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とある狩人の追憶記  作者: 白眉万丈
第2章
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第29話

■2015/08/15 誤字脱字の修正、及び表現の一部変更を行いました。

第29話




 獣人部隊の過剰殺戮オーバーキルのせいで現場には形のあるものなど特に何も残っていないので、形式だけの検分が終了した諸侯軍と獣人部隊は1700時に撤退を始めた。


日が沈んでも暗闇の中を、そのまま行軍するらしい。


道中に危険生物が全くいない今だからこそ出来る荒業である。


俺たちは当初の予定通り、このまま15マイル奥までの調査を続行する。


1時間に1マイル程のペースで、11マイルほど奥まで進んだ所で、1800時となり日が沈んだので野営し、翌朝第二次調査3日目の0600時に移動を再開した。



 今まで無風状態だったのに、13マイルほど奥まで進んだ所で、突如前方から微風が吹いてきた。


チームリーダーのハンドサインで、一斉にしゃがみ込んだ後、樹木の影に隠れて暫く様子を窺う。


前方は今まで歩いてきたジャングルと一変し、俺が3ヶ月以上前に見たジャングルと同じ状態に戻っている。


体長約3フィート、四肢を含めると全長約8フィートの大きなカエルがそこら中に居るし、全長48フィート以上、直径2フィート以上のティタノボアがそれを捕食している姿も見える。


何かを目指して全長約2フィートの大きなゴキブリが飛んで行ったし、体長約8インチの大きなアリが群れをなしているのも見える。


双眼鏡代わりに『探査』の魔法で遠くを眺めて見ると、サーベルタイガーやデイノニクスなども居ることが分かった。


防毒マスクを脱いでみると、鳥や虫などの生き物が座和めく音が聞こえてきた。


周辺を調査したところ、素手でないと感じられないが13マイル付近に厚さ1フィートほどの淡いエアカーテンみたいなモノが存在している事が分かった。


それによって13マイル以下の、無風状態で虫の鳴く音すら聞こえない死臭の充満した異常なエリアとは完全に分断されている。


 生き物の溢れる状態に戻ったという事は、ここら辺はワイバーンも生息している領域であるという事だが、今回は一応対策も用意してある。


ヘレナから『探査』の魔法を教えて貰った際に、既に体得していた聴覚でのエコーロケーションと似過ぎていたせいで視覚とではなく聴覚と共感覚を起こしてしまって修得に手子摺ったのだが、それを逆に利用して振動を感知する聴覚モードとでもいう様なモノを使う事にした。


ワイバーンの毒には、視覚での認識を阻害する効果しかないらしいので、『探査』の魔法を聴覚モードで使用すれば発見出来る筈である。


 チームリーダーのハンドサインで、前進が再開された。



 レーダーの様に周囲の動体を感知出来るので、聴覚モードでの『探査』の魔法は有効であった。


ワイバーンの姿は裸眼では全く見えていないが、音の反射状況を映像として視る事が出来る『探査』の魔法でははっきりと感知出来ている。


ワーウルフ第4形態の擬態の時とは全く逆である。


動かない標的など遠隔攻撃の格好の的でしかない。


離れた位置から、ワイバーンの頭部に『衝撃』の魔法を連射して気絶させた後、接近して『凍結』の魔法で脳ミソを凍らせてから、『収納』の魔法で格納するだけである。


コイツには一方的に奇襲され、5度も命の危機に晒されたが、今では俺の方が一方的に奇襲可能になった。


仕返しという訳ではないが、他のハンターには全く感知できないので、進路上にいた3匹のワイバーンは全て始末した。


ワイバーンに攻撃する前にハンドサインで皆にその存在を知らせているのだが、毎回半信半疑ながら待機し、ワイバーンが死亡してその姿が認識できる様になると、目を見開いて驚愕していた。



 予定通り15マイル奥までの調査が終了し、13マイル付近のエアカーテンみたいなモノが存在している場所まで戻ってきた。


かなりのスローペースでしか調査出来なかったので、現在1600時である。


久しぶりに、俺の好奇心を満たしてくれる新たな生物たちに出会えた楽しい時間だった。



【名称】

 亜竜目 滴竜科 タラスク

【レベル】

 141


【名称】

 亜竜目 熔竜科 サラマンダー

【レベル】

 168



特に、これら2種類の亜竜を仕留められたのは良い経験になった。


両方共、体高約8フィート、体長約26フィート、アルバートサウルスくらいの大きさの恐竜型生物だった。


タラスクは爬虫類みたいな鱗と皮膚をしているが、背部をリクガメの甲羅のような刺のある外殻に覆われており、尾は長く先がスペード型に尖っている。2匹倒したが、全て同型だった。


サラマンダーの外見はバジリスクと同じであり、3匹倒したが色違いや形状が異なる個体ばかりで、ステータスが読み取れなければサラマンダーとは判断出来なかった。


俺たちはもう一度、防毒マスクを着用してからエアカーテンみたいなモノを潜り抜け、討伐軍本部に向けて駆け足で撤退を開始した。



 深淵の森を2120時頃に抜け、討伐軍本部前に辿り着いた。


初日には、駐留軍200名と諸侯軍500名からなる討伐軍が2個部隊配備されていたし、2日目には諸侯軍100名と獣人部隊100名からなる討伐軍が5個部隊追加されていたはずだ。


