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とある狩人の追憶記  作者: 白眉万丈
第2章
13/78

第13話

■2015/08/15 誤字脱字の修正、及び表現の一部変更を行いました。

■性的な描写がありますので、ご注意下さい。

第13話



 俺は服を着替えながら、昨夜のヘレナとの性行為の合間の休憩中に話した色々な事を思い出して情報整理を行っていた。



 ふと、流暢に罵声を放っていた姿と今の無口な姿とのギャップが気になったので、遠回しに理由を尋ねてみる事にする。


聞きたい事は沢山あるので、話しを逸らされたら別の話題に変えれば良い。


「なあ、ヘレナ。訓練中は怒り顔だったし饒舌だったのに、普段の顔は違うんだな。」


「幼い頃から父親のヴィンセントに武術を教えられた。気づいたら無表情で無口になってた。そのせいでヴィクトリアたちが過保護。」


ストレートに回答が来たので、他にも尋ねた奴がいたのかもしれない。


俺の育った郷では子供は全員、物心がつく前から武術を叩きこまれていたのだが、稀にヘレナと同じ状態になる子が出てくるので、そうじゃないかと思っていた。


数百年に渡る研鑽のお陰で、俺の郷には確立された治療法も存在していたが、ここにはなかったのだろう。


酒場バルではヘレナも笑い声を上げていたから、感情が無いわけじゃないんだろ?」


「ん。昔よりは良くなった。」


どうやら少しずつ改善しているみたいである。


「ヘレナは無気力どころか積極的だしな。」


「情熱的でもある。」


そう言ってヘレナは再び俺に伸し掛かってきた。



 ヘレナに散々良いように蹂躙されたので、俺は冗談のつもりで尋ねてみた。


「なあ、ヘレナ。この街では、女性が男性に夜這いをするのが普通なのか?」


「ん?何処の街でも、女が子どもを産む相手だと見定めたら夜這いするのは普通。」


「子ども?」


「そう。」


「男性に拒否権はないのか?」


「女の夜這いを断った男は街から追放される。」


どうやら風習らしい、それも結構ヘビーな。


「何で?」


「子孫を残すのが最優先だから!」


ヘレナは「こいつは何当たり前の事を聞いてるんだ?」と言いたそうな顔をしながら、そう答えた。


肌の色と瞳の色と口数と無表情を除けば、ヘレナの外見はケイにソックリだから良かったが、俺の苦手なタイプの女性から夜這いをされていたら面倒な事になっていたかもしれん。


命の危険や盗難の心配ではなく、男が貞操を守るために戸締まりに気を付ける必要があるとは思わなかった。



 いつまでも俺が稀人マレビトみたいな余所者であることが隠し通せると思うほど甘い考えは持っていないので、多少なりとも好意を持ってくれている人間に、マレビトがどんな目で見られているのかを確認しておく事にした。


