飛ばされてしまった。
ヘルガの容態が気掛かりで手段を選んでいる余裕がなくなった俺は、巨人を『氷湖』の魔法を使って周囲の空気ごと固めて拘束してからダッシュで近付き、『投影』の魔法を発動する。
ヘルガや兵士たちが射線に入らない様に位置取る僅かな時間にも、拘束は巨人に力尽くで壊されていき、俺が右腕の掌から『投影』の魔法を最大出力で放つのと同時に、『氷湖』の魔法は無理矢理に解除された。
巨人の両耳の穴と脳ミソを結ぶ線を狙って放った『投影』の魔法だが、空気爆発で舞い上がった土煙が晴れたあとに見えたのは、耳の周囲の皮膚が消失しただけで、その他は無傷のまま膝立ちしている巨人の姿だった。
俺は慌てて『氷湖』の魔法と『投影』の魔法を再び発動してから、巨人の耳があった部分から向こう側の壁が見えているのに気がついた。
『氷湖』の魔法からは、生きている動物を閉じ込めている時に特有の感触が伝わってこない。
どうやら仕留める事は出来たみたいだが、外見上は耳たぶくらいしか傷付いていない。
検証は後回しにして、俺は増援の兵士たちに続いて入り口に顔を出したギルド職員を呼び付けて、治癒魔法使いの手配を依頼してからヘルガの容態を確認しに行く。
あの状態では普通なら生きているとは思えないが、化け物の様に頑丈なヘルガはやはり生きていた。
但し、死んでいないと言った方が良い状態である。
パッと見ただけでも頭蓋骨や顔面は陥没しているし、手足は骨が無くなったかの様に曲線を描いており、更にロンコーネの鎌刃部分が腹部に突き刺さっていた。
それでも瞬きだけはしている。
「大丈夫か?」
「私が踊れる様に見えるのかい?」
俺が声を掛けると驚いた事にヘルガがそう返事をした。
「何だ聞こえるのか?」
「片方だけだがね。」
「そうか。」
そこへ、先程のギルド職員が2人の治癒魔法使いを連れて駆け寄って来たので、俺は左腕と午前中に負った傷を、ヘルガは全身を治癒して貰ったのだが、治るのに従って痛みが強くなって来た。
今まで治癒魔法使いの世話になって喚いているヤツラを見ながら、芥子の実を使うか気絶すれば楽なのに何を頑張っているんだろう、と思っていたが、そんなモノは何の役にも立たないくらいに、酷い激痛がひっきりなし襲ってくる。
地球にいた頃にも何度か手術を受けた事があるが、麻酔の技術力が違い過ぎて比較にならない。
こんな所をヘレナやヴィクトリアに見られたらきっと前回の仕返しをされるに違いないのだが、そんな事を考える余裕など全くなく、応急処置が終わってからギルドの医療施設に入院しても俺たちはずっと喚き続けていた。
<続く>
【人物紹介】
ソード……主人公。本名は、惣田真悟。ステータス上の名前が、シングル・ソード。ランク6ハンター。
ヘレナ……ソードと同棲中。傭兵ギルドの教育担当。ランク5ハンター。
ヴィクトリア……ヘレナの父方の従姉妹。ハンターギルドの契約責任者。ランク5ハンター。
ヘルガ……ヘレナの叔母。ランク6ハンター。
ヘルミーネ……ヘレナの母方の従姉妹。ヘルガの娘。ランク3ハンター。
ヒルダ……ヘルミーネの娘。4歳。
ヘラ……ヘレナの異父姉妹の姉。ハンターギルドの渉外責任者。ランク4ハンター。
レナート……ヴィクトリアの同棲相手。
カール……ヘルミーネの同棲相手。
【魔法紹介】
『収納』……麻袋などに物体を放り込むという光景を再現したもの。自由に出し入れできる収納空間。容量や時間の流れは個人の力量に比例し、一度構築すれば状態の維持に魔力は消費しないが、出し入れ時には質量に応じた魔力を消費する。生きているモノも入れられるが、消失する事がある。
『転移』……転移門の機能を再現したもの。自身だけでなく接触している任意の物体にも作用し、距離や容量は完全に個人の力量に比例する。
『探査』……亜人の視力や視覚を再現したもの。実際に視力を強化している訳ではなく、周囲へ魔素を放って反響する魔素を知覚し、視覚と共感覚を引き起こしているだけなので、可視光線以外の映像を視ることも出来る。
『倉庫』……倉庫に居る光景を再現したもの。容量は個人の力量に比例し、一度構築すれば状態の維持に魔力は消費しないが、出入り時には質量に応じた魔力を消費する。床が存在する正方体の空間で、人間が居住可能。
『氷湖』……物体が湖の氷に閉じ込められている光景を再現したもの。対象を凍らせる訳ではなく、指定位置周辺の動きを止める。距離や範囲や威力は個人の力量に比例し、任意の場所で発動するが、距離に比例して発動時間が遅くなる。
『投影』……蜃気楼を再現したものだが、秘伝と裏ワザにより実質的には荷電粒子砲。距離や威力は個人の力量に比例するが、数ヤードほどしか直進しない。発動までにタイムラグがある。
【その他】
シグブリット辺境伯領……主人公が転居してきた街。アンブロシウス王国の最南端に存在する。
アンブロシウス王国……アドルファ王国の北東に800マイルほど離れた所に在る隣国。
ジルヴェスター辺境伯領……主人公が最初に辿り着いた街。アドルファ王国の最南東に存在する。




