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ーーーなんて思っていた自分カムバック。

私は現時点を持って前言撤回をいたします。

一生、絶対謝んない!


私は目の前に広がる光景を持ってして心の内で断言した。

その光景とは、一人の男性がこちらに向かってアンニュイなポーズをとっている姿だ。もちろん私に向かって、ではなく紙を隔ててこちらにポーズをとっているもの。いわゆるメンズ雑誌である。

そしてその表紙を飾る彼からは、どことなく大人になりきれない青年の色香を感じさせられた。と、まあ私自身も現在の肉体年齢は10代ギリであるのだが。

そんなことは今はどうでもいい。問題はこの表紙を飾る男性が私の幼馴染だった件について物申したい。それから数枚ページをまくった所にあるこのインタビュー内容にも。


「どの口が“女の子はみんな守る存在”だ“身近な人には嘘をつかないことがポイント”だなんてほざくっての」


おっと、思わず本音が。幸いにして小声だったことと周りの人との距離があったこともありそのつぶやきは誰にも聞き取られることはなかった。

ところでその問題の記事のあるインタビューの内容は恋人と上手く付き合うには、だ。この雑誌を購入する年頃の年代なら是非とも一読したいのだろう。表紙面にも“メンズモデルひかりくんに聴く!恋人の方程式!”とあるふきだしと彼が載っているだけでも手に取る価値があるのだろう。

現に本屋ではこの私が手にとっている一冊で完売のようだ。

パタンと雑誌を閉じ表紙に映る彼を仏頂面で見る。


「と、いたいた!メーイ!用事もすんだしそろそろ帰るー?」


「佳子」


「どーしたの?そんな顔して。ん?」


別のブースで目的のブツを物色していた佳子が戻ってきた。そして私の表情を見、次に私の手に持つ雑誌に目をやり首を傾げた。


「メンズの雑誌?メーイ買うの?」


「―――買わないけど…」


「けど?」


「……この表紙とインタビュー見て腹たっただけ」


「?」


「いや、なんでもない。聞かなかったことにして」


神妙な顔をして頭を振れば、彼女は納得こそしてないものの同意をしてくれた。大変ありがたいことである。今この時に理由を聞かれれば、この行き場のない憤りが爆発しそうだ。


「それより佳子は目的のものあったの……て、聞くまでもないみたいね」


「ふふん。ここの本屋発売日より一日だけ早くだすのよ。おかげでゲットできたわ。しかもそのこと知ってる人少ないしねー」


「まあご機嫌そうでよかったわ」


―――私とは違って。とは口に出さずにおいた。

そんな私の表情をじっと見つめていた彼女はブーと口を膨らます。


「メーイのいけずー」


「そおんなことないわよ。優しいでしょ。この前お財布を忘れたあなたにお昼おごってあげたでしょ」


「う、その節はお世話になりました。けどこれとそれとは別!」


「そんなことばかり言ってると今度あっても助けないよ?」


「…私が悪うございました」


「わかればいいのよ、わかれば」


どこのお代官様よーと後ろでむくれる彼女を跡目に雑誌を元あった場所へと戻す。定位置に戻したところでその表紙の輝かしいこと輝かしいこと。思わず遮りたくなる。あの目線を。

でも髪に向かってそれはないよね、とそんなことを考える自分に辟易した。というか自分大丈夫かという具合だ。


「輝いてんねー」


私と同じようなことを考えたのであろう彼女にクスリと笑ってしまった。


「ほんとね」


―――ホント、輝きすぎて今の自分が嫌になる。



ただの恋愛ものが書きたかっただけなのにどうしてこうなった…

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