「なあ、ヘレナ。マレビトって知ってるか?」


「ん。外国人。」


「外国人って。まあ、そうなんだが。もしも此の街にマレビトが現れたらどうするんだ?」


「別に。」


「捕まえたりとかはしないのか?」


「何のために?」


ヘレナの喋り方からすると、マレビトは特に迫害も忌避もされている様には感じない。


「知識や技術を吐かせるためとか。」


「遺跡があるから役に立たない。」


「遺跡?」


「先史文明の遺産。

マレビトよりも凄い知識や技術が残っている。」


「なるほど。」


思い切って告白してみて、嫌な感じだったら、冗談で誤魔化してみる事にした。


「実は俺も、この世界の人間ではなく、マレビトである可能性が高い。」


「そう。」


ヘレナは「それがどうかしたのか?」と言いたそうな顔をしながら答えた。


これでも俺は、告白するのに相当躊躇ったのだが、拍子抜けしてしまった。


「それだけか?他に何かないのか?」


「何かして欲しい?」


「別にそういう訳じゃないが。」


「じゃあ、襲ってあげる。」


そう言って笑いながら、ヘレナは再び俺に伸し掛かってきた。



 深淵の森にあれだけ湧いて出てくる亜人と呼ばれるあの獣頭人身の生物だけでなく、昆虫類や爬虫類なども城壁都市に近づこうとしないのは何故なのかを尋ねてみた。


「なあ、ヘレナ。第1の城壁を亜人とかが乗り越えてこないのは何故なのか知ってるか?」


「第1の城壁?」


「えっと、1番外側の城壁の事だよ。」


「第3郭。」


「あれが第3郭って事は、1番内側の城壁が第1郭になるのか?」


「そう。」


「その第3郭を亜人とかが乗り越えてこない理由を知ってるか?」


「第3郭から第4郭まで魔道具が大量にバラ撒かれている。人間と馬以外のレベル64以下の生き物は、城壁に近づくのを嫌がる。」


「魔道具と言うのは何だ?」


「認識を阻害する効果がある装置。」


「認識阻害とは、幻覚剤でも散布しているのか?」


「モグラ避けみたいに近づくのを忌避させる仕組みらしい。詳しいことは知らない。」


「でも、街中でも鼠や蛇を見かけた事があるけど。」


「小さな動物なら馬車に忍び込んで侵入するらしい。」


「なあ、ヘレナ。第4郭って何だ?1番外側の城壁は第3郭じゃないのか?」


「南東部と東部に第4郭の作りかけが残っている。」


「そういう事か。じゃあ、魔道具の効果は永久に保つのか?」


「2年間くらいしか保たない。放っとくと認識阻害具は土塊に戻る。定期的に新しいのをバラ撒いてる。」


産廃の山にならず自然分解するのは良いが、電化製品のバッテリーみたいに寿命があるのか。


「なあ、ヘレナ。そういえば第1郭の中では、虫くらいしか見かけた事がないけど、別の魔道具が使われているのか?」


「第1郭には障壁を発生する結界具がある。人間と馬以外のレベル64以下の生き物は撥じかれて侵入できない。でも小さな虫くらいだと人間や馬に引っ付いて入ってくる。」


「なるほどな。レベル64以下の生き物なら小動物しか絶対に入って来ないという訳か。」


「違う。スタンピードが発生したら街が壊滅する事もある。」


「スタンピードと言うのは何だ?」


「危険生物や害獣が何かから逃げてきて、進路上に樹木や草花が少ない場所があると暴れる。街を目指している訳ではないので魔道具は役に立たない。」


「でも、第1郭には障壁があるから大丈夫なんじゃないのか?」


「レベル65以上の生物がいたら役に立たない。最悪の場合は街が消滅する。」


「なあ、ヘレナ。消滅っていうのは大げさなんじゃないのか?」


「11年前にもこの街で小規模なスタンピードが発生した。一晩で第1郭の外側が壊滅して約3割の市民が亡くなった。」


「約3割って、現在の人口が約10万人だから約3万人くらいが亡くなったのか?」


「違う。スタンピード以前は15万人くらい住んでた。」


「4万人以上って事か。」


「この時に助かったのは石造りの頑丈な家に住んでいた人だけ。石造りでも、壁や扉が薄いとか窓が大きい家は助からなかった。」


「しかし、ヘレナ。そのスタンピードっていうのは、そう頻繁にあるものじゃないだろ?」


「十数年に1度は必ず発生する。短いと5~6年、長くても30年以内。」


「そんな災厄の種が詰まっているなら、何故他の街に移らないんだ?」


「この世界では、何処へ行っても一緒。此処は郭が3つもあるだけマシ。」


