表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある狩人の追憶記  作者: 白眉万丈
第2章
24/78

第24話

■2015/08/15 誤字脱字の修正、及び表現の一部変更を行いました。

第24話



 ヘレナが新人への教育を行っている1ヶ月間、俺は商業系ギルドで魔法を習っていた。


『倉庫』の魔法は予想通り10日間で修得出来たのだが、『転移』の魔法の修得は難航し、結局15日間要する事になった。


転移先が目視出来る場所だと成功していたが、転移先が目視出来ない場所になった途端に何処へ出るか分からなくなってしまったからである。


練習ではレンガを転移しているから良かったが、自身を転移していたら行方不明になっていたかもしれない。


転移先の座標の設定には、天体と視地平との間の角度を用いるにも関わらず、太陽の位置しか把握してなかった事が原因であった。


勿論、地球での天体の配置ならプラネタリウムを作り出せるほど知っているが、この星の星座など未だ一切調べていない。


天測航法みたいに詳しく観測する必要はないとはいえ、最低でもこの街と転移先予定地から見える天体の配置を新たに覚える必要がある。


これも下手に地球の星座を知っているばかりに、覚えるのに苦労する事になった。


空間歪曲を利用しているので、どれだけ遠くへ転移しても必要なエネルギー量は変わらないが、転移先の座標を設定出来なければ、目視出来る場所へしか転移は出来ない。


いつまでも時間を浪費出来ないので、目視出来る場所への転移を繰り返し、天体と視地平との間の角度を1箇所ずつ覚える事で、当面の解決策とした。


天体の配置を覚えるまでは、俺が行った事の無い場所へは転移出来そうにないのが残念だ。


 24時間走くらいは平気で行えるとはいえ、『転移』の魔法を1度起動するだけでもフルマラソンを行ったのと同じくらいの疲労感が発生するし、転移する質量が増えると指数的に疲労感が増すので、戦闘中の多用は難しい。


この疲労感はビデオゲームで言うところのMPの消費のような気がするが、地球で自身のスタミナを数値化している人間がいないのと同じく、この世界の人間も魔力を数値化しないので、そんな概念など存在しない。


 その他にも商業系ギルドの契約担当から勧められた4つほどの『秘伝』を修得出来たが、中級層の人間が月に大銀貨6枚、約600ドルもあれば暮らしていける世界で、『秘伝』の購入費用として合計大金貨千枚、約1千万ドルも支払った。


個人の狩人や傭兵が武装を整えるにしては高額な支出である。



 1ヶ月間ぶりにヘレナとヴィクトリアとでスリーマンセルを組んで深淵の森を調査するために、俺達は今、外周道路を歩いている。


「この2ヶ月間ほど、深淵の森でのランク5以上の生物の目撃情報がありません。

ミクローシュ辺境伯領でのスタンピードと時期が重なりますので、ギルドの上層部はそちらへ流れていったのではないか、と考えておりますが、念のために深淵の森のどれくらいの領域に影響が出ているのかを調べます。」


「なあ、ヴィクトリア。契約担当ってのは調査も業務なのか?」


「違います。普段こういった仕事を専門に請け負っていたハンターが亡くなってしまったので、契約担当としてではなく、ハンターとして来ています。」


「そう言えば、研究所での討伐失敗でランク5ハンターが4人も殉職したらしいな。」


「それだけではありません。駐留軍と諸行軍でもランク5の兵士が亡くなっているそうです。

ランク5は碧翠大陸全土で200人ほどしかいない貴重な人材なのに、残念でなりません。」


「秘伝が増える。」


「増える?」


「ヘレナは、売り出される『秘伝』が増える、と言っているのです。」


「どう言うことだ?ヴィクトリア。」


「研究所の件では、300人以上の兵士やハンターが亡くなっていますので、その中には子供のいない方もいる筈です。

その亡くなった兵士やハンターしか『秘伝』を継承する者がいなかった場合、その親御さんや血族は失伝するくらいなら『秘伝』を売りに出します。」


「養子を採って伝えるとかはしないのか?」


「『秘伝』は血族以外には修得が難しいモノばかりなので、修得できるかどうか分からない養子を何年も養うよりは、信用のある実力者に売って継承して貰った方が効率的であると考えます。

