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とある狩人の追憶記  作者: 白眉万丈
第2章
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第16話

■2015/08/15 誤字脱字の修正、及び表現の一部変更を行いました。

第16話




 俺たちはグリフォンの巣を昨日発見した位置まで戻ってきた。


『探査』の魔法で周囲を探ると、グリフォンは巣の中の1匹だけでなく、巣を囲むように他にも3匹いる事が分かった。


グリフォンはライオンみたいに群れる生物らしいので、昨日は雌が狩りにでも出払っていて、たまたま雄しかいなかったのかもしれない。


 俺が「一匹ずつ誘き寄せて確実に殺そう」とヘレナに伝えようとしたときには既に、昨日と全く同じ様にヘレナの右手には石が握られており、左手でグリフォンを指さしながら、「グリフォンへ向かえ」とばかりに顎を振った後、石をグリフォンに投げつけた。


「な!?」


ヴィクトリアが何か言おうとして口を抑えたが、俺は気にせずに『強化』の魔法を発動し、『土の槍』の魔法で槍を2本作り、1本目を俺から30ヤード程の場所にいる1番手前のグリフォンに投擲した。


グリフォンが1本目の槍を避け始めた瞬間に、予想した未来位置に向けて2本目の槍を投擲し、眼球を貫いて脳ミソを破壊したが、ここまでは昨日と全く同じである。


1匹目のグリフォンが倒される直前に、2匹が俺に向かって駆け出し、1匹が飛び立とうとしていた。


俺はグリフォンの頭部を消し飛ばそうとして『突撃』の魔法を2発放ったが、右側を駆けてくる奴には避けられた為に単に吹き飛ばすだけになってしまった。


左側を駆けてきたグリフォンには直撃し、頭部が消し飛んだ。


頭上から襲いかかってきたグリフォンと俺の間に、防壁代わりに『氷湖』の魔法で自分の周囲の空気を紡錘形のドーム状に固めて無色透明な障壁を作っておき、時間稼ぎをしている間に先ほど吹き飛ばした奴にもう一度『突撃』の魔法を放ってトドメを刺した。


隙かさず、頭上のグリフォンの相手をしようとしたら、障壁の先端に全速力でぶつかったらしく、ふらついた状態でゆっくりと俺の前に落ちてきた。


俺がトドメとして頭部に放った『衝撃』の魔法により、グリフォンは目と鼻から血を流して絶命した。



 状況が終了したので確認するために俺が振り返ると、ヴィクトリアは文句を言いたげにヘレナを睨みつけていたが、ヘレナは「面倒臭い」と言いたげな顔をしながら明後日の方向を見ていた。


「ヴィクトリア。」


俺が声をかけるとヴィクトリアは渋々こちらへ歩いて近づいてきた。


「合格です。ギルドへ戻りますので、グリフォンの死体を格納して下さい。」


ヴィクトリアはグリフォンの死体を見た後、俺を見ながらそう告げると、またしても何か言いたげにヘレナを睨みつけたが、ヘレナは知らん顔を決め込み、踵を返して歩き出した


俺は『収納』の魔法を使ってグリフォンの死体を手早く回収してから、彼女たち駆け寄り一緒に帰路についた。



 先ほど縛って転がしておいたワータイガーの姿はなかった。


俺との戦いで流した血痕しかない所をみると、この場で何かに食われた訳ではなく、自力で逃げたか、連れ去られたかしたのだろう。


そのまま通り過ぎたのだが、俺たちはワータイガーと戦った場所を少し離れたところで、大量の亜人たちに半包囲されて襲われた。


後でヴィクトリアに尋ねたら、理由までは分からないが亜人はキメラの血の匂いに誘引されるものの、一定距離以上は近寄らずに遠巻きに様子を窺う習性があるらしい。


その集まっていた亜人たちに向かって俺達が進んでいただけで、奴らは俺達を狙っていた訳ではない。


しかし、亜人の集団の存在に最初に気づいたヘレナは躊躇なく、『土の槍』の魔法で作った槍を奴らのど真ん中に向かって連投し始めてしまった。


「な!?」


またしてもヴィクトリアが何か言おうとしたが、俺とヴィクトリアが亜人たちの存在に気づいたときには既に手遅れで、百匹以上の亜人を3人で処理して死体を回収するしかなかった。


そしてコイツらを始末するのに手間取って、かなりの時間が経過したのも事実で、こんな浅い領域に居ない筈の嫌なヤツまで呼び寄せてしまった。


「確認戦果112匹。損耗なし。負傷なっ、!?」


 丁度、最後の亜人の死体の回収が終わって、目の前には何も居なかった筈なのに、突然2フィート未満の至近から大きな口が現れ、俺は咬み付かれそうになっていた。


事前に何度もシミュレートしておいた通りに咄嗟に身体が動き、その喉の奥へ向けて右手から『爆裂』の魔法を放つとともに、覆い被さって来る上顎に向けて左手から『突撃』の魔法を放った。


現在の俺の魔法は、ゼロ距離攻撃や遠隔攻撃ならヘレナの倍以上の威力がある。


しかし、中近距離攻撃はヘレナの2割程の威力しか無く、この世界の中折式単身散弾銃や手榴弾と同程度、俺の持ち込んだショットガンやグレネードランチャーの半分ほどの威力しかない。


恐らく中途半端に火薬の原理を知っているせいで、これらの威力が落ちているのだと思われる。


それを踏まえて対ワイバーン用に殺傷とストッピングを別の魔法で同時に放つ練習を行ってきたお陰で生き残ることが出来た。


先ほどまで俺が担いでいたポールアックスが、魔法を放つ際に手放したために、ザクッと音を立てて地面に突き立った直後、俺にブチ当たって跳ね返されたかのようにワイバーンは吹き飛び、地響きを立てて全長約26フィートもの巨体を横たえた。