「他の街の郭は少ないのか?」


「アドルファ王国では、王都とこの街以外は1つか2つしかない。」


「そんな勢いで人間が死んでたら滅亡しないか?」


「だからこうやって、子孫を残す事を最優先にしてる。」


そう言ってヘレナは再び俺に伸し掛かってきた。



 こんなに連続で女を抱いたのは十代の頃以来なので流石に眠くなってきた。


「なあ、ヘレナ。そういえば、下等竜を殺したせいで異常な睡魔に襲われる事ってあるのか?」


「急激にレベルアップすると身体が強くなろうとして眠くなる。過酷な訓練を行った後の疲労と超回復みたいなモノ。」


この話題をこのまま続けるとヘレナがまた伸し掛かってきそうなので、話題を変える事にした。


「ヘレナ。貯水池の水は、何処から引き込まれているか知っているか?」


「北西の森林地帯にある川の上流から用水路で引き込んでる。」


「じゃあ、下水処理した水も堀から用水路を伝って川へ戻しているのか?」


「下流へ流してる。」


「川が氾濫したら、街に大きな影響があるんじゃないのか?」


「街側の川岸だけ大規模な護岸工事が施してある。」


「大掛かりな工事をしたんだな。」


「遺跡。」


「遺跡を再利用しているのか?」


「第1郭より外側の建物と第4郭だけ後から作った。他は全部遺跡。」


「それは凄いな。」


遺跡と云うからには碧翠暦以前の建造物のはずだから、2700年以上昔にも結構発達した文明があった事になる。


第1郭内の建物は、当然修繕などはしているだろうが、築数十年程度にしか見えない。


ある程度の未知の生物を見終わったら、遺跡の探索を行うのも面白そうである。


未知の生物といえば、亜人と呼ばれている獣頭人身の生物を解体している場面を見たが、あれは食えるのか?


「なあ、ヘレナ。ハンターギルドで亜人が解体されていたが、あれは食肉にする為か?」


「そう。」


猪が直立歩行出来る様に進化したのがオークだとするなら、そんなに肉質は変わっていないのかもしれない。


それに、地球でも猿を食う地域があったので、2足歩行していても食材として扱われるのは理解出来る。


これからハンターになる身としては、無駄な殺生にならないに超したことはない。


「なあ、ヘレナ。高ランクのハンターほど少数で行動するのは、何か特別な理由でもあるのか?」


「ランクが高くなるほど攻撃力が大幅に上がる。連携による相乗効果よりも、巻き添えによるデメリットの方が遥かに大きくなる。」


既に俺でも手榴弾やショットガンと同程度の威力の魔法を放てるようになったが、初日に見せて貰ったヘレナの魔法は重迫撃砲ほどの威力があった。


アサルトライフルやショットガンで戦っているなら射線には気を使えるが、迫撃砲をメインウエポンにして戦闘を行う様なモノなので、誤爆を恐れて少数になるのも分かる気がする。


「そんなに威力の高い攻撃をしなければ良いんじゃないか?」


「無理。亜人や亜竜も魔法で攻撃してくる。」


俺が見たこと無かっただけで、人間だけでなく亜人やドラゴン系の生物も魔法を使えるらしい。


俺が仕留めたあの下等竜は、やはり首の怪我のせいでブレスが使えない状態だったのだろう。


「アイツラも同じ様な魔法を使うのか?」


「亜人は人間と同じ魔法。何かの現象を真似たモノ。ドラゴン系の生物は独自の魔法。」


「なるほどな。ありがとう。」


「じゃあ、さっきの続き。」


そう言ってヘレナは再び俺に伸し掛かってきた。


 その他にも図書館では書籍が多過ぎて、上手く調べられなかった情報を仕入れることが出来た、有意義な一夜ではあったが疲れた。



 「ハンターギルドへ行く。付いてきて。」


装備を着け終えたヘレナは、そう言うと俺の返事も待たずにアパートを出て行った。


俺は急いで追いかけ、一緒にハンターギルドへ向かった。


ハンターギルドにつくとヘレナは、受付で契約担当ヴィクトリアを呼び出した。


走り寄ってきたヴィクトリアがヘレナに抱き着いた後、色々と話している内容からすると、どうやら2人は義理の姉妹みたいな関係らしい。


「明日、彼の昇格試験。予約して。」


俺は事前に何も聞いてなかったが、どうやらヘレナは、ヴィクトリアに俺の昇格試験の予約を申し込んでいるみたいである。


ハンターギルドでの昇格試験の手続きを済ませると、ヘレナはヴィクトリアと打ち合わせや消耗品の購入などを始めたので、俺は掲示板を眺めながら酒保で朝食を取ることにした。