しかし、駐留軍200名と諸侯軍500名からなる討伐軍1個部隊の姿しか見当たらない。


討伐軍本部に併設されている医療用の天幕からは、絶叫や唸り声が聞こえるのでかなりの数の負傷者がいるのが分かるし、討伐軍本部の周辺にも百名近くのハンターたちが屯していた。


「ソード!」


ヘレナが抱きついてきたのは嬉しいが、兜を装着していたので、顔面にヘッドバットを喰らってしまった。


「ヘレナは負傷してないか?」


「私は無傷。」


ヘレナの衣服にはところどころに裂け目があるし、血も付着しているので負傷はしたのだろうが、今は無傷の様で安心した。



「そうか、良かった。報告に行ってくるから、また後でな。」


ヘレナにそう言い残して、俺はチーム全員と一緒に討伐軍本部の天幕の中に入った。



 チームリーダーが一通りの説明を終えた直後に、駐留軍と諸侯軍の責任者である士官たちはジルヴェスター辺境伯の元へと報告に向かってしまったので、ヴィクトリアに状況を尋ねた。


「ソードたちの4番隊と17番隊を除いて他のチームは全て、調査3日目の1800時頃に帰還しました。


調査結果は4番隊と同じく、13マイル奥までは無風状態で虫の鳴く音すら聞こえない死臭の充満した異常なエリアで、そこから15マイル奥までは通常のジャングルと同じ状態でした。


しかし、死亡した者はいなかったもののランク4ハンターの60名以上が、ランク5生物との交戦時にかなりの負傷を負っています。


その内、簡易転移門を使って医療用の天幕に直接撤退しなければならなかった程の重傷者も約30名いました。


全くの無傷だったのは4番隊のメンバーだけです。


 先に、4番隊とともに10マイル付近へ赴いた討伐軍第2陣について話しますと、調査2日目の2300時頃には討伐軍本部に戻ってきています。


しかし、点呼中に獣人部隊の1個分隊がいない事が判明したため、直ぐ様、討伐軍第2陣が深淵の森に取って返して捜索しました。


約1時間後に下士官1人の遺体だけ持ち帰って来ましたが、獣人4名は依然として消息不明のままです。


 そして、17番隊とともに9マイル付近へ赴いた討伐軍第1陣ですが、調査2日目の1440時頃に交戦を開始したとの連絡を最後に、1時間に2人ずつ送り出す筈の連絡員が2時間経過しても到着しなかったので、増援を送り込むことになりました。


調査2日目の2100時に出発した諸侯軍400名と獣人部隊400名からなる討伐軍第3陣は、調査3日目の0050時頃に交戦を開始しましたが、約1時間の交戦の末にワーウルフ第4形態に逃げられたので、現在も追撃してしているそうです。


討伐軍第2陣も増援として、調査3日目の0500時に出撃しました。


連絡要員として同行している諸侯軍は無傷ですが、獣人部隊にはかなりの被害が出ているそうで、損耗202、第2形態への変異44、との報告が2100時頃にありました。


皆さんには、当初の予定通り調査4日目にあたる、明日の1200時まで待機して頂きます。


 それと解析の結果、ソードの持ち帰った4本の腕はキメラ第2形態のモノだと確認されたましたが、作戦中のため強制買い取りとなっております。


意義を申し立てることは出来ませんが、一応ギルドの査定価格の2倍の金額が支払われております。」


「キメラの腕が買い取られた件は気にしてない。

それよりも獣人部隊だが、損耗率が4割を超えているから全滅と見做されても仕方ない状況だな。」


「通常なら、こんな状態での追撃など絶対に行わないのですが、獣人部隊かワーウルフ第4形態が死に絶えるまで続行しろ、との命令が王都から駐留軍に届いているみたいです。」


「なるほどな。ありがとう、ヴィクトリア。」


討伐軍本部の天幕を出ると俺は、ヘレナと一緒に水浴びの出来る天幕で身体を洗った後、『収納』の魔法で格納しておいた綺麗な衣服と鎧に着替えた。


その後は、そこら中に配置されている長椅子を2つ確保し、ヘレナと一緒に一眠りする事にした。



<続く>

【人物紹介】

ソード……主人公。本名は、惣田真悟。ステータス上の名前が、シングル・ソード。


ヘレナ……傭兵ギルドの教育担当。ヴィクトリアの従姉妹。ソードと同棲中。


ヴィクトリア……ハンターギルドの契約担当。ヘレナの従姉妹。



【魔法紹介】

『探査』……亜人の視力や視覚を再現したもの。実際に視力を強化している訳ではなく、周囲へ魔素を放って反響する魔素を知覚し、視覚と共感覚を引き起こしているだけなので、可視光線以外の映像を視ることも出来る。


『光球』……太陽の明るさだけを再現したもの。光だけで熱はなく、手元を離れると10秒程で霧散する。


『衝撃』……水中爆発を再現したもの。指定位置に衝撃波を発生させる。距離や範囲や威力は個人の力量に比例し、任意の場所で発動するが、距離に比例して発動時間が遅くなる。


『凍結』……豪雪地帯で雪解け時に出てくる凍死体を再現したもの。対象を凍らせる。威力は個人の力量に比例し、接触している対象に発動する。


『収納』……麻袋などに物体を放り込むという光景を再現したもの。自由に出し入れできる収納空間。容量や時間の流れは個人の力量に比例し、一度構築すれば状態の維持に魔力は消費しないが、出し入れ時には質量に応じた魔力を消費する。生きているモノも入れられるが、消失する事がある。



【その他】

ジルヴェスター辺境伯領……主人公が住む街。アドルファ王国の最南東に存在する。

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