仮に子供が出来なかった場合、私でもそうします。」


「信用のある実力者?」


「大金を持っている、ランク4以上のハンターや兵士などの事です。」


「あの巫山戯た金額は信用があるかどうかの確認も兼ねていたのか。そう言えば、勧められた『秘伝』の説明書きにはランク5以上限定とか書いてあったな。」


「血族ではない方に、血族が代々研鑽してきた結晶を譲るのですから、当然の代価だと思います。

あの研究所には、各ギルドからも研究者が出向していましたから、ソードが修得したモノの中には、そういった『秘伝』もあったのではありませんか?」


「確かに、6つとも商業系・工業系・土木系ギルドの幹部だった人間が売り出したばかりの『秘伝』だと言っていたから、各ギルドの研究者の血族が売りに出したモノかも知れない。」


「誰が売ったモノなのかは聞いていませんでしたが、全部ハンターや傭兵ではない『秘伝』だったんですね。」


「ソードは変わり者だから。」


「かなり、ご機嫌な魔法だ。そのうち、ハイなタンゴを見せてやるよ。」



 今日の予定は、南門から出て、前回ワータイガーと遭遇した場所、グリフォンの巣が在った場所、ワーウルフ第3形態を発見した場所などを経由して、東門から戻る事になっている。


俺たち全員が『探査』の魔法を使いながら深淵の森を進んでいるのだが、確かにランク5以上の生物を1度も見かけない。


より正確に言うなら、体長が3フィート以上の生物を見かけない。


体長1フィートほどのウサギくらいの大きさのネズミなどが大繁殖している事からして、捕食生物たちが殆ど居ないのだろう。


いつから捕食生物たちが居なくなったのかは分からないが、ざっと見渡す限り以前の10倍近い数の小動物が居るように思える。


確かこのネズミも生後3ヶ月から出産し、2ヶ月ほどに1回10匹程度の仔を生むと聞いたことが有る。


死ぬ筈だったモノが死ななかっただけの状態なので、今は未だ大した影響はないだろうが、このまま生まれる筈の無かったモノまで増え続けたら、深淵の森の浅い領域にも深刻な影響が出るかもしれない。


俺たちは『氷湖』の魔法で広範囲の空気を固めて小動物たちをまとめて窒息死させ、『収納』の魔法で片っ端から死体を格納していく。


『氷湖』の魔法は発動が遅いから高速で動き回る高レベルの生物が相手だと、不意打ちか防壁代わりにしか使えないが、こういった足の遅い生物の群れには効果覿面である。


 この深淵の森では、強い生物ほど奥に進む傾向があるのだがキメラだけは例外らしいので、少し心配していたが、ワーウルフ第3形態は前回遭遇した場所に居なかった。


例え出食わしても『転移』の魔法を修得した今ならいつでも逃げられる。


ヘレナとヴィクトリアが、『収納』の魔法の容量限界まで小動物たちの死体を格納した頃に、東門の正面付近に辿り着いた。


今からこの数量を数えるのは無理なので、ギルドでは調査結果のみ報告し、買い取りは翌朝から行う事にして、解散した。



<続く>

【人物紹介】

ソード……主人公。本名は、惣田真悟。ステータス上の名前が、シングル・ソード。


ヘレナ……傭兵ギルドの教育担当。ヴィクトリアの従姉妹。ソードと同棲中。


ヴィクトリア……ハンターギルドの契約担当。ヘレナの従姉妹。



【魔法紹介】

『倉庫』……倉庫に居る光景を再現したもの。容量は個人の力量に比例し、一度構築すれば状態の維持に魔力は消費しないが、出入り時には質量に応じた魔力を消費する。床が存在する正方体の空間で、人間が居住可能。


『転移』……転移門の機能を再現したもの。自身だけでなく接触している任意の物体にも作用し、距離や容量は完全に個人の力量に比例する。


『氷湖』……物体が湖の氷に閉じ込められている光景を再現したもの。対象を凍らせる訳ではなく、指定位置周辺の動きを止める。距離や範囲や威力は個人の力量に比例し、任意の場所で発動するが、距離に比例して発動時間が遅くなる。


『収納』……麻袋などに物体を放り込むという光景を再現したもの。自由に出し入れできる収納空間。容量や時間の流れは個人の力量に比例し、一度構築すれば状態の維持に魔力は消費しないが、出し入れ時には質量に応じた魔力を消費する。生きているモノも入れられるが、消失する事がある。



【その他】

ジルヴェスター辺境伯領……主人公が住む街。アドルファ王国の最南東。


ミクローシュ辺境伯領……アドルファ王国の最北東。


碧翠大陸……アドルファ王国が存在している大陸。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