廃駅
草木が生えし切り、荒れ果てた廃駅に友人と2人でやってきた。
途中までは電車が走っていたが、一駅分は歩いてやってきたのだ。
「なぁ、ここであってるか?」
「ああ、あってるって。だってよ、【夜駅】って書いてあるじゃん。」
そう、確かにそう書いてある。
だが、錆びていて所々ヒビ割れが起きている。雑草もあちこち生えている。
「で、どうするよ。」
「そうだな。まずはここら一帯を見て回るか?」
なぜこんなところに来たかというとここはちょっとした廃墟マニア内で有名だからだ。
崩れかけたイスや駅長室の中はマニアには嬉しい。つい最近まで使われていたかのように色々なものが机の上に置かれている。特に切符切りは今はもう使われておらず見ることもまずない。そんなお宝がまだまだ眠っているかもしれない。そう思うとますます興奮してくるのだ。
「おい、なんかあるか?」
「いや、まだ見つからない。もうちょっと探してみるよ。」
そう言いながら棚や机の引き出しなどを物色し始めた。しかし特にめぼしいものは見つからず、それでも3時間程ねばったが諦めて帰ろうとした。その時ガタッと何かが崩れ落ちるような音を聞いた。けれども友人は全然気にしていない。おれはその時一瞬だが何かを見たような気がした。
「おい、今誰かいなかったか?」
「おいおいこんな所に普通の人間がいるわけないだろ?俺たちみたいなマニアなら別かもしれないけどよ。」
「まっ、それもそうだよな。それにいたら絶対分かるはずだもんな。」
「そうそう。だから気のせいだって。」
そう思い再度探し始めた。
すると一カ所鍵がかかっていて開かない引き出しを見つけた。だから今度はカギを探し始めた。
手当たり次第探していたら部屋の隅に来ていた。適当に積まれたであろう段ボールの箱の隙間からは壁が見えていたが、一瞬だが何かが見えた。それは黒い目だった。
「うわっ‼︎」て。」
俺は友人のそばまで歩いて行って鍵を渡した。しかしさっきの事が気になって仕方が無い。あれは一体なんだったのか?ドキドキが止まらない。
さっき見た方角を見ると何かがいるそんな気がした。それは確実に近づいていた。
「おっ、開いた。。」
その言葉に友人の方を向いた時、一瞬何かを見た。人影を…。
「なんだよ、これ。」
出てきたのは数珠だった。
お札らしきものも入っている。
他には事務用具が幾つか入っていた。
「なんか冷めた。つまんねー。帰ろ〜ぜ。」
「そ、そうだな。帰ろう。」
2人揃って立ち上がると駅から出ようとした。するとどこからきたのかうつむいた女性が立っていた。
「こんちは。」
「こんちは。」
「……。」
ひっ。俺はびっくりした。
友人も驚いている。
慌てて逃げ出した。
女性が顔を上げたから。
真っ赤に染まる血のついた顔を。