毎回こいつの奇襲にはヒヤヒヤさせられるが、今回は正面から突如現れたのを確かに見た。


「ド畜生。うぜェにも程がある。」


ワイバーンの何がムカつくかって、俺から余裕を無くすのが一番ムカつく。


「あれがワイバーンの迷彩ですか。」


俺が悪態をつきながらポールアックスの泥を払っていると、ヴィクトリアがワイバーンの死体を見つめながら、そう呟いた。


「迷彩?」


「ワイバーンは認識を阻害する毒を周囲にバラ撒いた後、自身の臭気を遮断する事で、数秒ほど直視されたくらいでは存在を気づかれない状態に出来ます。

事実上、透明な生物を相手にしているのと大差ないといえます。

但し、口の中には認識を阻害する毒もありませんし、口臭も遮断されていませんので、瞬時に対応出来なければ無意味ですがワイバーンが口を開いた瞬間には誰でも存在に気付く事が出来ます。」


「なるほど。ありがとう。」


「それと、出来ましたらワイバーンだけでもハンターギルドに買い取らせて下さい。」


そういえば、ハンターギルドに登録した際にも同じ様な事を言っていた記憶がある。


「了解した。」



ワイバーンの死体を回収しようとした俺に向かってヴィクトリアが頼んできたので、ヘレナが頷くのを見てから承諾し、ヴィクトリアに回収を譲った。



 昨日と同じく、ハンターギルドの解体場に到着したヘレナは、解体担当の爺さんに声を掛け、3つの作業スペースを借りた。


3人共そのスペースに『収納』の魔法で格納しておいた自分の獲物を並べた。


暫くすると爺さんに連れられて中学生くらいの少年が9人やってきた。


爺さんが俺たちの獲物の種類と数と状態を書類に記入し、ヘレナがギルドカードを見せた後で署名した。


昨日と同じように爺さんの号令で少年たちが一斉に俺達の獲物に向うのかと思っていたら、少年たちの視線はワイバーンの死体に釘付けで、爺さんに拳骨を落とされてやっと少年たちは解体に取り掛かった。


「3等分。」


俺がそんな光景を眺めて笑っている後ろで、ヘレナは昨日と同じく、爺さんから受け取った書類を受付にいる買取担当者へ渡し、引き換えに硬貨と明細書を受け取って署名を済ませたみたいで、硬貨を何枚か乗せた掌を俺へ差し出した。


「おめでとうございます。

これで正式にランク5のハンターとなります。」


ヴィクトリアも俺の昇格手続きを済ませてくれていたみたいで、ランク1と刻印されている緑色のギルドカードと引き換えに、ランク5と刻印された銀色のギルドカードをヴィクトリアから受け取った。


その後、ヘレナはヴィクトリアから、グリフォンの群れに向かって石を投げた件や亜人の群れに向かって槍を投擲した件について説教されていたが、案の定暖簾に腕押し状態だった。


「帰ろう。」


ヴィクトリアがため息をついて諦めた頃に、ヘレナはそう言ってギルドを出て行った。


俺もヴィクトリアに挨拶した後、ヘレナを追って家路についた。



<続く>

【人物紹介】

ソード……主人公。本名は、惣田真悟。ステータス上の名前が、シングル・ソード。昇格試験中。


ヘレナ……傭兵ギルドの教育担当。ヴィクトリアの従姉妹。主人公と同棲中。試験監督官として同行。


ヴィクトリア……ハンターギルドの契約担当。ヘレナの従姉妹。試験監督官として同行。



【魔法紹介】

『土の槍』……土を固めて投げ槍の一種であるピルム・ムルスを再現したもの。重いので体力を要する。質量は個人の力量に比例し、コンクリートくらいの強度を有するが、手元を離れると10秒程で霧散する。


『爆裂』……手榴弾の爆発を再現したもの。対象を爆破する。威力は個人の力量に比例し、火の玉を投擲後に対象との接触で無音発動するが、手元を離れると10秒程で霧散する。


『突撃』……カノン砲での砲撃の着弾を再現したもの。対象を吹き飛ばす。威力は個人の力量に比例し、火の玉を投擲後に対象との接触で無音発動するが、手元を離れると10秒程で霧散する。


『衝撃』……水中爆発を再現したもの。指定位置に衝撃波を発生させる。距離や範囲や威力は個人の力量に比例し、任意の場所で発動するが、距離に比例して発動時間が遅くなる。


『氷湖』……物体が湖の氷に閉じ込められている光景を再現したもの。対象を凍らせる訳ではなく、指定位置周辺の動きを止める。距離や範囲や威力は個人の力量に比例し、任意の場所で発動するが、距離に比例して発動時間が遅くなる。


『探査』……亜人の視力や視覚を再現したもの。実際に視力を強化している訳ではなく、周囲へ魔素を放って反響する魔素を知覚し、視覚と共感覚を引き起こしているだけなので、可視光線以外の映像を視ることも出来る。


『強化』……亜人の頑丈さとパワーやスピードを再現したもの。実際に筋力や筋肉を強化している訳ではない。


『収納』……麻袋などに物体を放り込むという光景を再現したもの。自由に出し入れできる収納空間。容量や時間の流れは個人の力量に比例し、一度構築すれば状態の維持に魔力は消費しないが、出し入れ時には質量に応じた魔力を消費する。生きているモノも入れられるが、消失する事がある。

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