第12話
■2015/08/15 誤字脱字の修正、及び表現の一部変更を行いました。
■性的な描写がありますので、ご注意下さい。
第12話
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俺は今まで借りていた食料や衣服、武器、硬貨などの補給品を精算する事にした。
資金源は、懸賞金みたいなモノである。
実はハンターギルドからの帰り道で、貴族の子女が誘拐される現場を目撃した。
後を付けて、アジト内に居た誘拐犯と思わしき者たちを全員叩きのめして、囚われている者たちを開放した後、アジトに残されていた武器や鎧の一部と、新品の衣服類を数着ほど、それと全ての金貨を懸賞金代わりに頂戴したという訳である。
馬車を使って運びだした戦利品を自室に放り込んだ後、馬車はアジトの辺りへ放置した。
軍事活動費として見るとピーナツ代程度でしか無いが、小市民的な生活を送るには十分過ぎる程の資金が手に入った。
無断借用とはいえ今まで何度か補給品でお世話になった留守宅には、相場よりも多い代金をおいてきた。
当面必要のない金貨を入れた袋は、自室の居間の床板の下に穴を掘って埋め、木材で補強して床板を戻しておいた。
◇
装備を整えてから、ヴィクトリアに紹介された傭兵ギルド『エスパダニャ』へ赴いた。
エスパダニャは、護衛と訓練および賞金クビの討伐や捕獲が専門の傭兵ギルドで、紛争や戦争への派遣などは一切行っていない変わりものの集団らしい。
ヴィクトリアからの紹介状を見せたら、1時間ほどの説明を受けた後、登録は無事に終了した。
傭兵ギルドの契約担当者に、魔法を教える事が出来る教師の紹介を依頼すると、一長一短の説明が記載された十名の人相書みたいな文書を見せられた。
「此の中で、最も短期間で教える事に成功した者にお願いしたい。」
と俺が注文するとエスパダニャのナンバー3の実力者でもある教育担当を推薦された。
「この教育担当は、短期間で教える事が上手いというよりは、生徒が短期間で終了させようと必死になるほど、鬼のように扱くといった方が正しいのですが、宜しいですか?」
「望むところだ!」
契約担当者の親切心は有難いが、俺には鬼軍曹からの苛烈な訓練を熟してきた自信がある。
専属教育の最短期間は2週間、毎日12時間の訓練を行う。
魔法を使える様にならなかった場合は追加料金を支払って延長するか、依頼失敗として半額を払い戻すかを選ぶ。但し、依頼失敗を選んだ場合は同じ教官に教わる事は二度と出来ない。
などの説明が記載されている契約書を契約担当者から渡された。
俺は契約書に署名と血判をし、最短コースの料金、大金貨5枚、約5万ドルを支払った。
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契約担当者に別室へ案内されて、対面した教育担当の名前は『ヘレナ』、未だ21歳なのにレベル70を超えており、天才と呼ばれているらしい。
俺の事をサヴァン症候群の1種と断定した医者は、「若くして天才と呼ばれる者は、異常な環境で育ったか、能力が大幅に偏っているか、何処かが壊れているか、の何れかでなければおかしい」と力説していたが、ヘレナも愛想がないと云うよりは、無表情や無感情と云った方がシックリとする女性であった。
ヘレナの容姿は、身長約5.7フィート、黒髪と青色の瞳の黒人種で、大きな乳房と引き締まったウエストをしている。
俺の嫁のケイは日本人だから濃褐色の瞳に黄色人種ではあるが、その他は切れ長の目をした顔立ちだけでなく、髪型やプロポーションや体格に至るまで、ヘレナはケイにソックリと言っても良いくらいに似ていた。
更にヘレナの見た目は、ケイと同年代の20代後半に見える。
もしかしてハンターギルドの契約担当のヴィクトリアも、20代後半に見えたが実は未だ若いのかもしれない。
翌朝が訓練初日だが、挨拶の序に色々とヒアリングされ、俺がステータスを読取れる、という事を聞き出したヘレナは、既に魔素を操っているのに魔素を感じていないのは、腕を振っているのに腕の存在を感じていないのと同じであると説明するなど、訓練に関係する座学を1時間ほど行ってくれた。
その説明によるとこの世界の魔法は、ゲーム内の現象をプログラムで作成するモノよりは、何方かというと体操競技や武術のワザを実施するのに近いみたいである。