シネマみたいに、弱い奴ほどよく吠える場面でも見られるかと期待したが、若い奴らは5~6人で、ベテラン勢は2~3人で、真剣に打ち合わせをしている。


どうやら、此処に居るハンターたちは精鋭揃いのようだ。



 「深淵の森へ行く。付いてきて。」


ヘレナが俺にそう告げ、ハンターギルドから出て行こうとした瞬間、それまで座和めいていたハンターギルドの中が静まり返り、一斉に俺へと視線が集中した。


何名かは、ハンターギルドの審査担当ペドロみたいに俺を数秒ほど凝視してから、目を見開いて驚愕した。


恐らく、俺のステータスを読み取ったのだろう。


覗きみたいなので普段は勝手に読み取ったりしていないが、仕返しに俺も彼らのステータスを読み取ってやった。


俺は視線に気づかない振りをしてヘレナを追いかけ、一緒にハンターギルドを後にした。


 驚愕した視線の意味が気になったので、ヘレナに称号について尋ねてみた。


「下等竜や亜竜を殺めし者ってのは、そんなに珍しいのか?」


「この街に下等竜を殺した事がある者はいない。

それどころか全世界で10人くらいしか今はもういない。

亜竜を殺した事があるのもこの街では私だけ。」


 何となくそんな予感はしていた。


俺がレベル87なのに対して、先ほどハンターギルドに屯していた連中は、レベル17〜32であった。


資料によると亜竜はレベル130~250で、下等竜はレベル260〜510である。


下等竜ドラゴンを相手にした時に強力な銃火器がなければ、俺も今頃は生きていなかっただろう。


気配から判断してハンターギルドに屯していた彼らでは、下等竜どころか亜竜すらも殺す事は不可能である。


「それに、私が殺したのは亜竜1匹だけ。加護なんかない。」


俺が亜竜を殺したときには、特別なことをやった記憶が無い。


「亜竜を殺せば漏れ無く加護が貰える訳じゃないのか?」


「正確な数は分かってないけど、10匹以上殺さないとダメ。」


そういわれると確かに、ワイバーンを4匹とバジリスクを7匹倒したので条件は合っている。


 俺がヘレナから教わった魔法には、ショットガンや手榴弾ていどの威力があったので、ヘレナなら下等竜くらい楽に殺せそうな気がする。


「亜竜や下等竜は魔法で殺せないのか?」


「殺せるけど、離れると威力が霧散するし、近いと自爆する。」


「自爆する、とは?」


「下等竜には障壁があるから、攻撃魔法が突然目の前で撥かれて爆散する。」


「あぁ、そういや、銃撃を撥じかれたな。

霧散する、というのはどう云う事だ?」


「攻撃が近づいていく間に少しずつ消えていく。」


良く分からんが、消防車が遠距離から放水した時みたいなイメージか?


「じゃあ、どうやって倒しているんだ?」


「1人が魔法で牽制して、その他が武器で削る。」


「なるほどな。」


この辺はビデオゲームのドラゴン退治と大差ない気がする。


「ところで、深淵の森へ何しにいくんだ?」


「ランク5への昇格試験の対象は、レベル65~128の危険生物。

深淵の森にはグリフォンがいるから、明日のために居場所を特定しておく。」


やはり、グリフォンみたいな生物もいるのか。



<続く>

【人物紹介】

ソード……主人公。本名は、惣田真悟。ステータス上の名前が、シングル・ソード。


ヘレナ……傭兵ギルドの教育担当。


ヴィクトリア……ハンターギルドの契約担当。

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