そのため、単純な現象ほど制御が容易で、複雑な現象ほど変数が増えて制御が困難となる、という事は無い。
例えば体操競技の場合、根幹を為すのは重心位置の制御なので、素人からすると難しく見えても重心をコントロールし易い技は実は簡単だし、逆に単純に見えても重心をコントロールし難い技は実は困難である。
同様に魔法の場合は、根幹を為すのはイメージ力なので、明確に現象を想い描く事が出来るモノは簡単だし、そうではないモノは難しい。
但し、銃撃を再現する場合、普通は弾丸が発射された後だけ想像すれば良いのだが、信管が爆発してから火薬が燃える場面まで細か過ぎるぐらいに想像してしまうと、却って威力が落ちる事になるみたいである。
それ以外にも適正や心情の問題があるので、仮に火炎系の魔法に天才的な適正があっても無意識下で火を怖がったりしていれば、折角の才能を活かす事は出来ないらしい。
◇
昨日の辿々しい説明とは打って変わって、ヘレナから放送禁止用語だらけの流暢な罵声を浴びながら、海兵隊のブートキャンプみたいな訓練が始まった。
最初に行ったのは、例えるならランニングみたいなモノで、罵声を浴びながら只管魔素を操る事を5日間繰り返した。
ヘレナから「赤ん坊卒業」を告げられて次に行ったのは、ボクシングのミット打みたいなモノで、指定されたタイミングで指定された魔法を放つ事を罵声を浴びながら5日間繰り返した。
ヘレナから「ガキんちょ卒業」を告げられて次に行ったのが、マスボクシングみたいなモノで、ヘレナが罵声と共に放つ魔法を掻い潜りながら、魔法で反撃するという事を繰り返した3日間だった。
最終日には、北西の森林地帯に連れて行かれた。
「各攻撃技で1匹ずつ狩る事が出来れば合格。」
ヘレナは遠くで動いている生物たちを指さしながら試験開始を告げた。
魔法で倒すことよりも生物を発見する事のほうが大変だったが、日没寸前に16匹目を狩る事が出来た瞬間、俺の背後から声が聞こえた。
「合格。」
ヘレナから何とか合格を貰えたらしい。
ヘレナから教えてもらったのは、攻撃技を16個と便利技を4個だけだが、連携と間合いと精度を高めればこれだけで十分との事である。
武術を習っていたときも、使い熟せない技を幾ら知っていても勝てはしないので、あらゆる局面で決め技を叩き込める様になる事を重点的に鍛えられた記憶があるが、これも同様だといえる。
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<近接攻撃用魔法>
※質量は個人の力量に比例し、鉄くらいの強度を有するが、手元を離れると霧散する。
『土の剣』……土を固めて大剣の一種であるバスタード・ソードを再現したもの。重いので体力を要する。
『水の剣』……水を固めて大剣の一種であるバスタード・ソードを再現したもの。水を必要とする。
『風の剣』……空気を固めて大剣の一種であるバスタード・ソードを再現したもの。軽いので威力が弱い。
<遠距離攻撃用魔法>
※質量は個人の力量に比例し、コンクリートくらいの強度を有するが、手元を離れると10秒程で霧散する。
『土の槍』……土を固めて投げ槍の一種であるピルム・ムルスを再現したもの。重いので体力を要する。
『水の槍』……水を固めて投げ槍の一種であるピルム・ムルスを再現したもの。水を必要とする。
『風の槍』……空気を固めて投げ槍の一種であるピルム・ムルスを再現したもの。軽いので威力が弱い。
<中近距離攻撃用魔法>
※威力は個人の力量に比例し、火の玉を投擲後に対象との接触で無音発動するが、手元を離れると10秒程で霧散する。
『火炎』……火炎瓶の炎上を再現したもの。対象を燃やす訳ではなく、高熱で加熱する。
『爆裂』……手榴弾の爆発を再現したもの。対象を爆破する。
『散弾』……中折式単身散弾銃での銃撃の着弾を再現したもの。対象を蜂の巣にする。
『突撃』……カノン砲での砲撃の着弾を再現したもの。対象を吹き飛ばす。
<ゼロ距離攻撃用魔法>
※威力は個人の力量に比例し、接触している対象に発動する。
『凍結』……豪雪地帯で雪解け時に出てくる凍死体を再現したもの。対象を凍らせる。
『炭化』……サラマンダーの炭化攻撃を再現したもの。対象の内部を高温で加熱し、炭化する。
『石化』……バジリスクの石化攻撃を再現したもの。対象のタンパク質を結晶化する。
<遠隔攻撃用魔法>
※距離や範囲や威力は個人の力量に比例し、任意の場所で発動するが、距離に比例して発動時間が遅くなる。
『衝撃』……水中爆発を再現したもの。指定位置に衝撃波を発生させる。
『泥沼』……底なし沼を再現したもの。対象は地面や床に限らず、指定位置周辺を融解する。
『氷湖』……物体が湖の氷に閉じ込められている光景を再現したもの。対象を凍らせる訳ではなく、指定位置周辺の動きを止める。
<便利魔法>
『探査』……亜人の視力や視覚を再現したもの。実際に視力を強化している訳ではなく、周囲へ魔素を放って反響する魔素を知覚し、視覚と共感覚を引き起こしているだけなので、可視光線以外の映像を視ることも出来る。
『強化』……亜人の頑丈さとパワーやスピードを再現したもの。実際に筋力や筋肉を強化している訳ではない。
『光球』……太陽の明るさだけを再現したもの。光だけで熱はなく、手元を離れると10秒程で霧散する。
『収納』……麻袋などに物体を放り込むという光景を再現したもの。自由に出し入れできる収納空間。容量や時間の流れは個人の力量に比例し、一度構築すれば状態の維持に魔力は消費しないが、出し入れ時には質量に応じた魔力を消費する。生きているモノも入れられるが、消失する事がある。
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契約期間内に魔法が修得出来た事を傭兵ギルドの契約担当に報告した途端にヘレナは、あれだけ堂に入った鬼教官役を務めていたとは想像出来ないほど、初めて会ったときと同じ様な無表情に戻ってしまった。
「今まで、ありがとう。」
「正直に言うと、半年間は必要だと思ってた。
魔法を多少使える者に教えても普通なら1ヶ月間は必要。
何も出来ない状態から延長せずに合格したのは驚き。」
俺が礼を述べると、ヘレナが罵声ではない言葉を返してくれたのが、妙に新鮮に感じた。
握手する際にヘレナの大きな乳房が揺れるのが見えたため、視線が釘付けになりそうになり、思わず息子が反応してしまったが、自制心で何とか押さえつけた。
この世界に放り込まれてから既に約1ヶ月間経ったし、ケイを最後に抱いたのがその1週間ほど前だから、そろそろ娼婦でも買いたい気はする。
しかし、以前合同訓練で知り合った海兵隊の兵士が、任地の女性を抱いたら肝炎に感染してしまった事があるので、水筒としても使えるコンドームは幾つか持ってはいるものの、現地人がどんな病気やウイルスに耐性を持っているか分からないため、怖くて躊躇っている。
「卒業祝いに酒を奢る。
付いてきて。」
ヘレナはそう言うと俺の返事も待たずに傭兵ギルドから出て行ってしまったので、俺は急いで追いかけた。
俺の住むアパートの真ん前にある酒場に2人で入り、酒を飲み料理を食べた。
ヘレナは酒を飲むと笑い上戸になるらしく、かなり陽気に喋ったり笑ったりしていたのだが、無表情なのに笑い声を上げるヘレナの姿が何故か俺のツボにはまり、普段は酒を飲んでも何ともない俺まで酔っ払ってしまった。
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ふと気づくと、俺の上でリズミカルに動く女性のシルエットが、暗闇の中で薄っすらと見えた。
未だ寝ぼけている俺は、ケイだと思われる女性が動きを激しくしたタイミングで強く抱きしめて、溜まりきっていた欲求を思いっきり注ぎ込んでしまった。
思考がクリアになってきた俺は、覚えたばかりの魔法を使って『光球』を創りだした。
案の定、此処は俺の部屋で、俺に凭れ掛かって荒い息遣いをしているのは、良く似てはいるがケイではなく、ヘレナであった。
ケイ以外の女性を抱いた事も勿論あるが、コンドームを使用しないでケイ以外の女性を抱いたのは今回が初めてだった。
毒を食らわば皿までだと開き直り、今度は俺が上に伸し掛かってヘレナとのダンスを再開した。
乳房の微妙な形や、割れた腹筋が見えるほどに引き締まったウエストまでもがケイにソックリなのに、瞳と肌の色が異なるだけで、こんなにも熱り立つものなのかと自分に驚いた。
汗と体液塗れになりながら、結局夜明けまで踊り続けた俺達は、土間で水を浴びて身体を洗い、俺が誘拐組織から奪ってきた服に着替えた。
<続く>
【人物紹介】
ソード……主人公。本名は惣田真悟。ステータス上の名前が、シングル・ソード。
ケイ……主人公の嫁。本名は惣田恵子。
ヘレナ……傭兵ギルドの教育担当。
ヴィクトリア……ハンターギルドの契約担当。




